事業創出の原理原則8 自社分析-STP分析

・STP分析 : 「STP分析」は、アメリカの経営学者であるフィリップ・コトラーによって提唱された手法です。Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字から名付けられた分析方法をさします。マーケティングにおける代表的なフレームワークの1つです。
「セグメンテーション」とは、「区分」「区分け」の意味です市場を細分化して考えることです。市場の全体像を把握して、市場をどの様に分けるか決めます。例えば、「地球の生き物」では、何の区分けにもなっていません。「生き物」の集合体の概念です。哺乳類なら、人や牛や、ニワトリやその他多くの種類が存在しています。同じく「顧客」という「区分け」は、集合体の概念でしかありません。顧客を考えたときには、男女、年代、収入、国籍など様々な分け方があります。市場を細分化する代表的な区分には次の4つがあります。①人口動態変数(デモグラフィック)、年齢や性別、職業、所得水準、学歴など顧客の属性による区分。②地理的変数(ジオグラフィック)、住んでいる地域や気候、人口密度、文化など地理的な要素による区分。③心理的変数(サイコグラフィック)、ライフスタイルや価値観、パーソナリティなど感性による区分。④行動変数(ビヘイビアル)、購買ルートや購買頻度、製品知識などの製品に対する知識や行動による区分。個人的意見ですが、この4区分に縛られずに、自由に発想したほうが良いと思います。区分が決まった後に、どの区分に属しているか考えたほうがいいです。
「ターゲティング」とは、「セグメンテーション」で、細分化した市場や顧客の中から、自社の商品やサービスの特徴に適した、どの集団を対象とするか絞り込みをすることです。市場中のどこをターゲットとするかを決定することです。狙う市場を決めます。「ターゲッティング」は、無数に存在します。「ターゲティング」の代表的な指標には、次の「6R」があります。①有効な市場規模(Realistic Scale)。②成長性(Rate of Growth)。③競合状況(Rival)。④波及効果/顧客の優先順位(Ripple Effect/Rank)。⑤到達可能性(Reach)。⑥測定可能性(Response)です。ターゲットを決めるうえで最も重要な指標は、①有効な市場規模。「投入するリソースに対してリターンが見込める収益性のある市場規模か?」③競合状況。「自社の優位性が発揮できる市場か?」です。1つの市場規模で、収益が見込めないときは、複数の市場を組み合わせる必要があります。ターゲットの選定には、複数のセグメンテーション軸を組み合わせて行なうことの方が一般的です。収益が見込めない市場にリソースを投入することは、リソースの無駄使いです。そうならないために、ターゲットの経済的価値(市場規模、成長性)を見極めることが重要です。
「ポジショニング」とは、ターゲットとした市場に対して、自社のベネフィット(効果や利便性)を宣言します。自社の立ち位置を明確にして、どの様な優位性を訴えるか決めます。「顧客提供価値」を明確にします。顧客に対するベネフィットを訴えて自らのポジションを確立します。そのためには、顧客のニーズを満たし、機能やコスト面での独自性が受け入れられるかがポイントとなります。
 私の会社のプロジェクトマネジメント(PM)研修の「STP分析」は、次のようになります。「セグメンテーション」は、「職種」に区分しました。同じPM研修でも、職種によってニーズが違います。「ターゲティング」は、「職種」の中から特に「法人営業職」と「IT・開発者職」と「マネジメント職」を狙い目にしました。現代では、企業のすべての職種がプロジェクトの知識とスキルが必要になってきていますが、「法人営業職」は、顧客の計画がプロジェクト化しているため、PMを理解していないと商談に参加できないため。「IT・開発者職」は、技術の急速な進歩により、プロジェクトが活発化しているため。標準的なマネジメント手法として確立しているため。「マネジメント職」は、企業の中で新規事業などを計画する場合の知識として必要なためです。「ポジショニング」は、一貫しているのは「組織力強化」ですが、「法人営業職」には、提案力強化のための「営業力強化研修」として、「IT・開発者職」には、社内や海外との共同開発の増加に対応する標準的な知識の習得のための「開発者研修」として、「マネジメント職」には、計画立案のスキルと知識の習得のための「管理者研修」として提案しています。
 発展している企業を見ると、STP分析がきちんとできています。例えば、「アパレル業界」は、全体的に見れば、倒産も多く、世界的な競争もあり不況業種です。その中でも、伸びている会社は「STP分析」が上手くできています。例えば、私が考える「ユニクロ」と「ワークマン」と「ミキハウス」の「STP分析」は、次のようになります。
 「ユニクロ」の「STP分析」の、「セグメンテーション」は、「価格帯」で「高級服、ブランド服、フォーマルウェア」に区分しました。「ターゲティング」は、「カジュアルウェア」です。流行に左右されないベーシックブランドを目指しています。市場規模が一番大きいです。「ポジショニング」は、コストリーダーシップ戦略として、高品質、低価格の実現のため、自社で企画から製造、販売 (SPA)を行っています。差別化戦略として、新素材を繊維会社と共同開発を行っています。ブランド戦略として、カジュアルなライフスタイルの提案や有名人とのデザインコラボを行っています。
「ワークマン」の「STP分析」の、「セグメンテーション」は、「機能、用途」で「制服、ユニフォーム、礼服、作業服」に区分しました。ターゲティング」は、「作業服」です。「作業服」を、スタィリッシュな作業服、機能性の高いウェア、アウトドアウェアとしても着られる服に拡大しています。「ポジショニング」は、高機能的と丈夫と低価格を訴え、アクティブな一般客向けに市場を拡大しています。従来の作業服の機能性は維持しています。普段着として普及するために、アンバサダーとの商品開発(共創)を行っています。低価格を維持するため、シーズンごとに変更するのではなく定番化で継続製品の製造行っています。そして値引きをしないで売り切れるまで販売する方式をとっています。
 「ミキハウス」のSTP分析」の、「セグメンテーション」は、「洋服の年齢別の種類」で「紳士服、レディス服、子供服、ベビー服」に区分しました。ターゲティング」は、「子供服、ベビー服」です。ギフトになる服(価格帯)の少し高額な子供服、ベビー服を扱っています。「ポジショニング」は、贈答用として使える子供服とベビー服です。祖父母からのプレゼントになるように、可愛いデザインの服や店舗、子供モデルのファッションショー、綺麗なパッケージなどを使っています。
 大手の飲料メーカーや消費財(洗剤、化粧品)メーカーの、広報宣伝部や販売計画部の方のお話を聞く機会がありました。「STP分析」で説明していませんでしたが、いずれも対象顧客を明確にしており、その対象顧客に対して訴求できる「顧客提供価値」を明確にして、販促活動を行っています。例えば、洗剤であれば、「セグメンテーション」は、心理的特性(価値観)」で区分し、「ターゲッティング」は、その中から、理論的タイプと、感性的なタイプに絞りました。「ポジショニング」は、理論的タイプには、除菌力を訴える商品とCMを、感性的なタイプには、香りを訴える商品とCMを出しています。
「どんなに大手の企業であっても、やりたいことに対して、常にリソースは不足している。」と言われています市場にまんべんなくリソースを振り分けることは無理です。リソースを、どの市場に、どのように投入すれば、最も効果的か、優先順位を明確にして、リソースを投入することは、マーケティングの最も重要な役割です。

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