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余命10分 / 2022年9月29日 — 京王線。

用事で聖蹟桜ヶ丘まで行くことになった。小川町から地下鉄で京王線へ。上京して10年以上暮らしていた明大前、下高井戸はもちろん、京王線でいろいろなところに行った。

20歳の頃、ビートルズが好きだという女の子に、夜「会いたい」と呼び出されて調布まで向かったら、公園のすべりだいがステージになっていて、彼女の独演会がはじまった。客はぼくだけ。猫もいた。何曲か歌い、レットイットビーを歌うと彼女は泣き出し、泣き止むのを待っていたら終電がなくなり、彼女を送ってひとり歩いて帰った。公園では猫がずっと隣にいて、いつか飼うなら犬じゃなく猫だなと思った。

ギターを持ってニューヨークに行くと言っていたけれど今頃なにしてるかな。ひろこ、せいこ、ようこ。名前は忘れた。

聖蹟桜ヶ丘へ。はじめて降りたのか開発が進んだのか。おつかいを済ませて駅へ戻ると行き先と時刻を告げるはずの電光掲示板が暗い。人身事故でしばらく動かないとのこと。みんなが駅員さんに詰め寄っていた。1時間後、電車は再開。

特急や急行は都心へ向かう人たちでいっぱいで、ぼくは各駅停車でのんびり座って帰った。そういえば上京後のアパートを決めるのに、京王線沿線の物件を、父と母と見てまわったな。あのときどういう気持ちでぼくを東京へ送ったのだろう。そういう話を、まだ聞けてない。


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