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アナウンサーになるには (その1)

人工知能と合成音声がコンテンツを作る時代に、アナウンサーが求められる能力は何なのだろう? 誰もが「フリーアナウンサーの○○です」と言ったもん勝ちの世界で、アナウンサーの矜持とは何なのだろう?

自己紹介に代えて、自分のアナウンサー人生を振り返ってみる。

私、子守康範は1985年、大阪にある毎日放送にアナウンサーとして入社。祖父の死をきっかけに商人の道に進もうと映像制作会社アンテリジャンを経営しつつ番組出演は継続。2008年からはMBSラジオ『子守康範 朝からてんコモリ!』のパーソナリティを務めている。

結果的にライバル局になってしまうのだが、小学生の頃から朝日放送の『おはようパーソナリティ 中村鋭一です』が大好きだった。阪神タイガースの応援も楽しかったが、鋭ちゃんのニュースへの切り口が気持ち良かった。毎朝読んでいたのが朝日新聞だということもあったかもしれない。

アナウンサー、ジャーナリストという存在に、当時から憧れを抱き始めていた。「ベトナム戦争」「北爆」「水俣病」「イタイイタイ病」「水爆実験」といった白抜き文字の見出しが連日のように報じられていた。

団地の五階にあった我が家には十巻セットの図鑑があった。動物や植物の巻も読んだが、乗り物、科学、保健と人体の図鑑が大好きだった。八つ年の離れた弟が産まれてくるのが楽しみで楽しみで、子宮や産道の図解だけでなく、巻末にある解説用の大人向け文章まで何度も繰り返し読んだ。

厳しく躾けられた父は、本を買うことには寛容で、千林商店街の本屋で買ってもらった『少年朝日年鑑』は、別冊の資料編含めて穴が開くほど読んだ。いまある知識のベースはこの頃できたのだろうと思う。

父からもらった『太平洋ひとりぼっち』は、暗唱できるほど読み返した。小さなヨットで単独太平洋横断を果たした堀江謙一さんが書いた日記のような文章にワクワクした。捕まらないように、先輩に見送られて深夜西宮港を出ていく場面。太平洋の真ん中で旅客船と出会い、乗客から "Do you have Passport?" と何度も尋ねられたのに分からないふりをした場面など、ページ数まで言えるほどだ。

本といえば、小学四年だったか、夏休みの宿題のひとつが読書感想文で、夏休みは四十日間あるのだから四十作品読もうと勝手に決めて、短編も含めて四十本の感想文を提出したことがある。手当たり次第読んだので、内容はさっぱり覚えていないが、六つしか年の離れていない叔父から借りた『クロイドン発12時30分』という推理小説のタイトルだけは覚えている。

宿題といえば、中学二年の冬休みにラジオの気象通報(今はもうない)を聞いて天気図をかいてこいといわれ、「天気図をかく意味は、連続して天気の変化をみたり予想することにあるのだ」と自分なりに解釈し、元日含めて十四枚の天気図を提出した。

とても長文になりそうなので、今回は本にまつわる話にとどめようと思うが、「なんにでも興味を持つ」「関心が向いたら徹底的にやる」「毎日繰り返しやる」ことは、アナウンサーへの道を拓いていくうえでとても大切な要素だと思う。(続く)

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