辛い記憶よりも幸せをください。
私、つまり13歳の頃の主人格はいつもポケットにカッターを入れていた。
辛いとき、いつもカッターがそばにあった。
友達だった。
仲間だった。
他人を傷つけるために持っていたわけではないけれど、自分の手首に何度も押し当てたことがある。
もう、心は限界だと分かっていた。痛みでいつも自分を保っていた。
いじめられるのは、あんたが弱いからだと何度もお母さんから言われた。
その度に、痛みを与えて自分を保っていた。
自分を傷つけるのも悪いこと、やっちゃいけないと分かっていたけど、そうすることでしか自分を保てなかった。
それでも、ここに生まれてきてからはやってない。
学校でのいじめだけでなく、東京から戻ってきた、ひと回り離れたお姉ちゃんからのいじめが始まったのも、ちょうどこの頃だった。
末っ子の私は当たり散らすのに、ちょうど良い存在だった。
ただでさえ、居心地の悪い家にも、学校にも居場所がなく、苦しい日々だった。
今でも、ふと思い出す。
靴に死ねと書かれた紙が入れられる、ドラマみたいないじめ。
幼稚園の時のいじめとは種類が違う。
どっちも思い出したくない。
お母さんのことも思い出したくない。
勝手に思い出して、怖くて怖くて息ができなくなることがある。
辛いとき、怖いとき、思いとどまれるような、幸せな記憶が欲しい。