犬だってトイレにこだわりたい。
駅まで歩いてた時のこと。
朝の時間帯は、ワンちゃんのお散歩によく遭遇する。この時期は日中暑くなったりするし、涼しくて、人の少ない時間帯が一番お散歩に適している時間なんだろう。
その日も、ワンちゃんのお散歩に遭遇。
あれは、たぶん、チワワちゃんだ。ひと昔前に一世を風靡したCM、「どうする?アイフル〜」に出ていたワンちゃんと同じ目をしている。
チワワちゃんは、電柱の下でおトイレ中だった。おトイレ後、うしろ足で一生懸命に地面をかいている。
けなげ。なんて、けなげな。
チワワちゃんは、自分が用を足したところに、砂をかけるかのように、後ろ足で一生懸命地面をかいている。後始末だろうか。
でもそこ、アスファルトなんだよな。
砂、かかってないんだよな。
シャッシャッシャッと、アスファルトとチワワちゃんの爪が擦れるかわいた音がひびく。「わたし、トイレの後始末も、ちゃんとするの!」とでも言いたそうな表情だ。
でもね、チワワちゃん。
後始末してるの、飼い主さんなんよ。
スッキリして、後始末にも満足して、早くお散歩を再開したいという気持ちが前のめりすぎて、リードがピーンと伸びてしまっているけど、いま、飼い主さんが後始末の真っ最中なんよ。ちょっと待ってあげてよ。
ワンちゃんは、思い立った時に用を足すのかと思いきや、意外と場所にこだわりがあるらしい。
数年前まで、フレンチブルドッグを飼っていた。
名をムサシという。
今はすでに虹の橋を渡っており、姿は見えないのだけど、たぶん今もパソコンでこの文章を打ってる横に来て「それ、おもしろい?」「はよ、クッキーよこせ」と言ってきてるだろう。
ムサシはトイレのこだわりが強かった。
外でお散歩中にもよおしても、なかなかしない。「この場所いいかも!」と、クンクンにおいを嗅ぐのだけど、「なんか違ったわ」と、また歩き出す。そしてこれを何回もくり返す。
そして結局、「家で、しよう。」となるのか、足早に家に帰る。
「うわー、ここのトイレ汚いなー…別のとこにしよ。」と、トイレ探して三千里の旅をよくする飼い主に似てしまったのだろうか。
そんな部分は似なくていいから、外でしてくれたら、においが部屋に充満しないから、こちらとしては助かるのだけど。
ムサシは「俺はキレイなトイレじゃないとしない」と主張するように、あんまり外で用を足さなかったなあ。
チワワちゃんの、トイレの後始末(空振り)を見ていて、そんなことを思い出した。
チワワちゃんも、あの電柱がお気に入りのトイレスポットで、自分でキレイを保ちたかったのかもしれない。
…と、ここまで書いて「はて、あの後ろ足でシャッシャやるやつは、本当のところ、何か意味があるんだろうか?」と思って調べてみた。
全然、後始末じゃなかった。
全然、犬のこと知らんかった。
「わたし、トイレの後始末も、ちゃんとするの!」と言いたそうに見えた表情は、ただスッキリした表情なだけだった。
「そうやって調べないで走り出しちゃうところ、まだまだだな」「なんでもいいから、はよ、クッキーよこせ」と、ムサシが恥ずかしさに追い打ちをかけてきていそうなので、ここらで筆を置くことにする。
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