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別れの夏。ドイツ生活のぼやき - 1

夏は別れの季節。新年度が秋始まりのドイツでは、夏にさよならを言う機会が多いのです。

わたしがドイツに住み着いたのが、パンデミック真っ只中、2020年の秋のことでしたが、社会が再び動き始めた今年の夏、初めて大きな別れを経験しました。昨年からベビーシッターをさせていただいていた日本人のご家族が、違う街へと引っ越してしまったのです。

定期的にベビーシッターをしていたわけでなく、月に1回あるかどうかだったのですが、ご夫妻の優しさと温かさだけでなく、お子さんの成長や可愛らしさを見るのが本当に大好きでした。初めてその子に会ったのは、まだやっとハイハイをし始めた頃だったと思います。「おいで」と呼ぶとスタスタと寄ってきて、わたしの膝を器用に登ってきてくれたのが、つい最近のことのように思い出されます。
普段はドイツ人と接することが多い子なので、話し始めた言葉はドイツ語が多かったのですが、それでもわたしを「ねーちゃん」と呼んでくれるのが愛おしくてたまりませんでした。

ご夫妻は二人とも立派にドイツで働いておられて、そんな姿を間近に見させていただいて、わたしもこんな風な家庭が築けたら素敵だなあといつも思っていました。特にお母さんであるNさんを、わたしは女性として心から尊敬しています。恥ずかしくて、ご本人に直接伝えたことはまだないのですが……。

彼女はもともとドイツ語を勉強していたので、流暢にドイツ語を話し、実際、この国で出産を経験し、現地人とともに仕事をしています。でも、このご夫妻がドイツにいる主な理由は、彼女の夫の仕事のはずなのです。わたしは自分の夫のために異国に住んで、子どもを産んで、仕事までこなせるだろうか?そのような覚悟を決められるだろうか?とよく自問していました。とはいっても、彼女はとても前向きでかつ優秀な人なので、覚悟を決めたり、自分を犠牲にしていると思ったりなんてしていないのかもしれません。

家庭をもつこと、子どもをもつことは、人を強くするのでしょうか。結婚したり子どもを育てたりしなくても、立派な人間は世の中にたくさん存在すると分かってはいても、生き方の感覚は少し変わるんだろうなとベビーシッターを通して学んだように思います。ひとりで生きている人の方が強いというか、パワフルさがあるようだけれど、家族、特に子どもをもつ人は、また別の強さや逞しさがあるような。

夏は別れの季節。とはいえ、電車で数時間の距離なのだから遊びにおいでとのこと。お引越しが落ち着いた頃に、あの素敵なご家族に会いに行きたいです。


写真:夏のドイツのとある公園。


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