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僕→君

今日、久しぶりにこの街に来たら野良猫がいた。人懐こい猫で足元に擦り寄ってきた。
少し撫でてやっているとき、そういえば君は猫が好きだったな、と君のことを思い出した。
何をしていても、何を感じても、僕は君のことを思い出してしまう。
全てはただのきっかけに過ぎずに、記憶は過去にあった優しさや儚さをもう一度鮮明に打ち明けてくれる。それは、頭にではなくて胸の奥深くに。
それを時には愛しく思い、時には痛く思う。優しい記憶をこうして、ただ思い出そうとするだけなのに、苦しく思ってしまうこと自体、僕は僕を責めたくなっていく。
最近は、不思議に思うことが多い。どうして僕らは、一緒にいられないんだろうと。愛しい君へ。



人の暖かさがどれだけの気持ちを救ってくれるのかを、僕らは知っていた。
その思いが深ければ深いほど、離れていることを切なく思えてしまうのは、仕方がないのかもしれない。今はただ、ふたりが思い合う心を大切に抱えながら過ごす。
そのときに思い出す優しい記憶たちを、そっとこの両手で包み込んでいきたい。
それはきっといつか、ふたりが出会ったときに教えてくれるんだろう。
どんなにお互いの思いが切なく儚かったのかを。




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