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シミュレート失敗で死ぬ世界線

犯人VS耳の聞こえない女性だけど反撃のバリエーションがカタギじゃない。

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耳が聴こえず話すこともできない女性、マディーは人里離れた森の中で作家として暮らしている。
近くの山荘に住む夫婦とたまに食事を共にする以外、人とは触れ合うことはない。
妹はそんな姉の生活を心配し、こまめに連絡を入れているが、マディは自分にとってこの生活はあっていると感じていた。

ある夜、マディの友人は、遊びに来た帰り道、森の中で殺人犯に襲われる。
マディの家のウッドデッキまで逃げ伸びた彼女は、ガラス越しにマディへ助けを訴えるも、料理中の彼女は気づくことがなかった。

殺人犯は、友人を窓ガラス越しに見せつけるように刺し殺す。
しかし、一向に反応を示さないマディに違和感を覚え、テラスから家の中に侵入する。

マディはそれに気が付かず、離れたところに住む妹と手話通話を続ける。背後からその様子をじっと観察し続け、彼女が聴覚障害だと理解した犯人は、この森の中の小屋で彼女を狩る算段をする。

冒頭の無音の料理シーンが好きなので見て欲しい。
火にかけられる鍋や、調理される食材のシーンが続いて、覚めるように音が飛び込んでくる導入が良い。
火加減を調節したくなるぐらいまで煮立っているのに視覚的にしか判断ができない主人公は何度も鍋を焦がしている。
一人暮らしということもあって、光で知らせるサイレン付きの火災報知器があったり、判断方法が事前に表現されているから犯人との攻防も納得がいく。

この後犯人との攻防はここが山奥でなければ成り立たないだろうってくらい激しいんだけれど、マディにとっての感じ方がずっと想像できるから追い詰められた時の息の詰まり方が加速する。最悪オブ最悪。

マディは小説家の設定で、脱出ルートをシミュレートしていくので、中盤彼女がシミュレートを失敗して顔をぐちゃぐちゃにされたり逃走に失敗したりする。

シミュレート失敗すると死ぬ世界線がはっきり描写されるサスペンスは珍しいから面白いけれど、結構ショッキングだと思う。

 犯人はステレオタイプの快楽殺人犯で、マスクをかぶっているんだけれど、人間味の出し方が中途半端なことと、詰め寄り方が気持ち悪い。

マディの背後に寄る。
スマホを盗み、背後から撮影する。
マディのPCへその画像を送信する。
ドアを開けたまま外へ出て、マディが気づいた途端に襲いかかる。
わざとマスクを外し、口外しないから助けてほしい、という逃げ場をなくす。
ガラス張り、窓もある小屋の周りを周回し、見つめ続ける。

人VS人の閉塞感デスマッチ。
犯人に容赦がないので、その後のマディの反撃もやったれ!!!と応援上映で観られるんだけれど、手や足に受けるダメージ描写は痛々しいので共感性痛覚ある人にはおすすめしない。
犬はいません。猫はいます。


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