芸術とか何もわからん人がキュビスム展に行ってきた話
タイトル通り、芸術とか本当に何もわからない人がキュビスム展に行ってきました。
俺がどれくらいキュビスムのことわからないかというと、「キュビスムって何?」と聞かれた時の説明が
リンゴを描く時、見た正面の絵を描いてリンゴって描くじゃん?
でもリンゴって正面だけがリンゴじゃなくね?
側面も裏面も全部あるのがリンゴな訳じゃん?
そういう風に見たままのリンゴではなく、リンゴの全てを描こうとしている感じなのが……キュビスム?
なんて、しどろもどろになり目を泳がせながら言い出しちゃうくらいのわかってなさ。
あっているか間違っているかさえ言ってる当人でも分かってないという状態の胡乱な話が出てきちゃうタイプです。
これではピカソが愛人たちに「あいつの首を取ってきた奴を愛してやるぜ!」と言いだしても何ら文句も言えねぇですね。
そんな無知無知ボディの俺でも果たしてキュビスム展を理解できるのか!?
美術館の学芸員さんたちが苦労し熟考を重ねた展示が田舎の山猿に果たしてどのように響いてくるのか!
乞うご期待!
という心持ちで、国立西洋美術館へ襲来するに至りました。
何もわからん人、【パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ】の企画展へ来る!
タイトル長いな!?
本当に何もわからん奴が行っても大丈夫か? とは思いますが、俺が本気のアッパラパーで何も理解できなくても、絵画は本物の絵だから大丈夫でしょう。
本物の名作絵画がもつパゥワは5000兆に達するエネルギーがあると思うので無駄ではないはず。
よしんば無駄だったとしても、人生なんてそんなもんだぜ!
という訳でGO!
当然、何もわからない人間なので音声ガイドを手に入れ順路進んでいきます。
平日なのに結構混んでてビックリ。
キュビスムとは何たるか知らない俺でも、ピカソの名前くらいは知ってます。そのピカソの展示があるんだから当然といえば当然かもしれませんね。
あるいは、ガチめの田舎から上京してきた山猿なので都会では空いてるくらいの密度で混んでると感じてしまっているだけかもしれません。
入って最初にあるのはいかにもキュビスムを象徴するような、キューブ体が連なるような絵……ではなく、アフリカの民芸品でした。
わりとデフォルメされた木でつくられたと思しき人形はあちこちに針が刺さったり釘が刺さったりとなかなかの虐待っぷり。
見た目はオドロオドロしいものの、こんな風に人形が意図して傷つけられている場合は大体病避けとか怪我避けといった厄除けの意味合いがあるから、この民芸品も厄除け的なサムシングの願掛けだったのではないでしょうか。知らんけど。
このアフリカからやってきた、一見すると素朴で歪に見える民芸品。
これにインスパイアされたピカソとブラックは物事をそのまま写し取るのではなく、それが内包する背景やエネルギーに思いを馳せて描き出す方法を模索するようになる……キュビスムの目覚めとなるのだからオドロキですよね。
おおよそリアルではない、少しデフォルメされた人形が内にあるのは生きたいという渇望か、その渇望は歪で美しいものだったのか……。
意図してアンバランスさを出しながら、存在の形を模写するのではなくもっとニュアンスを模写するような絵画を作っていく、と。
キュビスムの第一歩は一見歪に見えても内包する生の力を描き写したい、その本質に迫りたいという探求だったのではないか……。
なんて、別段誰も言ってなかったけど、俺は何となくそう思った訳です。
誰も言っていなかったが俺はそう思った。
そうだね、それも芸術だね!
展示はキュビスムのおこりから始まり、キュビスムが特定の画廊だけで展示されていた事により最初は「知る人ぞ知る変な絵」だったという事から、その絵に影響された若き画家たちが模索し広め展開していく様子や、ピカソとブラック、一時期はどちらがどの絵を描いたか分からぬほど作風が似通っていたにも関わらず、その後は別々の進化をしていく姿など、きちんと順を追って説明してくれるので「何もわからないぜ!」の俺も「なるほど、わからん! だが、思いは伝わったぜ!」レベルには到達できた気がします。
結果的にはよく分かってない。
そうだね、それも芸術だね!
ともあれ、何もわからんと徒手で挑んだ俺でさえこれくらい進歩したんだから、頭のいい人は「極まったわ……」ってなると思う!
極まって自分が立方体にならないか心配になるくらい、理解できると思うよ!
音声ガイドも親切丁重、そしていい声。
展示は各フロアに大きめのパネルで詳しい説明があるんですが、音声ガイドは各々の絵についての説明もしてくれるのでキュビスムの展開だけではなく個々の絵への造詣ももっと深めたい! という方にはピッタリではないでしょうか。
当然、音声ガイドがなくともパネルは丁重に説明しているからキュビスムの成り立ちから顛末までは充分把握できますし、そういうのに一切興味がなくとも 絵が! すごいので! すごいです!
絵がすごい展示会は、絵がすごい!(語彙力の放棄)
また、キュビスムは絵画だけでなく建築であったり映像であったり彫刻であったりと、その分野を大きく広げていくことも紹介・展示されてますので、絵画ではないキュビスムの世界にも触れる事ができます。
俺はキュビスムが建築としても存在するのを知らず、SNSのフォロワーから聞かされて「そういうのもあるのか……!?」と思った民なので、大型パネルで展示されているキュビスム建築を見てあまりの迫力に「す、すげー!」という語彙力ゼロの反応をしてしまいました。
ジッサイ=スゴイ!
展示ではキュビスムの起こりから入りますが、時が流れ第一次世界大戦中の転換やその後の流れなど、現代にも脈々と続くキュビスムへの向き合い方や模索、取り入れ方など各々の個性がそれぞれ取り入れられた作品群は圧巻。
なーんもキュビスムのことわからない人間でもとても楽しむ事ができました!
惜しむべきは、せっかく音声ガイドをつけたのに通常の解説を聞くのにいっぱいいっぱいで、特別解説の山田五郎氏まで聞くのが回らなかった事でしょうか……。
展示なのでどうしても長時間留まっていられない……他のお客さんにもいっぱい絵を見てほしい中、ガイドを聞くために立ち止まるのは流石に失礼だろうと思って聞けないまま順路が終わってしまったのがとても惜しかったです。
まったくキュビスムのこと知らない俺が聞いて理解できるかわからなかったけど、せっかくだから聞きたかった!
ともあれ、何もわからん人でも充分すぎる程楽しめたのは確かです。
東京での展示が終わったら京都にて、2024年3月20日[水・祝]~7月7日[日]、京都市京セラ美術館で展示されるようなので西にお住まいの皆様でキュビスムに興味がある方も、俺のように「何もわからないけど来たぜ!」も、楽しんでもらえたらいいなーと思う次第でありました。
東京展も2024年1月28日[日]までやっているので、興味がある方はお早めにどうぞ。
キミもキュビスムに目覚めて立方体になろうぜ!
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