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貧乏人の子は習い事もできない?

私は現在小学校の吹奏楽部の顧問をしている。
37名の部員が所属している。
なぜ教員でもない私が顧問をすることになったのか。

全国的にこれまで学校教員が担ってきた部活動の指導を、地域団体や関係事業に担ってもらうことで、地域の活動に位置付けるという取り組みが始まっている。これを部活動の地域移行というそうだ。

私が子供の頃は当たり前だった活気あふれた部活動の姿はもうない。
サッカー部も野球部のバスケ部も、私の青春をささげた吹奏楽部も機能している学校はあるのだろうか。少なくとも私の暮している地域は皆無だ。
今年の4月、またひとつの小学校吹奏楽部が活動休止を決めた。

我が子の通う小学校もクラブか化が決まり、2年前から部活動の指導を行っていた顧問の先生が練習に来なくなった。部員や保護者から不安の声が上がるようになった。

コロナでほぼ練習できていない数年があったため、基礎力がついていない部員たちが上級生になっても後輩を教えることができない。

一体、毎日何を練習すればよいのか。
当番制で見守りに来る保護者が子供たちをどこまで注意したらよいのか。
子供同士のトラブルが起きたときにどう対処するのか。
とにかく子供が数十人集まると、次から次へとトラブルが起こる。
趣味なのかってくらいに喧嘩をする。
廊下を走って怪我をするし、練習もサボる。


たまたま当番で来た保護者が子供たちを本気で叱るというのはなかなか至難の業だ。

私は当番で練習を見守りに行っても、ただ練習を見てるだけなんて退屈過ぎてやってられない人である。
一度見守りに行った時に暇すぎて白目をむきそうになったので、次の練習からは自分の楽器を持参し、一緒に練習をするようになった。
そうなると、自分のパート以外も目に付くようになり、黙ってられない性分の私はあれやこれやと注意するようになった。
練習メニューを作り、子供らで基礎練習を進められるようにした。
そうこうしてるうちに指導者という形で私に白羽の矢が立ち、今に至る。

しかし、吹奏楽の指導はかなりハードルが高い。
私は現在バレーボールもしているが、バレーボールを教えるのとまったく違う、ハードルの高さがある。

まず、すべての楽器の一通りの勉強をせねばならない。ピアノのドがみんなのドじゃな~い!移調についてや音楽表記、楽典の勉強もしなくてはいけない。吹奏楽器だけでなく、打楽器の知識も必要だ。ドラムの楽譜の読み方、たたき方、ティンパニのチューニングの仕方、グロッケン、シロフォン、チューブラベル、曲ごとに使う楽器が違うから、ずっと勉強しているようである。
そして自分も指揮を振らなければならない。楽譜を読み込み、指揮の練習もする。


これ、素人がやるのすっごく大変なんです。
子供らに適当なことを教えるわけにはいかないから、勉強のため自分も吹奏楽に所属しプロ奏者に教えてもらい、筆記試験と実技試験(指揮)になんとか受かり、県の吹奏楽連盟の認定も受け「吹奏楽指導員」という肩書も頂いた。
週5の本業&副業もスタートさせっちゃった中の吹奏楽指導だから、振り返ってみるとこの2年間は目が回る感覚で勉強していた。

何が言いたいかっていうと、小学校で部活動をしなくなるのはいいけど
受け口作ってよ~頼むよ~
地域移行っていうけど、じゃあ、地域の誰がみるのよ~
民間業者?楽器メーカー?文化芸術の団体?吹奏楽連盟?日本管打・吹奏楽学会?
楽器を吹きたい子は家庭で個人レッスン通わせたり、地域の団体に所属すればいいんですかね?なんか違うと思うんだよな。
個人レッスンで楽器を習うと月に8000円くらいのレッスン料を支払わないけないのですよ。しかも自分で楽器を購入しなくちゃしけないの。
しかも親が送迎しなくてはいけない。学童に毎日行っている子は、平日習い事できないじゃーん。
ただでさえ母親は仕事をして、育児、家事に加え子供らの宿題の丸つけ、自主学習という名の親が子供の勉強を見る作業まで増えている現代で、なに?習い事の送迎&高いレッスン料も払うの?
なんか横暴だと思うんだよな。
だって、貧乏人、習い事させらんないじゃん。
教育格差が猛スピードで加速してしまう気がしてならない。

私は勉強が不得意な子の何らかの才能を伸ばすのが部活動だと思う。
楽器を演奏するということは、実に複雑な作業をしている。
自分の体以外の物体に息を吹き込み良い音を出したり、運指を覚えるだけではない。楽譜を読む力、曲の表情を読み取る力、周りの音にピッチを合わせたり息を合わせたり、一曲演奏するのにいろんな力がいるのだ。
私はその学びを小学生という時期に経験させてあげたい。

国は地域移行を自治体に丸投げせず、部活動の受け口をどうしていくのかきちんと議論して欲しい。学童に預けながらも、校庭なり音楽室や体育館などで部活ができる仕組みって作れないのだろうか。

私は活気あふれる部活動を再び取り戻したい。


寺子屋朝日 for Teachers












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