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企画参加の巻

55
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#ショートショート

大切な貴方へ(企画参加)

大切な貴方へ(企画参加)

ねぇ、知ってた?

私ね…珈琲はあまり好きじゃなかったの。

でもね、あなたが淹れてくれた珈琲

今まで飲んだものと違っていた。

初めて美味しいと思えたの。

あなたが私を考えて 淹れてくれたからかな。

ごめんね

あなたの傍でしわしわのおばあちゃんになってもずっと一緒に過ごすって決めていたのに。

私の姿はあなたにはもう見えない。

あなたを抱きしめられない。

あなたの一番の願いを叶えられ

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【絵から小説その3】告白

【絵から小説その3】告白

「そろそろこの関係終わりにしないか?」

「え?」
あたしは彼の言葉にポカンとした。
付き合って1年。特に喧嘩もする訳でもない。口数が少ない彼だが、趣味の映画のことになると途端に熱く語りだす。
そんな彼と過ごすのはとても心地よかった。

今だって昔人気だった映画を観ていた。彼にしては珍しく恋愛もの。
物語はクライマックスに向かおうとしていた矢先だった。
次の言葉が怖い。聞きたくない。逃げたい。でも

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【絵から小説その②】なんでもないひとときを

【絵から小説その②】なんでもないひとときを

「今日さ、ちょっと寄り道しない?」

私が教室に入ってくるなり彼女は楽しそうに言った。
どうやらいつもの店に新作が入ったようだ。
私は仕方ないなと言いながらも内心思いっきりはしゃいでいた。

放課後が待ち遠しい。

彼女は私の席に座ると後ろの暑い暑いと言いながら少し行儀悪く、制服をパタパタとあおぐ。
彼女と後何回、こんなやりとりが続くのだろうか。

もう来年にはお互い別々の道を歩む。

「あー、夏

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【絵から小説】見つめたその先には

【絵から小説】見つめたその先には

黄昏時、この高台に来るのが好きだった。

辛い時、悲しい時、嬉しい時、ここに来るとホッとした。
私はある一点を見つめていた。
街には徐々に灯りが増えていく。
明日からはもうこの景色は拝めないだろう。

視界がぼんやりと歪んだ。夕日が目に染みたのかもしれない、いや、きっとそうだろう。
全部夕日のせいだ。ごしごしと乱暴に擦る。

「ありがとう、さよなら」

私はそれだけ言うと深々とお辞儀をし、踵を返し

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