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休憩/『君と宇宙を歩くために』

・中学・高校の時は勉強が好きでは無かった。勉強というよりもテストのために勉強することが苦手だったのか、それとも単純に授業が面白くなかったのか。大してしていない受験勉強も大層苦痛だったのを覚えている。正直大学に入学してもその苦痛が続くだけだと思っていた。でも、大学の勉強は面白かった。自分の興味関心で講義を選べるし、自分の意見をレポートとして提出すればそれが成績に直結する。(後者に関しては文系だからかもしれない。)
 中学・高校もこんな感じで教えてくれたらいいのに、と思わなくもない。ただ、それは難しいのだろう。指導要領が決まっていて、それを三年間で教え切らなければいけないから。そして、その基礎があるから今の勉強が楽しめるのかもしれない。

・そんなことを思い出すのは、大学入学以降さよならを言えていたと思った数学と再会したからだ。レベル的には算数かな。とりあえず数を扱うのは苦手だ。でもやるしかないので勉強中。算数も数学も、解けた時が全科目の中で1番気持ちいいからな。少しずつ頑張るしかない。

・ちょっと疲れてきたのでこの日記を書いている。誰とも話さない日は自然と日記が長くなる。次に人と会った時に取り出せるように言葉にして、しまっておく。

・最近買ったマンガの話をしよう。

・泥ノ田犬彦『君と宇宙を歩くために』(講談社)

  バイトも勉強も失敗続きの高校生、小林。彼の無気力な日常は転校生の宇野との出会いによって変わり始める。宇野は人よりも”普通”のことが苦手だった。ただ、「できないこと」を「できない」と認めて、「できる」ようにしようと努力し続けていた。その直向きな姿勢に影響を受けて、小林も自分ができないことに精一杯向き合っていく。

 これ凄く良い漫画。良さを語る上で、せっかくなので本文を少し引用しようかな。次に引用するのは、宇野と出会って変わり始めた小林がアルバイト先で失敗してしまう場面。全部失敗してきた今までとは違って、一つ一つ先輩に聞いて全部できるようになったと思っていたら一つ失敗していた。そして、その失敗について先輩達が愚痴を言っているのが小林の耳に入ってしまう。それに対して小林は怒りを露わにするが、宇野の言葉を思い出す。そこからが以下に引用する場面。

宇野:上手にまっすぐ歩けない それを笑われたり怒られたりすると怖くて恥ずかしい気持ちになります
小林:それだ
   これはイラついてるんじゃねえ
   怖くて恥ずかしいんだ
   宇野もそうだった?
   お前も俺と同じだったのかな
   …折れたくねえ

p.57 泥ノ田犬彦『君と宇宙を歩くために』(講談社)

・簡単なことができないことを認めるのが怖くて恥ずかしい。私もあるな~と思った。全然知らないのに、分からないのに、知っている振りをしてしまう。できないのに、できないことを認められないからできないままになってしまう。でも、小林くんはここでできない自分を認める。中々できないことだと思う。だから読んでいる私も、彼を見習わないといけないなと感じた。        できないなら、できないなりのペースと工夫でできるようにするしかない。別にしなくても生きて行けるけれど、その先はきっと緩やかな下り坂。
 この次の頁が更にいいんですよね。
 「できない」「しらない」って中々認められないな。私だけじゃなくて世の中もそんな感じなんじゃないかと勝手に思う。特にSNSはできないことや知らないことに対する風当たりが強い。言い換えるなら、比較して優位性を示す投稿とねじれた卑屈さを示す投稿が溢れている。最近は閲覧数がお金に直結するからか、ネガティブな話題が増えた気もする。どんな人のどんな投稿も同じテーブルに並ぶ。ネガティブな感情はより注目を集める皿なのかもしれない。その料理に口を付けてしまったら、次が欲しくなる。もっと身体に悪そうなものを、もっと。
 「できない」自分を認めて、諦めてはいけないんだと思う。できないことばかりでも、いつか出来るようになる日まで一歩ずつ歩いて筋力をつけるしかない。
 
・作品に触れた後、私は心の中で大きな旅行鞄を想像する。キャスター付きの小さな鞄。そして、そこに詰めたい作品なのかを考える。心の本棚、という言葉を恐山さんが使っていたので、その真似。

・本当はもう一作品紹介したかったけど、長く書きすぎたのでこの辺りで。

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