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▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼    (34)チガイがわかる・おもしろ日本語入門    ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△

    souy

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      元NHKアナ、民放キャスター、はたまた講演講師や大学
      講師などを遍歴して、その後突然スペインのバルセロナに
      移住して、早や20年。
      著書(最新刊)『熟年夫婦の行き当たりばったりスペイン
      移住記』(地球の歩き方、ダイヤモンドビッグ社)
       他に『NHKはもういらない』(三一書房)
         『勉強っていやいやするもの?』(大日本図書)
         「脳みそのほんとうの使い方」(日科技連出版)など
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第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!

        その18、究極のビックリ二重否定 !?

       2023年、明けましておめでとうございます!

「日本語、コノ表現 & その極意!」も今回が18回目、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。 第三章はこれが最終回で、次回からは新しい章に入ります。新しい第四章は、お待ちかねの上級編「文章の組み立てかた」でーす。お楽しみに!!


さて今回第三章最終回は、オドロキの“究極の二重否定”についてお話ししましょう。

        二重否定は、もちろん欧米語にもあります。

たとえば英語で“There was nobody who didn’t eat ramen”と言ったら、日本語では「ラーメンを食べなかった人は誰もいなかった」となって、結局は「全員が、ラーメンを食べた」ことになります。否定を否定すれば、論理的に肯定になるというわけです。

少しばかり調べてみると英語にはその歴史上、この二重否定を否定(?)する強硬な勢力とそれを肯定する勢力とがあって、今でもかなり混乱しているのだそうです。

事実“I don't know nothing”という言葉は、「私は何も知らないことはない」にも、また反対の「私は何も知らない」にも受け取られる可能性があるそうで、全てを論理的に考える欧米人でも、言葉の意味が持つ多様性にはかなり苦労しているようです。

「 えーっ、あるの? ないの?」

もちろんこれらの二重否定は、日本語にも数多く存在します。いや、むしろ日本語ではその違いを楽しみながら積極的に会話や文章の中に取り入れてきたように思われます。前述の、「みんなラーメンを食べた」と「ラーメンを食べない人は誰もいなかった」の二つの文にしても、多くの日本人は両者を基本的に異なるニュアンスで受け止めることでしょう。そこには否定の否定は肯定という論理を超えた、感覚的コミュニケーションが成立しているのかもしれません。


   けれども今回お話しするのは、
         これとはまた別の、究極のビックリ二重否定なのです!


その秘密は、動詞や形容詞の否定形に隠されています。 日本語には欧米語の“no”や“not”に当たる言葉がなく、その代わりとして、〈存在しない〉を意味する形容詞(しかし今では動詞のように振る舞ってる?)「ない」を、語尾に付け加えました。

       否定形 = 動詞、形容詞+「ない」、でしたね?

おや、気がつきましたか? そう、この「ない」も否定できるのです。では復習です!

「ない」に「ない」を繋げるにはどうしますか? そう、最初の形容詞「ない」を形容動詞「なく」に変える必要がありました。ということで、「なくない」が正解でーす!

またこの「なくない」に「ない」をつければ、「なくなくない」。もう一つ加えれば「なくなくなくない」、さらには「なくなくなくなくない」・・とキリがありません。

「美味しい? 美味しくない?」

    Aさん:「このラーメン、美味しくないですか?」

          Bさん:「いいえ、美味しくなくはないですよ!」

ハハ、これを英語に変換してみて下さい。おそらく直訳は不可能に近いことでしょう。ちなみにネット翻訳では「いいえ、美味しくなくはないですよ!」が、”No, it's not delicious!”と、まったく逆の意味になってしまいました(笑)。あえて
英語にするとしたら、”No, it does not mean that it is not tasty!”とでも表現するのでしょうか。すみませんが、私は英語が堪能ではありません(汗)。

欧米語の“no”や“not”に更なる“no”や“not”は付け加えられないのでしょうが、
日本語ではシステム的には無限に否定し続けることが可能です。けれども常識的には2~3回否定までで、それ以上は言う方も聞く方も頭が痛くなってくることでしょう。

また通常は「なくない」ではなく、上のように「なくはない」や「ないことはない」、「ないこともない」、「ないわけではない」などと、より聞きやすく、また意味を強調する言い回しが使われています。

そしてこれらをフォーマル形にすると、「なくない」は、「なくないです」と「なくありません」の2つの可能性があることについては、すでにお話しした通りです。

 「明日会社に行きたくないですか?」
          「いえ、行きたくないわけではありません」

   「あなたは彼女を好きでしたか?」 
            「はい、好きじゃないことはなかったです」

そうじゃないの!

       欧米人が戸惑うのは、まさにこの言い回しです。

以前「イエス」と「ノー」のところでもお話ししましたが、彼らにとって「イエス」はどんな時でも「イエス」、「ノー」は「ノー」であり、た、“no”や“not”を2回使うことは、すなわち“yes”と同じこと、いわば無駄で意味のないことなのでしょう。

論理的にはまさにその通りなのですが、日本人にしてみると、そこに論理以上の何らかの気持ちを込めて話したいし、相手にも話してもらいたい、と思ってしまうのです。

 「あなたは演歌が好きですか?」の答えには、
    「はい、好きです!」よりも、「はい、嫌いじゃないですよ~!」

の方をより好む奥ゆかしさ(?)が日本人の心の中に息づいているのかもしれません。

けれどもそれが論理的なディベートの舞台である政治や経済の世界となると、話しは別です。そこでは多くの場合“yes”か“no”かの二者択一が迫られます。日本人的な間接的な表現をしていたのでは、いつまでも結論に至ることができないでしょう。

以前から日本の問題点とされてきたのはこの点です。特に日本の政治家たちは“yes”なのか“no”なのかをハッキリさせない答弁を、国会などで繰り返してきました。

     「私は・・と考えます」と言うべきところを、彼らは、

「まあ、その~、つまり、なんと申しましょうかー」

「まあ、その~、・・と考えられないわけではないとも思えるのでありまして・・・」 (Well, it seems to me that it's not inconceivable that...)

などと発言する困った癖がついてしまったようで、それでなくても動詞(結論?)を最後まで待ち続けなければならない上に“yes”か“no”かはそのさらに後に位置し、そのうえ二重否定まで使われてしまっては、欧米人にとっては、まさに未知の宇宙人との交信に近いものがあるでしょう。

人類の長い歴史の中で多くの他民族と関わり様々な交渉ごとをこなしてきた欧米人と、周囲を海に囲まれた閉鎖環境で同じ民族同士の内輪の会話を続けてきた日本人たち。そこには、想像以上の大きな文化的隔たりが生まれて来ても不思議はありません。

    日本語を学ぶこと、それは遥かな未知の文化との遭遇なんですね。


          では、次回をお楽しみに!!

                 
ーーー 次回は第35回 ◆ 第四章 上級編、文章の組み立てかた!
  
              その1、動詞、形容詞、形容動詞のつなげ方 

           を、お届けするつもりです。

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