▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼ (24)チガイがわかる・おもしろ日本語入門 ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△
第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!
その8、“あげる”、“もらう”、“くれる”(上)
souy
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元NHKアナ、民放キャスター、はたまた講演講師や大学
講師などを遍歴して、その後突然スペインのバルセロナに
移住して、早や18年。
著書(最新刊)『熟年夫婦の行き当たりばったりスペイン
移住記』(地球の歩き方、ダイヤモンドビッグ社)
他に『NHKはもういらない』(三一書房)
『勉強っていやいやするもの?』(大日本図書)
「脳みそのほんとうの使い方」(日科技連出版)など
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前回は“物(もの)”と“事(こと)”についてお話ししました。今回はそれらモノや
コトの、人から人への移動について見ていくことにしましょう。
人に何かを与えたり提供したりする時“あげる”(give,offer)という言葉を使います。
例えば、「今日、私は父に誕生日のプレゼントをあげました」
そして二人の立場を逆転させ父親を主語にすると、“もらう”(receive)となります。
「今日、父は私から誕生日のプレゼントをもらいました」
つまり“あげた”のは私、“もらった”のは父親。 “あげる”は与える、提供する、
あるいは贈呈するの意味で、“もらう”はその受け身にあたる、受け取る、受領する
などを表します。 またこれらは、モノだけでなくコト(行為など)にも使われます。
たとえば「友達に本を貸してあげた」は、ちょっと難しく言えば「友達に本の貸与を提供した」ということを意味しますし、「先生に日本語を教えてもらった」は、「先生から日本語の教授を受領した」といった意味合いを持っています。
そしてこのような行為の提供や受領の場合には、“貸す”と“あげる”、“教える”と
“もらう”のそれぞれ2つの動詞をつなげる必要がありますが、もうあなたはおわかりですね。 そう、その接続には例の接着剤“て(で)”を使うのでした!!
他に例を挙げれば、「漢字を書いてあげる」、「お金を払ってあげる」、あるいは、「車を運転してもらう」、「手作りのお弁当を喜んでもらう」などなど。
・・・と、ここまでは外国の人々にも簡単に理解できるはずです。
じゃあ、“くれる”ってナーニ?
そう、ここからちょっと話が込み入ってきます。 日本語には“あげる”の兄弟分が
あるんです。それが“くれる”で、基本的には“あげる”と同様“give”や“offer”
に当たる言葉なのですが、誰かが何かを「私に“あげる”とき」(?)は、感謝の気持を込めて、それを“くれる”という言葉に置き換えるのです。
たとえば、「お母さんが妹にプレゼントをあげました」は、きわめて自然な表現です。でも「お母さんが私ににプレゼントをあげました」は、日本語ではなんともキミョーな言い方になってしまうのです。日本人は誰一人こういう表現をしません。
英語ではこれを単に“give me”と表現しているのですが、日本語では「ありがとう」の心を持った別の動詞“くれる”を使い、「お母さんは私にプレゼントをくれました」と言い表します。 つまり動詞“あげる”を“くれる”に変える必要があるのです。
ーー「・・・ください!」と、“くれる”の関係ーー
実を言うと「水を一杯ください!」などの“ください”は、この動詞“くれる”の、
命令形の一種なのです。つまりは、英語の「Give me !」にあたるものです。
歳がバレてしまいますが、私が子供の頃、米国の進駐軍がジープでやって来ると、友達みんなで追いかけて行って、「Give me chocolate !!」と叫んだものでした。 まさに「チョコレート、ちょうだい!!」というところでしょうか。(“ちょうだい”は、“くれる”の一種の命令形)。彼らが“くれた”チョコレートの美味しかったこと!
そして“あげる”“もらう”“くれる”は、モノだけでなくコトにも使われるので、
たとえば「メールを送ってください!」という日本の文章は「Give me send a mail !」という意味になります。正確に言えば、「・・ください!」は決して「Please --」ではありません。映画の字幕などは、度々こんなふうに訳されていますが・・・。
というのも日本語の動詞にも命令形はあるのですが(例えば“行く”なら、“行け!”
や“行きなさい!”)、どちらも封建時代の名残りのようにキツすぎて、民主主義の
現代ではちょっと口にしづらいため、今ではほとんどの動詞にこの“くれる”の命令形の一種、“ください”を接合して使っているからなのです。
ちなみに英語の“Please --”にあたる日本語は“どうぞ・・”や“どうか・・”など
ではないかと思われますが、字数制限のある映画の字幕や台詞ではほぼ同じ意味として「・・ください!」を使っていることが多いようです。
もう一つお話ししておかなければいけません。
“くれる”は、「私に“あげる”」だけではありません!
話は一段と込み入ってきます。何をかくそう“くれる”は、厄介なことに“Give me”
だけではなく、“Give you”や“Give him”など、「あなたに“あげる”」や「彼に
“あげる”」としても使われることがあります。
たとえば私は友達に、「ねえ、この腕時計は誰にもらったの?」と聞くかわりに、
「ねえ、この腕時計は誰がくれたの?」と聞いたりします。
さしずめ英語なら「Who gave you this watch ?」というところでしょうが、日本語では例の“くれる”を使って、まるで誰かが自分に“くれた”ように、つまりは自分が誰かから“もらった”かのように表現することが多いのです。
聞けば、英語にも「put yourself in someone’s place」や「in someone’s shoes」などの言葉があるそうですが、私が友達になったかのように考えてしまうのです。
(今日、お母さんがパソコンを教えてくれた!)
それはまた第三人称に対しても起こります。例えば「彼は父親が買ってくれた真っ赤なポルシェをとても大事にしている」や、「生徒たちは先生が教えてくれた日本の歌をスペイン語に訳して上手に歌っています」など、文章の中に自分ばかりか他人の感謝の気持ちをも込めて表現しようとするわけです。日本人の感性は、奥が深いですねー!
ちょっと長くなりました、この続きは次回お話しすることにしましょう!!
ではまた次回をお楽しみに!!
ーーー 次回は第25回 第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!
その9、“あげる”、“もらう”、“くれる”(下)
を、お届けするつもりです。
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