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▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼    (21)チガイがわかる・おもしろ日本語入門   ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


              第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!

          その5、 動詞 “ない” の世界観と役割
                    (not exsist)


          souy

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元NHKアナ、民放キャスター、はたまた講演講師や大学
講師などを遍歴して、その後突然スペインのバルセロナに
移住して、早や18年。
著書(最新刊)『熟年夫婦の行き当たりばったりスペイン
移住記』(地球の歩き方、ダイヤモンドビッグ社)
他に『NHKはもういらない』(三一書房)
  『勉強っていやいやするもの?』(大日本図書)
  「脳みそのほんとうの使い方」(日科技連出版)など
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ではもう一度、動詞「ある」と「ない」の変化形をじっくり観察してみましょう!


    動詞「ある」    ←(否定)→    動詞?「ない」

ーーーーー〈肯定形〉ーーーー     ーーーー〈肯定形〉ーーーー

   〈インフォーマル〉          〈インフォーマル〉

       現在形  ある            ない

       過去形  あった          なかった
 

   〈フォーマル〉            〈フォーマル〉

       現在形  あります         ありません

       過去形  ありました        ありませんでした

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さて、あなたはどんなことに気がつきましたか? えっ、何も気がつかなかった??  いえ、ご心配はいりません。もう一度目を凝らしてこの表の様々なナゾに迫ってみましょう。
       
たしかずっと前、「二つの例外を除いて、全ての動詞の不定形は“u”で終わる!」
とお話ししました。 その一つは“動詞”「だ」でしたが、あなたの疑問はほとんど
解決したはずです。そう、その通り、残りのもう一つが、この「ない」なのです。


      それにしても、「ない」は本当に動詞なのでしょうか?

だって、最後が“u”ではなく“i”。 なんだか、形容詞のようではありませんか。
そう、おそらくこの「ない」は、以前はオリジナル形容詞だったのでしょう。

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私の拙い推測によれば、仏教思想の根幹には「無」の考え方があります。つまりこの世の根本は「無」、何も存在しません。あると思うのは私たちの錯覚だと考えるのです。「だって、現に目の前にいろんなモノがあるじゃない?」と思うかもしれません。でも、それら全ては私たちのはかない夢なのかもしれません。

「そんな非科学的な~!」、ですか? でも現に最新の宇宙科学によれば、ブラックホールの中は無の世界なのだとか。そしてこの世界は、その無の中から一瞬にして誕生したと考えられているのだそうです。でも、この話しはこれまでにしておきましょう!

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ここで大切なことはこの形容詞(?)「ない」が日本語では動詞や形容詞の最後部にいわゆる変化形として付け足されることで、英語やスペイン語の“not”や“no”の役割を果たしているということです。そしてそれは中国語が欧米語と同様に“不”や“没”を動詞の前に置くのとも、根本的に異なっています。 


つまり英語で「I don’t go」 スペイン語で「No voy」 中国語で「我不去」は、

       日本語では「私は行か "ない"」と表現されるわけで、

   人の話しは最後の最後まで聞かないと、イエスかノーかわかりません。

           なんともヤッカイな言語ですねー!


        では、改めて先ほどの推論を整理してみましょう。

          もう一度、上の変化表を見て下さい!

もし「ない」がオリジナル形容詞だったとすると、とうぜん動詞のように「なかった」という過去の変化形を持っています。そして否定形はというと、現在が「なくない」、過去が「なくなかった」??? オヤちょっと変ですね。ハハ、そーでした!「ない」には否定形はありませんでした。別の動詞「ある」が、その否定形なのでした。


だから「ない」の〈肯定形〉〈インフォーマル〉の現在形は「ない」、そして過去形は「なかった」です。 続いて〈フォーマル〉です。??? やや、形容詞「ない」にはフォーマルはなかったはずが、現在形は「ありません」、過去形は「ありませんでした」となっています。

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  いつの間に「ない」は、形容詞から動詞になってしまったのでしょうか?

その上〈インフォーマル〉の「ない」「なかった」と〈フォーマル〉の「ありません」「ありませんでした」には何の類似点もなく、まるで赤の他人のようではありませんか。

         いやいや、ありました、ありました!! 

変化表の左側、動詞「ある」の〈フォーマル〉の「あります」、「ありました」とは、類似性がありました。 ということはもしかすると、「あります」を「ありません」、「ありました」を「ありませんでした」と変化させて、否定形にしたのでしょうか。


                つまりは、

“存在しない”という意味の形容詞「ない」を動詞や形容詞の否定形に利用しようと
したものの、形容詞にはない〈フォーマル〉を埋め合わせるために、その反対の意味の“存在する”という意味の動詞「ある」の〈フォーマル〉形を変化させてつじつまを合わせた・・・、ということなのかもしれません。


かくして形容詞「ない」は、今ではまるで動詞であるかのように振る舞うようになり、例えば、「明日は学校に行かない」と「昨日は学校に行かなかった」という2種類のインフォーマルの文章をフォーマル形にした場合に、

〈インフォーマル〉「明日は学校に行かない」 「昨日は学校に行かなかった」

              ↓             ↓

〈フォーマル〉「明日は学校に行かないです」「昨日は学校に行かなかったです

              と              と

       「明日は学校に行きません」 「昨日は学校に行きませんでした

の2つの表現が生まれてしまいました。そのどちらも文法的には正しいと言えるでしょう。


                  ☆


         それにしても言葉はなんとミステリアス!

   まるで川のように日々姿を変えながら流れ続けているのかもしれません。

          
           ではまた、次回をお楽しみに!!


ーーー 次回は第22回 第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!
              その6、動詞“ある”と“いる”(そして進行形) 
                     

     を、お届けするつもりです。


               ▽    ▽

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