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父ちゃん、悔しいけど私は笑う余裕なかったよ。

父のかかりつけ病院から着信。

電話にでるのを躊躇してしまう。
心拍がどんどん上がっていく。

鳴りつづける電話を見つめながらボールペンとメモ用紙を用意。
意を決して電話にでた。

「こちらは〇〇中央病院です。
 カルテにある緊急連絡先になっているので電話しました。
 〇〇さんの娘さんで間違いないですか?
 入院の件で緊急でお話したいことがあるのですが、
 お父さんと連絡がとれないんです・・・。」

入院の件?
連絡がとれない?


父は心臓が悪く何度か手術をしている。
常用している薬があること、定期的な検査を受けていること、
3か月に1度の通院をしていることは知っていた。
経過は良好で心配ないと聞いていたので「入院」は耳を疑った。

病院が新型コロナウィルスの対応で大変な状況になっていて、
感染すると症状が重篤になる可能性が高いため、
本来は早く手術をしたほうが良いけれど、
いまは病院に来ることのほうがリスクが高い。
異変があれば直ぐに手術するので、今回は延期をさせて欲しい。

担当医からの話は、手術を延期せざるを得ないという連絡だった。
父の心臓の様子は手術を延期しても問題ないのかを尋ねると、
”心臓の状態があまり良いとは言えないが延期するほうがベストだろう”とのことだった。

結局、手術を延期することと、手術を予定していた日に電話診療で薬の処方をしてもらうことになった。


この一本の電話は、持病があるのに医療が受けられず、薬がもらえず、不安でたまらないとテレビのインタビューに答えている人の様子をみて、
「大変だね」と口では言ってはいたものの、他人事として捉えていたことを強く、強く、自覚させてくれた。

父が心配をかけたくないと思って手術のことを話さなかったのか、話せなかったのかはわからないけれど、父の具合がよくないことと、いまの状況のために、通常の医療が受診できない人やその家族の不安がどれほど大きいかを知ることができた。不謹慎かもしれないが知ることができてよかったと思う。

自粛していることの目的がぼんやりしていた部分があったけれど、いまの状況をとらえる解像度が高くなり、心の距離も近づいたことで、日々の行動に対して感じていたストレスが減ったような気がする。

病気のことを知ったことで不安を高め、ストレスが増えるような気がしていたけれど、STAY HOMEに取り組むことは自分が父の役に立てれることにつながると考えたことで自粛行動が不安を減らすものになったのかもしれない。じぶんでも驚くほどに落ち着いている。なんだか不思議な感覚だ。

東京オリンピックを見るために2年も前にバカでっかいテレビを買った父。
手術が延期になったことに不安がないかを聞いてみると、
「あんまり先延ばしされると困るんやけど・・・オリンピック」と言いながらニヤッと笑った。

父ちゃん、スルーしてしまってごめん。
悔しいけど笑う余裕なかったよ。


来年でも、再来年でも、絶対に一緒にオリンピック見よな。おたがいにSTAY HOME、免疫UPでいこ!


STAY HOME たけまるでした。

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