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巨大な紫色のなにかと

森の向こうから電車の音が聴こえる。その姿は見えない。串焼きをつまみに酒を呑みながら耳を澄ます。きっと車窓からは麦わら帽子の少女が森を見つめているにちがいない。そして一瞬だけ。森の向こうと目が合うのだ。串刺しにした村人たちを喰らいながら酒を呑む巨大な紫色のなにかと。彼女はすこし驚いてから微笑んで手を振る。はじめまして。さようなら。

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