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世界の不登校について。

先日の記事で紹介したとおり、日本には約21万人の不登校生徒がいると言われています。
(小学生約4万4000人(0.7%)、中学生約12万人(3.6%)、高校生約5万2000人(1.6%))

さて、しかし不登校とは、日本だけに見られるものなのでしょうか?
今回は他国の状況を紹介していきます。

韓国

日本以上に学歴社会で、受験戦争が熾烈といわれる韓国。
年間約6万人から7万人の子ども(うち約2万人はソウル市内)が学業を中断する、またしようしているのだそう。
一方、「代替学校」と呼ばれるオルタナティブスクールが増えてきています。
その背景には、既存の学校で学ぶことに意味を見失ったり、いじめや心理的苦痛により不登校になったりと、日本と近しい状況があります。
政府の統計上は289校とされているようですが、「実際は700ほどある」ともいわれ、国が把握できないほどの増え方をしているようです。

台湾

台湾にも、オルタナティブ教育を実践する「実験学校」があります。
そのはじまりは1990年代、自分の子どもの不登校に悩む親たちが、自らの手で学校の設立を目指しました。
その後、2014年には公教育に組み込まれ、政府も後押しするように。
今では国を挙げて実験教育を推進しているそうです。
実際、実験学校での学習のプロセス(子どもの興味・関心を重視し、自発的に学ぶ)が、指導要領のコアの価値に多分に反映されているのだそう。
2018年度には、小学校から高校まで合わせて74校に増え、1万5000人以上がさまざまな形の実験教育で学んでいるといいます。

ドイツ

ドイツで学校に行かないことは、極めてハードルの高いことになります。
というのは、もし無断欠席をくり返すと、学校側は段階的に措置が講じるから。
最初は教育相談という穏やかなものですが、その後、教育・秩序措置→過料→強制就学、と段階的に厳しくなっていきます。
ちなみに、ドイツでは学校へ行く義務があり、学校以外で学ぶことは基本的に認められていません。つまり、ホームスクーリングは禁止され、就学義務違反なるそう。また、日本みたく就学義務が保護者に対してではなく、子ども自身に課されます。
しかしここで特記すべきは、ドイツでは就学する学校がきわめて多様で、自分に適した学校を見つける選択肢が多いこと。転校が容易に行えることに加え、学習促進学校(学習上の難しさがある子ども)や教育援助学校(行動や情緒面で難しさのある子ども)があります。このような学校が、不登校生徒の事実上の受け皿になっているといいます。

イギリス

イギリスには不登校という概念がなく、「怠学」にあたる“Truancy”という用語を使っています。
(もっとも、BBCが日本の不登校について報道した際は、そのまま”futoko”が使われていましたが。)
少し古い数字ですが、義務教育校の怠学は、1997年の1万2000人から2004年には5万人に増加した、と報道されています。
そんな中、学校には行かず、「ホームエデュケーション」(ホームスクーリングと同義)を選ぶ子どもが急増しているといいます。ここ5年では毎年20%ほどの割合で増加し、約6万人(全体の約1%)にせまる勢いとのこと。(ドイツと異なり、就学は義務ではないため、ホームエデュケーションも義務教育として認められています。)
最近では、週に数回学校に通い、他の日は家で学ぶ「フレキシスクール」を選ぶ家庭が増えているのだそう。

日本のこれから

探求学舎代表の宝槻泰伸さんは、「これから前向きな不登校が増えるのでは」と見据えています。その根拠としては、
・すでに学歴の価値が相対的に下がっている
・自分に合った働き方や働きがいを求めるようになっている
・単に生活の糧を得るためではなく、自分の人生を表現する手段が「仕事」となっている
などが。
実際、一般的な学校の代わりにフリースクールやオルタナティブスクールに通う子どもの数は年々増加し、1992年の7424人から2017年には2万346人となっています。

最近では、「ハイブリッドスクーリング」と呼ばれる学び方が生まれています。
これは「年間30日以上、学校に通わずに、家庭学習や地域学習で学ぶ」という学校と学校外の学びを組み合わせた教育方法で、一人ひとりがその興味や関心に応じて探究し、学びます。上で述べたイギリスのフレキシスクールと同義でしょうか。
実践の場所としては、秋田県五城目町があり、子どもたちは週の1日~5日ほどを学校外で主体的に学んでいるそう。朝市に出店してお金を稼いだり、地域の方から野菜の育て方を学んだり、秋田国際教養大学で留学生と英語でコミュニケーションしたり、そんな環境があります。
従来の科目に捉われず、暮らしや地域に密着した学びを得ていることが想像できますね。

そして、101カレッジ。

今回調べていると、いじめの国際調査はあっても、世界の不登校事情を調べたものはほとんどありませんでした。
おそらく「不登校」という定義がないことも一因かと。
多岐にわたる学校があり、多様な学び方が認められたりと、社会側の認識や取り組み次第ではないでしょうか。
また、韓国や台湾のように、不登校がひとつの要因となってオルタナティブ教育/スクールが生まれ、そのような教育が”既存”の教育に刺激を与えているという事実は、興味深いものがあります。

自身はユニークな存在で、世界はカラフルで満ちている。
多様性はおもしろく、ゆたかで、発動力となる。
学ぶ内容、学ぶ方法、学ぶ環境はもちろん、さまざまな多様性を生み出していきたいと思う101カレッジです。


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