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ひきこもりと仕事について。

だれにとっても就労は大きな転機で、また人生の大きな部分を占めます。
ことひきこもりの最中にある、またひきこもりを経験したことのある人にとっては、大きなハードルになり得ます。

今回はひきこもりと仕事について、考えていきます。

ひきこもりに合う仕事…?

ひきこもりにおすすめされる仕事としては、工場の作業員、システムエンジニア・プログラマー、Webライター、清掃業、警備員、配達員などが挙げられています。
人と会わなくても良い、コミュニケーション能力が必要とされない、在宅でできる、採用のハードルが低い、などがその理由。

ただ一方で、適職というものは一概には存在しない、との指摘もあります。
というのも、ひきこもりは「状態」であり、特性や性格そのものをあらわしているわけではないから。(前回の記事にもつながる部分がありますね)

株式会社ウチらめっちゃ細かいんで(ひきこもりの経験者が中心となって設立された日本初の株式会社)代表の佐藤啓さんは、上に加え、
「ひきこもり経験者の仕事上の課題は、頑張りすぎること、自分に自信を持ちにくく、メンタルケアがおろそかになる傾向があること」
と述べています。

就労を支援する団体、企業

ひきこもりの就労をサポートする機関、組織、企業はさまざま。
その一部を紹介します。

ひきこもり地域支援センター
社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士といった、ひきこもり支援コーディネーターを中心とし、関係機関とのネットワーク構築や幅広い情報の提供を行っています。いわば、地域におけるひきこもり支援の拠点となる場所。(一覧はこちら)

地域若者サポートステーション(サポステ)
厚労省から委託を受ける支援機関で、ひきこもり当人の働く力を導き出すサポートを行っています。全国に170カ所以上の相談所があり、就職率は60%超という実績を持ちます。

株式会社MAP
20代、30代のキャリアアップ、キャリア支援を行う株式会社。
ひきこもりやアルバイト経験しかない人も正社員として採用し、業界で必要な専門知識だけでなく、ビジネスマナーも一から教示。そののち、取引のあるおよそ400社の企業の中から各々に合った就業先を見つけ、期間契約のスタッフとして派遣しています。
また、子会社として設立された日本若者就職支援センターでは、フリーター、中退、第二新卒などに対し、転職ありきではないキャリア支援を行っています。

株式会社ウチらめっちゃ細かいんで
ひきこもり経験者が中心となって立ち上げられたIT関連会社。
ひきこもり当事者などに対する教育事業(プログラマスタースクール運営)、ホームページやスマートフォンアプリなどの制作事業、ITエンジニアなどの人材派遣事業、を主に行っています。
また、今はリニューアル中につき閲覧できませんが、ひきこもりに関する総合情報ポータルサイト「ひきペディア」も同社が運営しています。ひきこもりに関して何らかの情報が欲しい人、また情報を発信したい人が一緒に作り上げていく場となっているよう。

労働環境が、ひきこもりとなる原因のひとつ

働くことはひとつの目標になりますが、逆説的な事実もあります。

「中高年のひきこもり調査」(2018年度)では、そもそもひきこもりになったきっかけとして「仕事」に関係する理由をあげる声が多く見られたのです。
(きっかけを尋ね、もっとも多かった回答が「退職」で36.2%、「人間関係がうまくいかなった」(21.3%)「病気」(21.3%)「職場になじめなかった」(19.1%)がつづく)

働く環境が原因のひとつであることは明白。
過酷な働き方、種々のハラスメントが横行する職場、根性論が根をはる企業風土など、こちら側を変える必要性は言うまでもありません。

それと同時に、社会のあり方を問い、変えていくことも必須です。
NPO法人POSSE(労働相談、労働法教育、調査活動、政策研究・提言を若者自身で行う団体)の今野晴貴さんは、
「安心して失業できる社会でなければ、あせって劣悪な仕事に就かざるをえず、それがさらに状況を悪化させる、という悪循環へとおちいってしまう。その矛盾を「家族」が負うことになれば、家族関係の悪化や崩壊へと容易に結びつき、このパターンから引きこもるケースも非常に多い。」
と指摘しています。

農福連携

安心して失業できる、というのは社会福祉ですが、「農業」と「福祉」の連携も、その可能性が期待されています。
(農福連携とは、障がい者などが農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組み(農水省))

たとえば、藤沢市にある農スクールでは、「働きたくても働けない」ホームレス、生活保護自給者、ひきこもり、ニートなどに対し、就農支援プログラムを提供しています。基礎的な農業のイロハを学ぶことからはじまり、本格的に営みたい人に対しては就労の手助けもしています。

私たち101カレッジの職業体験メニューの中にも、農業、漁業があります。
自分自身と自然のつながり、森と海のつながり、を実体験から得ていくとともに、将来その産業を担っていく道も。

農漁業のほかにも、カレッジの修了後は、安心の就職ネットワークを紹介していきます。就職サポートについては、こちらをご覧ください。

ソーシャルファームとしての101カレッジ

101カレッジの将来を描いたとき、「ソーシャルファーム」という存在が近いのでは、と考えます。

ソーシャルファームとは、「社会的企業」と訳され、社会に貢献する役割を担う企業や団体のことを指します。
働きづらさを抱えた人を社会から切りはなして支援するのではなく、社会の中に取り込み、働くことによって社会にも貢献してもらう、という考え方。

ソーシャルファーム自体が増えていくことはもちろん、今ある企業や組織も、ソーシャルファームにシフトしていく未来を想います。




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