一級建築士製図試験_5《2021年S資格チューターが長期クラスについて感じたこと》
みなさん、こんばんは。
一級建築士のYAP(やっぷ)です。
12/24 一級建築士の合格発表がありました。
合格した皆さまおめでとうございます。
また、合格を惜しくもつかむことができなかった皆様、今はすごく悔しいと思いますが諦めずに来年合格をつかみ取りましょう。
そこで本日は今年一級建築士製図試験にS資格長期クラスのチューターとして関わった私が資格学校の指導法について感じたことを忖度なしにお伝えいたします。
講師によって進め方は違うかと思いますので、あくまで私の担当講師の進め方に即しての解説になってしまう点はご了承ください。
来年の学習環境の選定についてのご参考にしていただければと思います。
それではいきましょう!
結論、S資格長期クラスに通った方が良い人は
基礎知識が明らかに不足している人
初受験もしくは2回目受験の人
お金と時間に共にある程度余裕のある人
そして今回お伝えしたいのは製図試験合格には
「環境よりも試験勉強に対する姿勢が1番大切」
ということです。
学校や教材はゲームなどでの課金システムと同じです。無くてもクリア出来るけど、あると有利にクリアできるアイテム。それよりも練習が大切ですし、クリアするための基礎知識は必須になります。
以上を踏まえた上で下記の流れでご説明します。
1.長期クラスのスケジュールについて
まずは長期クラスの流れをご紹介します。
2021年の開校は3月でした。
課題発表以前は3週に1回、もしくは4週に1回休校日があります。
講師によっては休校日に無償で補講を行う講師もいます。参加は自由でしたが、ほぼ全員が出席していました。意識高い!
3月~4月初旬:建築・設備・構造の基礎知識確認
読み取り、エスキス、記述、作図は段階的に時間を区切っての演習。基準階ではなく、ソーニングタイプのエスキス課題。
正直ここまでは基礎中の基礎。エスキス課題もオーソドックスな課題の為、昨年の試験である程度、基礎力が付いた人には物足りない内容になります。
物足りないと感じた受講生は自分の弱点を潰すことに時間を使っていました。(作図力、記述や読み取りでの読み落とし対策等)
逆に基礎知識にあいまいな部分がある人はこの期間までに確認が追い付かないと一気に置いてかれてしまいます。
4月中旬~5月初旬:6.5時間通し実習(5月2日共通模試1)
ここからは本番形式の実習。朝のグループミーティング→6.5時間実習→夕方のグループミーティングの繰り返し。
この時点で2.5時間以内で作図が完図できる力のない人は作図力のトレーニングと各課題のエスキスの復習に追われてしまいます。作図が弱点であることを早い時期に認識できる良い機会となります。
課題自体は難しくないです。この時期から6.5時間でのタイムスケジュールと緊張感の中で実習を毎週行える環境は良いと思いました。
この時期から毎週宿題課題も出題されます。週に2課題こなすため学習時間もかなり必要です。
十分な学習環境が取れない人にはやることだけが多すぎて自分の弱点が残ったままだとその対策に使う時間がなかなか取れません。
自分で取捨選択をして、やることを選別する力も必要だと感じました。(宿題はまじめに全部やらなくてもok)
5月:基準階タイプの学習
模試の後は再度、読み取り、エスキス、記述、作図は段階的に時間を区切っての基準階タイプの演習。基準階タイプを苦手としている受講生が多いため、かなり丁寧に解説を行っていた印象です。
宿題課題も引き続き毎週出ますが、このタイミングで再度自分の苦手な部分を補強する期間にもなると思います。
今年は基準階の読みでは無かったのか講義としては2回で終了。結果的には基準階の課題が出題されましたが、昨年の反省を活かしてのカリキュラム構成だと感じました。
正直この期間は基準階・ゾーニングの出題も分からないため、少し中だるみの期間に感じました。受講生も出題がわからない中で網羅的に学習することに対してのモチベーション維持が難しかったと思います。
6月:実戦課題1~8 ここまでの学習の総復習
実戦課題は本試験過去問のアレンジ問題です。
少し課題の内容も難しくなるため、エスキスが時間内にまとまらない人も出ていました。
3月からの3ヶ月間で十分な学習ができている人は実力を確認できる良い期間となりますが、学習が追い付いていない人にとってはこの期間はフェードアウトしてもおかしくないくらいつらい期間になると思います。
逆に実戦課題をある程度問題なくこなせていた受講生は課題発表後に余裕をもって本試験に向かう準備ができていることを確認できました。
実戦課題は私も毎週解きましたが、本試験前に課題条件が多く、法規の理解力を試される課題の演習を毎週こなせるのは「課題に対する解き切る力」をつける上では非常に効果的だと感じました。
一方で昨年の本試験を振り返ってみると自由度が高く、自己設定、判断が問われる課題でした。資格学校として採点、指導の仕方が難しいという側面があるのは重々承知していますが、自由度の高い課題に対しての「本番での対応力」をつける課題のほうが重要なのではないかと強く感じました。
7月:模擬試験&課題発表前 (7月11日模擬試験2 - 7月21日課題発表)
今年の模擬試験2は『保育所のある青少年センター』でした。3階建てのゾーニングタイプの課題です。S資格としては図書館もしくは保育系の出題を想定しての予想問題です。
課題としては実戦課題に比べれば簡単な課題。むしろH28年の過去問『子ども・子育て支援センター』を十分学習できていればほぼそのまま解ける課題でした。模擬試験は効果測定なのでそこまで極端に難しい課題は出題されません。
それでも最後の模試ということで、いつもはしないミスや読み取りミスで一発ランクⅣになる受講生もいました。本番で同じミスをしないことが大事なので、原因追求と改善策を課題発表前に確認できたのは大きなプラスだったと思います。
本試験でも多くの受験生が読み落としと書き漏れで落ちていきます。そこを回避する訓練は毎回の6.5時間実習でのトライ&エラーからの改善しか考えられないと思います。
失敗と真剣に向き合えた受講生は今年の本試験でもミスをなくすことに成功し、一級建築士試験から卒業できています。
7月:課題発表後~本試験まで
長期クラスではここまでが勝負でした。
課題発表後は1回目の模擬試験までは短期クラスと別の課題ですが、模試からは短期クラスと同じカリキュラムになります。(特別対策講座の内容は異なります)
実戦課題に比べると課題の難易度は下がるため、少し余裕が出る受講生については他校の課題を個人で入手し、解いている人もいました。
今年の課題『集合住宅』については法規的な解釈が難しい部分が多々あり、そこの対策と住戸プランの理解と作図に時間をさけたことは非常に大きなアドバンテージになったのではないかと感じました。
6.5時間の実習については4月から繰り返し何度も行っていますが、課題発表後は課題特有の内容でのミスや読み間違えも生まれます。
毎回の実習後に改善策を考えていくことでさらに合格の可能性を極力100%へ近づけていきます。
読み取りの方法や作図手順の変更、エスキスでの省略や十分な検討ができているかの確認。
短期クラスでは到底できない精度での確認ができていました。
毎回の実習に自分なりの課題を持って挑む姿勢は学校の制度というよりは受講生の意識の違いだと思います。高い授業料を払い、得ている環境を120%利用してやるという意気込みをすごく感じました。
カリキュラムや課題の内容もありますが、私が一級建築士製図試験合格について「結論」感じたのは受講生の試験対策に向かう姿勢です。
完璧な知識を持っていても1つのミスや書き漏れで不合格となる試験。トライ&エラーでの分析と「ミスの防止」への対応策を考え出し、また実行すること。非常にめんどくさい作業ですが、これを実行することでしか合格”確立”を上げることはできないと感じました。
6.5時間演習のトライ&エラーの繰り返しであれば学校通学、独学関係なくできると思います。それをどれだけ緊張感をもって実行し、本番さながらのトレーニングをできるか。その環境を作り出すため、または分析や対応策に客観的な意見をもらうために受講料を支払うと考えたほうが良いと思います。
S資格学院の長期コースは100万円越え。このカリキュラムと環境にそれほどの価値があるとは正直到底思えません(笑)
ただ、その元を取ることは自分次第でできるのかなとも思いました。与えられたカリキュラムをこなすだけなら通信でも十分だと思います。
毎週通しでの6.5時間の演習なんて自分1人では出来ない。添削は自分ではできない。どこを理解していてどこを理解していないのかわからない。繰り返してしまうミスや読み落としへの対応策がわからない。作図が全然早くならない。
自分の弱点を自分で解決できない場合は、お金を使って環境を得ることで必ず2022年合格を掴みましょう。
自分自身の弱点は人それぞれだと思います。その弱点を克服するために一番ベストな環境を選択することが大切です。
今は様々な学習環境の選択肢があると思います。SNSの発達で相互添削も無償でできるようになりました。極力お金を払いたくない人は様々な工夫をしましょう。
何度も繰り返しますが1番大切なのは資格勉強に対する自分自身の姿勢です。この学校に通ったから受かるとか、この講師の講義を受ければ受かるというのは幻想にすぎません。
私が製図試験不合格時に実際に学習環境を決めた理由については別の記事にまとめていますので、そちらも参考にしてみてください。
2.教材・課題の内容について
S資格学院の教材はエスキスの解説資料も含め、他校と比較しても一番わかりやすいと感じています。課題発表後のまとめ資料も非常に良い出来で、今年も配布直後フリマアプリで高値で取引されていました。
私が通学していた時は8割方わかりやすくまとめてもらっている教材に対してお金を払っているという認識でいました。(それでも高すぎますが)
嬉しい点としては今年から作図用紙にも敷地ライン等が最初から記載されていて、実習についてもやりやすくなったと感じています。昨年までは実習の前に各々敷地ラインをトレースしていました。
ただ、相変わらず配布資料が多いです。情報量を絞れないのだとは思いますがあまりにも資料が多すぎて資料整理だけに多大な時間を取られます。どうか来年からはPDFでのデータ配布が行われることを切に願います。
課題については今年の曖昧な課題内容について網羅的に対応していました。地下駐車場やメゾネットタイプという特殊な条件に対して特別対策講座でしか取り扱っていない点については疑問を感じました。
某T社が毎回のようにメゾネットの課題を出題されていたのには、一昨年のN社がユニット型を的中させた例を思い出しましたが、結局は関係なし。某T社が本試験後どのように説明されたのか非常に気になります(笑)
法規に対する解釈が少しわかりにくい部分もあります。資格学校としてあくまでも試験対策としての解釈を受講生に提示するのですが、更に混乱させてしまっているケースもありました。
特に屋外避難階段の計画について開口部の防火設備の設置についての解説資料は非常に混乱を招いたと感じています。講師やチューターがどれだけフォローできたかで解釈が大きく変わってしまったと思います。
教材や環境は十二分に用意されています。それをどう利用するかが重要です。網羅的に課題もこなすため、情報過多になる受講生も少なくありません。
時間とお金に余裕がない限りは別の選択肢を選ぶことをお勧めします。ただ、このカリキュラムを最大限利用できれば間違いなく合格率は限りなく100%に近づく実力が付くと思います。
3.受講生の環境について
受講生の環境についてですが、長期クラスはクラスでのLINEグループ等を作成するところが多く、非常に良い雰囲気だと思います。約7ヶ月半ともに学習するチームなので、必然的に団結力が生まれるのだと思います。
短期クラスと違うのはグループミーティングでも発言が多いことを感じました。クラスの特性かもしれませんが、ある程度付き合いが長くなっているチームだからか、グループミーティングでの意見交換は非常に白熱します。必然的に自分の理解力がわかりますし、誰が理解しているのかもわかるので直接聞くことができ、疑問をすぐに解消することが可能です。
また、受講生の中には法改正によって初受験の人もいます。全体のレベルに大きな差がありますが、そこは講師とチューターの腕の見せ所。今後は初受験の受講生も初年度から長期クラスに通うケースが増えると思います。初受験の人も安心してください。
講師との関係ですが、正直合わない受講生が多々います。実際私のクラスにも課題発表前に何人かの新しい受講生が転校してきました。
学校には講師と合わない旨や、環境を変えたい旨を伝えれば転校ができるそうです。課題発表前に自分に合う講師を見つけられる点も長期クラスの魅力だと感じました。
各校舎にはチューターが付くのですが、ここも少し注意が必要です。私も同じくですが一昨年の合格者がチューターを務めるケースが多いです。研修等も特にないため、自分の経験や知識のみで受講生への指導を行うことになります。
私が2度目の受験で短期クラスに通学していた時のチューターは製図試験一発合格の方でしたが、正直合格する前の私から見ても知識が曖昧過ぎました(笑)
短期クラスのチューターとして、最低限での合格を目指すためには良いアドバイスをしていましたが、間違えた情報を教えてしまう危険性も十分にあると感じました。今年合格者でチューターを務める予定の方、または受講生の方は十分に気を付けてください。
1クラス10人程度のため、講師も全体のレベルを把握して個人個人に合った指導をすることも可能ですし、かなり手厚い大勢だと感じました。長期に通って最大限に環境を利用したうえでも受からなければ来年の学習環境選びには相当苦労すると思います。
学習環境については自分で学習スケジュールが立てられない人にはある程度強制力があるのでお勧めです。ただ、課題発表まではマイペースで弱点克服に注力したいという方にはお勧めできません。宿題もかなりの量が出ますし、全受講生が同じカリキュラムで進むため、網羅的に再度勉強したい人にお勧めです。
最後にもう一度、今回のご説明した内容をまとめます。
結論、S資格長期クラスに通った方が良い人は
基礎知識が明らかに不足している人
初受験もしくは2回目受験の人
お金と時間に共にある程度余裕のある人
そして今回お伝えしたいのは製図試験合格には
「環境よりも試験勉強に対する姿勢が1番大切」
ということです。
来年の一級建築士資格所得に向けて、是非自分に合った学習環境を見つけてください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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