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恐るべし大津ナカマチ商店街

琵琶湖畔に浜大津駅から徒歩5分ほどのところに、ナカマチ商店街というアーケード街の昔ながらの商店街がある。

長等商店街と丸屋町商店街と菱屋町商店街という、3つの商店街が合わさってナカマチ商店街というらしい。

だいたい、アーケード街というだけで、もう昔のそれである。
こじゃれたピザやさんなんかもあるが、やっぱり雰囲気は昭和のそれである。
シャッターが閉まっているところだって、チラリホラリガラリ。
アーケードのせいで、薄暗く、人通りも決して多くない。
いや、はっきり言って少ない。
休日なのに。

でも。
でもである。
なんだか、歩いている人たちが、ちょっと楽しそうなのである。
どうやら、それぞれ目的をもって、訪れている感じなのである。

それもそのはず。
知る人ぞ知る、ここには美味しいお店が何軒もあるのだ。

まずは、ザ・商店街の果物屋さんという店構えの、丸二果実店。
ここは、お店の果物を使った、フルーツサンドが有名。
もちろん、季節のフルーツジュースが美味しいのは、まちがいない。
いっちゃあなんだけど、ぜんぜんお店はこ洒落ていない。
しかし、その日常感が、ほっこりとフルーツサンドを味わえる秘密なのかもしれん。
店頭に、無造作に並べられている果物が、さらにそそる。
なんとなくな感じで座っている店番のおばあさんも、これまた絵になっている。

それから、お漬物屋さんの「八百與」 。江戸時代から続く超老舗のその店。
ケヤキの一枚板の大看板はもちろん、店構えも老舗以外の何ものでもない。
店先に、ビニール袋にくるまれて並べられたお漬物たちは、その包装のシンプルさに、美味しそうな感じがひきたてられている。
そして、ちょっとお漬物を眺めていると、すかさず、
「今の季節ねえ、生食用のオクラを売りに来るんですよ。それを、あっさりめに漬けたものがあるんですよ。珍しいでしょ。生食用なんて。
あっ、水なすは、浅漬けのものと、糠漬けのものがあるんですよ。といっても、糠漬けも浅めにつけているので、ちょっと違いがわかりにくいんやけどね。でも、糠漬けってめずらしいでしょ。
白菜は、いろいろ値段がついてるけど、もう全部250円でいいですわ。
この昆布はね、もっとこまこう切って、小皿に入れたら、お酒と合いますんやわ。
あっ、この容器を使ってもらってもいいですよ。」
と、まだ買うかどうかも決めていないのに、うっすら糠色に染まっている元は白色だったはずのトレイを示される。
えっ?押し売りか?
いやいや。
切れ目のない営業トークに似ているのに、全然嫌な感じがしない。
まあ、ほんまのことを言うてはるからやろな。
だから、聞いてしまうんやな。
しかも、口上を聞いてるうちに、絶対に買いたくさせてしまうあたりは、もうプロ中のプロである。
そして、ここのお漬物は、ほんまにかなり美味しい。
きっと、老舗の味だけでなく、老舗ならではの口上も引き継がれてきてるんやろうなあ。
さすが、寛永3年からの170年以上の歴史は、奥が深い。
いや、歴史の力とは、こういうことを言うのか。

でも、残念なことに、ここには、お漬物しかない。
白飯があれば、試食をしながら、もっと買ってしまうのに。
白飯を、用意しはったらええのになあ。
(ちなみに、試食はありません。念のため。)


そんな私の思いを察したのか、店から歩いて2分ほどのところに、おにぎりやさんがあった。
「野洲のおっさん おにぎり食堂」
絶対に、美味しいに決まっている名前である。
伝統野菜と、伝統食材を使って、地域を笑顔にする創作おにぎりの店だそうだ。
メニューも豊富である。
そりゃそうやな。
滋賀の伝統食材は、たくさんあるからなあ。
ただ、ここは大津市で、野洲市ではないんやけど、なんでこの店名?
まあ、なんか事情があるんやなあということで、おにぎりのラインナップを知りたい気持ちに、そんな疑問はふっとんでしまう。
まあ、ここのラインナップのすばらしいこと。ホームページより、ちょっと紹介。
    人気メニュー第3位 卵黄しょうゆ漬おにぎり
          第2位 近江葱のネギトロおにぎり
          第1位 ほぐし鮭おにぎり
でも、私にとっての1位は、断然「卵黄しょうゆ漬おにぎり」である。
卵黄の適度なとろみがほどよく、醤油加減も、ごはんにぴったり。
そして、卵黄と、ごはんの割合が、最高である。
配分なんか考えずに食べても、なぜかぴったり。
すごすぎである。
おにぎりも、ほわっと。それでいて、くずれない。
私が作るおにぎりは、まさしく握り飯。
いつも、ぎゅうぎゅうにつまっている。
こんな風には、握れない。

おっと、メニューを確認しなくては。

ありました、ありました。
「塩むすび」
しかも、海苔ありと、海苔なしが選べる。

この、塩むすびと、あのお漬物屋さんがコラボしたら、最高やのになあ。
いや、そこは、私がとりもちたい。
両店には、それぞれの店に専念していただいて、ちょうど両者の真ん中あたりの空き店舗で、「味わいやさん」を開店させる。
それぞれで購入した商品を、この「味わい屋さん」で食べてもらう。
そして、そこでは、超絶おいしいお茶とお味噌汁をお出しする。
たしか、この商店街に、老舗のお茶屋さんがあったような。
そこから、お茶を調達して、美味しいお茶の入れ方を教わろう。
お味噌汁は、たしか、琵琶湖の魚を扱っているお店があったから、そこからしじみを調達。
そして、これも、美味しいシジミ汁の作り方を教えてもらおう。
うわあ。素敵やなあ。
でも・・・、もうかるかなあ。
ちょっと厳しいかなあ。
うん。それやったら、美味しい珈琲も用意しとこ。
そしたら、喫茶店もどきができるかもしれんしなあ。


おいおいおいおいおい。
妄想が過ぎる。
ひろがり過ぎる。

なぜなら、私にとってのメインは、「茶菓山川」である。
地場の食材にこだわりながら、美味しい和菓子を作っておられるお店。
なにより、心惹かれたのが、小豆栽培をも店主がされているところ。
大津市の北隣にある高島市で、小豆を栽培されているとのこと。
いやあ、小豆から育てるなんて、あんこに対する思いが素敵すぎる。

他にも、この「茶菓山川」では、年中かき氷が食べられる。
滋賀県栗東市のいちじくを使ったいちじく氷。
高島市のアドベリーを使ったアドベリー氷。
定番と思われるいちご氷も、そのいちご色の美しさったら、ありゃあしない。
宝石みたいなキラキラしたいちご色の横に、ちょこんと添えられているあんこの色が、これまた美しい。
来週からは、季節の氷として、モンブラン氷と、バターピーナツカボチャ氷が登場するらしい。

そんな素敵な店には、お客さんが途切れることがない。

順番待ちをして入店した夫と私は、何を食べるかを迷いに迷う。
絶対にはずせないのが、あんこ。
氷も気になるけど、お腹の調子に自信がない。
でも、食べたい。
あ~~。でも、今日のところは、あんこや。
あんこを、たっぷりと食べるには、どのメニューがいいのか・・・。
それに、このメニュー表にある水餅とは、いったいなんぞや。
とても、決めきれない。
しかし、次々やってくるお客さんを見ると、グズグズしていられない。

氷は、お腹の調子のこともあるので、隣の席のおばあさんのいちご氷を見ることで、満足することにして、
和菓子は、もう少し、涼しくなってから再訪することにして、
そしたら、そしたら・・・。

結局、私は、「ほうじ茶蜜寒天」を、
夫は、「わらび餅」と「水餅パフェ」を選んだ。

青紅葉が飾られた「ほうじ茶蜜寒天」。
寒天と、あんこと、白玉。
そして、濃厚なほうじ茶蜜。
甘すぎないあんこの、つぶの食感が絶妙である。
美味しい。
寒天と、あんこと、ほうじ茶蜜のバランスも、文句のつけようがない。
ほうじ茶蜜を、最後の最後まで、たらしきる。
隣のおばあさんの熱い視線を感じながら、堪能する。
いいよ。
いちご氷を見させてもらったお返しやし。
がっぷりと見てや~~~~~。

写真にあるのは、夫が食べた水餅パフェ。
水餅が何かは、謎のままやったけど、パフェの中に入っている食材が、覚えきれないくらい、たくさんやった。
チラ見するたびに、違う食材を幸せそうに口に運ぶ夫の姿には、かなり、いらっとさせられたわ。

次回は、何を食べようかなあ。
そう思いながら、美味しいものを食べる幸せは、美味しさ倍増。
お会計の時に、お店の方とお話をしたところ、あずきの収穫を一緒にできますよ~~と、お声掛けしていただいた。
えっ?なんですって?
この美味しいあんこの、元となる、小豆畑を見ることができますの?
最高過ぎる。
11月のその時を、今から楽しみにしようっと。

それにしても、薄暗いアーケード街の中には、こんなにもいろんな世界が繰り広げられている。
今まで、ほとんど訪れたことがなかったなんて、なんてもったいないことをしていたんやろう~~~~。

当然、妄想の「味わいやさん」に、茶菓山川さんの和菓子も、持ち込んでも良しやで。

勝手な妄想。
ナカマチ商店街の皆さん、ごめんなさい。
でも、これから先、この素敵な商店街が、
静かに、ていねいに、確実に引き継がれていくことを願っています。

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