デスカフェ、「もしもの時にあなたは?コロナ禍で、どう思い通りに"生き終わる"か」をテーマに開催

 葬儀社、ライフネット東京(東京・品川)代表の小平知賀子さんが主宰するデスカフェに、2月18日、先月に続いて参加した。今回のテーマは「コロナ禍での終末期現場から〜自分の思い通りに生き終わりたいなら…」。
 小平さんは、「終活セミナーを始めて今年が12年目という節目。そこで、終活セミナー、デスカフェでは、『もしもの時にあなたはどうしますか?』を共通テーマにしたいと思います」とあいさつ。
 人生の最終章を笑顔で終えるか、悲嘆に暮れるかの分かれ道は何なのかを考えたいという。
 コロナ禍で、医療、介護の現場は大混乱に陥った。一度、入院すると患者は、家族でもなかなか会えない。入院患者の病状はほとんどわからず、家族はオタオタするしかない。
 これでは、家族、大切な人にもしもの出来事が起きた時の心構えもできない。そんな状況が続いている。
 デスカフェでは、まず、ケアマネジャーの吉野清美さんが、在宅介護や看護、看取りの現場で起きていることを話した。
 新型コロナが蔓延し始めた時、マスクが手に入らなかった。防護服か支給されることなどはまったくなく、「マスクも防護服もないのに、熱のある利用者にどう接するの?」と戸惑った。それなのに「PCRの検査場まで連れて行け」などと言われたりした。
 案の定、デイサービスは感染の恐れのある高齢者の受け入れをストップ。ヘルパーも新型コロナが疑われる高齢者宅には訪問しなかった。
 しかし、一人暮らしの高齢者や認知症高齢者を放置するわけにはいかない。代わりに買い物をしたり、ワクチン接種を一人でできない高齢者をサポートするなど、本来のケアマネジャーの業務以外の仕事に追われた。
 要介護の高齢者が入院すると、様子がわからない。会えないまま亡くなる例も。
 一人暮らしの高齢者の場合は、家族に代わって着替えなどを病院に持っていかなければならなかった。そんな苦労をしたのに、退院した高齢者からは「一度も見舞いに来なかった」と文句を言われた。 
 この後、参加者が二つのグループに分かれ、自分、あるいは家族が新型コロナに感染したと想定し、最後に笑って"生き終われる"ようにするためにはどうすればいいのかを議論した。
在宅医療もしているクリニックのソーシャルワーカーの対応に感心した。
 このクリニックでは、ソーシャルワーカーが、患者がどのようなケアを希望するかを聞いて、患者の意思決定を支援するACP(Advance Care Planning:アドバンス・ケア・プランニング)というプロセスを実行している。
 その中で、万が一、新型コロナに感染した時、どんな医療機関を受けるかーーと言った情報も提供している。
 地元のソーシャルワーカーは、地域の医療機関とのネットワークがある。救急搬送する救急隊も、各病院の受け入れ情報をリアルタイムで見て、患者を搬送するが、幾つもの病院から受け入れを拒否されて、搬送先がなかなか決まらないことが多い。このソーシャルワーカーは日頃の付き合いから、受け入れを直接、依頼したりしたという。
 ソーシャルワーカーに頼るのが、一つの知恵だと学んだ。
 実際に新型コロナに感染した人も参加者の中にいた。その経験談は貴重だった。
 認知症の90歳を超える高齢者をPCR検査に連れて行くのはかなり困難。そんな時、かかりつけ医に相談すると、「みなし陽性」(新型コロナウイルス感染者と同居等の濃厚接触者が有症状となった場合に、医師の判断により検査を行わず臨床症状で新型コロナウイルス感染症と診断する取り扱い)と診断してくれた。
 家族全員が新型コロナに感染、ペットの愛犬が残されることになった時は、犬と一緒に入居できる仮設住宅があることを保健所の職員が紹介してくれた。
 一人で悩まずに、かかりつけ医や保健所に相談することが必要ーーという知見も得た。
 「半径16km内なら医師は訪問しなければならない」「入院してから、足りないものはアマゾンでほとんど買える」など、さまざまな知恵も、参加者から授かった。
 小平さんは、もしも新型コロナに感染したらーーという想定で、今いる仲間と話す環境を作り、笑って〝生き終わる〟ために必要な知識を得る術を実体験させてくれたのだろう。
 最後のまとめで、ACPを考えるためには、ACPよりもっと手前の、健康な時から人生観や死生観を元に「自分は何を大切にしているのか」「どのような人生を歩みたいか」について考えておくことが重要という話があった。
 家族でも互いの人生観まではよく理解してなかったりする。もしもの時に備え、それぞれの気持ちの深い部分までわかり合うことが大切ーーと学ぶことができた。


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