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1ドル150円。円安について考えてみた その4。

この記事では、円安について私が考えている内容をお伝えしています。

前回は下記表を見ながら、超低金利時代になるまでに起きた「プラザ合意」「バブル崩壊」の状況を説明しました。

金利の推移(定期預金/1年)
(出所)野村総合研究所SuperFocus、日本銀行のデータを基に野村アセットマネジメント作成

「その1」から「その3」までの過去の記事も併せて読むと、流れがわかりやすいと思います。

アベノミクス、異次元緩和。

さて今回は、バブル崩壊から「失われた10年」という景気が低迷した状況を脱却するべく、長期計画で実施された経済対策「アベノミクス」について解説したいと思います。

アベノミクスという言葉はもちろん知っていましたが、それが実施されていた当時は私自身そんなに大きな事が行われているとは意識していませんでした。

その後、経済に興味を持ち出した時に改めて調べてみると、本当に異次元な取り組みが行なわれていた事を実感しました。(ちなみに現在も続いています)

上記図で「3本の矢」として様々な施作が実施されましたが、特に「金融緩和」「財政支出」の取り組みと日本銀行の関係に注目したいと思います。

アベノミクスとは政府の取り組みと思いがちですが、日本の中央銀行である日銀と密に連携をとった取り組みだということを押さえておく必要があります。

日銀の取り組み。

本来は独立した機関である日銀ですが、政府方針に合わせて動くようになりました。

政府の方針に従い、日銀は貸出金利を下げ、国債、ETFなどの資産を大量購入します。

その例を見ない規模から「異次元の金融緩和」と言われました。

この表を見ると、今の日本の株式相場も官製相場に感じます。

これにより、市中にお金が大量に供給され景気が良くなるという目論見でした。

この政策に関して色々な評価はありますが、私の考えでは一部の所にお金が集まったに留まり、全体の景気が良くなったとは言いづらい状況だと思います。

その一部というのが株式市場であり不動産、資産性の高いもの、または公的な資金の近くにいたセクター、当時この流れに乗って投資をしていた人は多くの利益を手にしました。

現に、日経平均株価は当時から約3倍に跳ね上がり、不動産価格も大幅に上昇しており、一部分野でのバブル的状況と言っても良さそうな気がします。

日銀は政府の財布なのか⁈

また、なぜ政府はこのような施作を日銀にさせたのかというと、一つに大規模な経済対策予算を盛り込みたかったからという事があります。

政府が大規模な予算を組む際、税収等で賄われない部分に関して、国債を発行し市場からお金を集めますが、もちろん無料では国債を買ってもらえません。

ここで、これまでの記事で書いてきた「金利」が重要な要素になってきます。

政府としては発行する国債の金利が低い方が安くお金を集められますが、国債を買う側としてはできるだけ金利は高い方が嬉しい。

少しややこしいところですが、国債は日銀が直接買い取っている訳ではなく、一旦金融機関が買ったものを、市場で買い取っている体をとっています。

この需給の関係で金利が決まるのですが、ここに異次元に国債を買い取る姿勢を見せている日銀の存在があることで、国債の需要は高く維持され、金利は限りなく低いまま取引がされるようになります。

これが、日本の金利が低く抑えられている要因になっています。

また、このおかげで政府は超低金利で、巨額の予算が組めるようになりました。

毎年のように予算総額は過去最高額を更新し、低金利とはいえ、歳出における国債費の割合も大きいものになっています。

一方で、少しでもこの金利が上がってしまうと、この膨大な予算が組めなくなる、さらには財政破綻も可能性が出てきます。

これが政府としては金利を上げられない要因になっており、そのツケをこれまで日銀が払ってきたとも言えるのではないかと考えています。

日本国債の半分は日銀が保有している。
この状況で、現状の国債の金利は本来の価値が反映されているのか疑問です。


日銀は耐えられるのか。

長期金利が0.25%に収まるまで無制限に日銀が国債を買う(買オペ)、というニュースはよく報道されていました。ちなみに、その後上限が0.5%になり、現在は0.5%を目処に1%まで許容するという方針に変わり、徐々に抑えきれなくなっている様子が伺えます。

日銀は日本の通貨である日本銀行券を発行できる唯一の機関。

その機関が、本来の価値より割高な国債や株価の吊り上げのためにETFなどを異次元に紙幣を発行して購入している状況は、世の中、対外諸国からどのように評価されるでしょうか?

確かに、コロナ禍を通じて世界の中央銀行も同様の振る舞いをしているのは事実で、それが全世界的な通貨の不信に繋がっていると思いますが、為替は相対的な評価で決まるもの。

その中でも日銀はマシな方なのか?それとも通貨発行機関としての信頼を失いつつあるのか、今考えるべき事柄だと思います。

次回に続きます。

表題の「円安」について、これまでは「日米との金利差」が話題の中心でしたが、個人的にはこの「大規模緩和の出口戦略」の問題も、大きな要因になるのではないかと考えています。

これが、その1の記事でお伝えしていた、私の考えている「日本の構造的問題点」です。

果たして今後、金利差が縮まることで円高傾向になるのか、それとも日本の問題点が浮き彫りになってくるのか。

次回は、その日銀の大規模緩和からの出口戦略について、考えていることをお伝えしたいと思います。

次回も楽しみにして頂ければ幸いです。

本日は以上です。

※内容について間違っている箇所や、何か気になる箇所がありましたら、ご指摘頂ければ助かります!

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