マガジンのカバー画像

◎私の詩すべて◎

69
切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
運営しているクリエイター

#恋愛

お願い事 《詩》

絶望とか悲しみとか苦痛とか いくらでも食べるから それで体が壊れてもいいよ どれだけ悔しくて泣いて 涙で目が潰れてもいいの 愛すべき人を傷つけたくない 誰にも必要とされないゴミになっても 愛をくれた人に傷をつけないですむ 何もできないぬいぐるみになりたい🧸

お散歩行きたい 〈詩〉

大好きになれた君の 一番近くに生きたかった どうして遠くで置き去りなの お散歩したかった 約束したよ なんで 君は生きてるのに なんで他の人と一緒に歩くのに なんで私はここで死ぬの お散歩したかった 抱きしめたら抱きしめ返すって言ったよ なんで なんで捨てるの ごしゅじん どうして わからないよ 悲しい 怖いよ 一緒にお散歩しようよ

パパとあたし 〈詩〉

あの頃パパは優しくて 毎日あたしと遊んでくれた たくさんお話してくれた あたしの命を喜んで もっと遊ぼうって望んでくれた パパは物知りでおもしろくて かっこよくて大好きなの 手を離されることだけが怖かったの 恐れたとおりになっちゃった パパはあたしを見ないんだ あたしのお話疲れるんだって 無視してないって言いながら お返事しないで放っておくの パパは他の女の子と仲良しで あたしとはもう遊ばないんだ パパがパパじゃないみたい パパ、パパ どうしてあたしを嫌いなの あたし悪い

しあわせの日に

過ぎたいつかに帰れるのなら 死んでもいいと思えたあの日に 世界で一番しあわせだって 生まれて初めて感じた日 月がきれいだったよね 君と初めてくちづけ叶えた 君と私しか居ない夜の街 こわかったけれど信じた日 手を離すことができなくて 大きな手のひら握りしめてた 下げてたペンダント私の首に 通してくれた別れの日 みじめでずっと恥ずかしかった 弱い私を何度も抱きよせ 額にやさしくくちづけ与えて 静かに受け止めてくれた日に 過ぎたいつかに帰れるのなら 死んでもいいと会いに行っ

君におはようおやすみを

今度生まれてくる時は 大好きな君に 毎日おはようおやすみなさい 伝えることを許されたい 君にどれほど触れたくて お話したいと思っても 声の届かない遠い国 やっと僕に許された距離 山のあなたの空遠く 叫んでも聞こえないのに 美しさを見つけてしまった 知った僕が悪いのだろう 山を越える力を持てず朽ちても 二度と君と僕が生まれなくても 好きなものを好きだと 言えたこの命を僕は愛したい 今日の君はどこに居るのだろう 空の向こうで何をしたのだろう おはようおやすみまたね それだ

星のきみ

明日にも世界が終わるなら 名も無いきみに会いに行こう ぼくにとっての何なのか 名は無いとしてもうつくしい かすかな光でかがやくきみよ 世界の終わりの明日の日に きみがすべてを手放して ぼく一人を待つのなら 迷わず走って会いに行く 辿り着けないと分からずに 遠いきみを抱けるのだと 愚かな願いの離せぬままに ぼく一人を待つきみが そこに居たなら命など かまわず向かって行けるのに どこにも見えないぼくのきみ 名も無いきみはいつまでも ぼくの夢に生きていて 明日にも世界が終わる

やすらかにおやすみ

夢の中でだけは 仲良しでいてね 顔を合わせず 手にも触れず 見えない命であろうとも 君は僕が描く 限りなく終わりなく 思うままにあらわす 月の裏の廃墟を歩く 人のいない静けさ 手を繋いでどこまで 終わらないお話 疲れたらひとやすみ 好きな色を食べたなら また少し踊ろう まどろみの来るまで 甘やかしふざけよう 夢の中で夢見る 時は経たず漂う 目を開けばいつでも 優しく笑う君だけ 何もかもを忘れた 遊びだけの舞台で 何度でも繰り返し 不思議な話つくろう 僕が全て描く 君を

空想上の心中

約束は無いままに いつか話したたくさんの 夢物語は宝物 全部全部しまって 持って行くからね 世界を忘れる日まで 一緒にいてね 名前の無い物語 影も形もあいまいで 繋ぐ手も無い寂しさを 一人抱いて抱いて 連れて行くからね 世界から消える時も 一緒にいてね 心中 心中 心中しようね 形の無い二人 幻のあなた 作り物の僕 指切りもしなかった 未来もつくれないんだ 目も合わないままだ 声も聞こえない 一人夢の中 お話をなぞる 何もかも落としても 苦しみで狂っても すべてが

君の声の届く場所

君の声の届く場所に居たい 僕はいつでも振り向いて 抱きとめてあげる 君の望みの中に 僕は在る 君の声の届く場所に居よう 僕は君を探さずに 声だけ覚えている 君が鳴くとき 僕も鳴く 君の声の届く場所に居ても 僕は時々僕を忘れ 静かに眠るよ 君も世界から 居なくなる 君の声の届く場所に居られず 僕は一人ぼっちでも 怖さに耐えるよ 君が僕のこと 忘れても 君の声と会えて嬉しかったの 僕は何の役も果たせず 一夜の夢として 君をすり抜ける 寂しいね 君の声の届く場所に居たい

執着

消去法で愛したくないんだ どちらかといえば良いなんて そんな形で君を選びたくない 何があっても君をお腹に入れたい 簡単に手放せる軽い愛情じゃない 魂を引き摺りだして生贄に捧げてでも呪う 消去法で死にたくないんだ しかたないからここで終わり そんな流れで殺したくないんだ 何があっても物語を美しく描きたい 完結にまとめられる単純なお話じゃない 魂を引き摺りだして生贄に捧げてでも祈る

さみしさについて

結局、さみしい。 どれだけ優しい刺激を胸に入れても。 日向で遊んでも、日陰で休んでも。 君の名前を知らなくても、数えきれないほど呼んでも。 何百キロメートルの彼方に沈黙している時も、 声だけ飛ばしあった後も、皮膚に触れる距離を知っても。 君はずっと僕の中に居るのに。 結局、さみしい。 さみしさは心細さだ。 僕がどれだけ君やこの世界を必要としていても、 君やこの世界に必要とされないなら僕は怖くなる。 居てもいいよと、存在を許されてはいても、 手を繋いでくれなければ、 頭の中は

同じ夢

ぼくたちは同じ夢を見た 甘やかでいとおしくやわらかい時間を ふたりでいっぱい抱きしめて 夢は夢の中でだけこころよく 夢は夢の中でだけいとおしく 日にあたって静かに溶けた ここには何も無い はじめから 何も思わず形無く 言葉の意味はあとづけだから 夢は夢の中でだけこころよく 夢は夢の中でだけいとおしく 溶けて水となり地にしみた ぼくたちは同じ夢を見た 時間の流れない空と土の中に 淡く小さく眠り続ける

役割があってお守りのようでもある 役に立つ道具になれたなら 君の物になれるでしょうか いまだこの人生の価値は 許されないらしいから ひとり森の奥で横たわり 君を想って木の間から おぼろげな月と星を見送る 意図し演じなければ許されない世界は 私の生きていい世界と思えないから 私は私であることを恥じてしまう 私に名前は付かないのですか ただ雨のように君に降り注ぎたい 私が雨となり土となれたなら 言葉なく所在なく君を愛そう 君が溶けて形無くなるのを待とう

叶わない夢を 愛すことすら難しく 届かない言葉を今夜も 血の中でくすぶらせる 寂しさで蒸された肉が 悲しみで冷やされるまで 暗い部屋で 静かな音の中で 夢にさよならを捧げ続ける