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エンジン開発 Part-2

もう2021年です。前回の更新から4ヶ月以上経過しているという事実に恐れを感じております。

さて、前回はこんな話をしました。

エンジン開発のおおまかな流れを掴んでいただけましたか?今日は、ロケットエンジンに関わるおもしろい話など。

そもそも液体燃料ロケットエンジンが初めて開発されたのは1926年。その後、数々のエンジニアたちによって基礎理論が研究され、1958年には史上初の人工衛星「スプートニク」がソ連によって打ち上げられました。それから60年ほどたった今日。ロケットエンジンの基礎原理は一切変わっていません。

ロケットエンジンの基礎原理は風船を使って説明することができます。パンパンに膨らませた風船の口を離すと、中の空気を勢いよく吹き出しながら飛んでいきます。これは、風船が空気を吹き出すことで、風船自体に吹き出す向きとは反対の方向に力を受けているためです。これこそが、ロケットエンジンの基礎原理。作用反作用の法則です。

ロケットエンジンでは、燃焼室内に燃料と酸化剤を噴き出し、これを燃焼させて高温・高圧の燃焼ガスを作ります。この燃焼ガスをノズルから高速で吐き出すことで、その反作用を得て前に進むのです。しかし、正確な設計ができていなければ、必要な推力を得ることはできません。では、どんな風に設計をするのでしょうか。

燃焼工学や気体力学、流体力学など、さまざまな学問を習得していれば、一からロケットエンジンを設計することは可能です。しかし、その設計には理論だけではカバーしきれないような領域が含まれていることも事実。たくさんの実験によって得られる経験則があって初めて設計が完成するものです。こういった経験則は、偉大な先人たちによってまとめられており、その代表的なものが、「Modern Engineering for Design of Liquid-Propellant Rocket Engine」です。これはNASAの技術資料「SP-125」をもとに作られたもので、これ一冊あればロケットエンジンの設計ができるといっても過言ではありません。邦書であれば、木村逸郎先生による「ロケット工学」もあります。

経験則の中でも特に重要となるのが、燃焼室の特性長さというやつです。これは、燃料と酸化剤の組み合わせによってある程度幅を持った値となります。そもそも燃焼室の役割とはなんでしょうか。前述の通り、ロケットエンジンでは燃焼室で高温、高圧の燃焼ガスを作ります。もし燃焼室長さが短すぎれば、燃料は燃焼し切ることができずにエンジンの外へと放出され、燃焼室長さが長すぎれば、燃焼ガスが燃焼室内に必要以上の時間止まることとなってしまいます。こうならないように燃焼室長さを決めるのですが、その一つの指標となるのが特性長さなのです。過去に行われた様々な実験によって明らかになった、どれくらいの燃焼室長さにすると良いのかという経験的値を使うわけです。

いよいよ次回はロケットエンジン開発で使うツールを紹介していきます。

田渕宏太朗

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