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痕跡と記憶

 時々、仕事の帰りにちょっと遠回りをして散歩する。
 散歩場所は昭和の匂いが漂う街を選ぶことが多い。そうして古い家を見つけると、どんな人たちがどんな生活をしていた(している)んだろうと考えるのが存外楽しい。
 ただ、あんまりじろじろ見ていて通報されてはかなわないから、立ち止まらないで極力自然に通り過ぎるよう心がけている。

 今朝、古い家が解体されているところへ出くわした。廃墟や古い家が好きなものだから、解体中の家にはつい目を引かれる。出勤途中でなかったら立ち止まって眺めていたいところだ。
 壁に開いた穴から和室が見えた。和室が見えると脳内で小林亜星と西城秀樹と樹木希林の生活シーンが流れ始めて、何とも云えないジーンとした感じになる。これが洋室だと、名前も知らない韓国の役者らが演じる裕福な家族が浮かんでくるばかりで懐かしくも何ともない。だから和室が見えた方が当たりを引いた気分になれる。

 古い建物でも、文化財になっているようなナントカ屋敷より、錆びたトタンで補修されているようなのが好きだ。生活の痕跡がありありと残っているのがいい。

よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。