座る人、偽警官
朝、網膜剥離の経過観察で、土手道を歩いて眼科へ行った。
天気の良い中、どんよりした曲を聴きながら歩いていたら、土手の法面に知らないおじさんが座っている。スウェットを着て、釣りでもしているのかと思ったが、竿がない。法面の中腹に手ぶらで座って、ただ川を眺めている。川には鴨が泳いでいる。
歩き疲れて休むなら、何も中腹まで下りることはない。土手道の脇へ座ればいい。
わざわざ中途まで下って座るのなら、何か理由があるのに違いない。
何をしているのか気になる一方で、ことによるとこれは自分にしか見えない、実在しない人なのかも知れないと思ったら、本当にそんな気がしてきた。
それであんまり見ないことに決めて立ち去った。
土手道を進むと、じきに線路橋が交差していて、そこで行き止まりになる。
線路橋と法面の間は暗くて、人が隠れるのに丁度いい。一度、夜に警官が隠れているのをたまたま見付けた。
ただでさえ薄暗い所へ、暗い時間に黒っぽい服を着て潜んでいるのだから、見付けた時には随分感心した。
警官はこちらが見ているのに気付くと、人差し指を突き出して「しっ」とやった。
自分は軽く頷いて立ち去ったけれど、あれが本当に警官だったかは判然しない。
よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。