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恐怖と誓い

 まだ独り暮らしをしていた頃、郵便受けを見るのが怖い時期があった。随分自堕落な生活だったから、予想外の請求書とかを恐れていたのだろうと今は思う。

 一応、毎日見るようにはしていたけれど、どうかした拍子に空けてしまうと、そこから怖さが倍増し始める。
 ある時、そうやって二週間見ずにいたら、警察から何だかハガキが来ていた。
 ◯月◯日の運転について確認したい事があるから△日までに出頭しなさい、さもなければ裁判云々と書かれている。
 大いにうんざりした。そうして胸中が甚だモワモワし始めた。△日はとうに過ぎていたのである。
 こういうのが来るから郵便受けが怖いのだと思ったけれど、誰に文句を云えるものでもない。郵便受けを毎日確認していればすんなり出頭して片付いたはずの用件が、見ていないから裁判とか禁錮とか物騒な事を云われているので、どう考えたって自業自得である。

 慌てて警察署へ電話したら、まだ受け付けてくれると云われて、急いで出頭した。
 先方の確認したいことというのは、果たしてスピード違反だった。名古屋高速のある区間を三十キロオーバーしていたのだそうだ。
 オービスの写真を突き出され、「これはあなたですか?」と問われ、違いますと云いたかったけれど、どう見たって自分だったから「そうです」と言っておいた。
 写真の自分は随分ニコニコ笑っていて、見ているうちに段々腹が立ってきたから、もう金輪際運転中は笑わないことに決めた。

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