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オサダ君とカウンタック

 オサダ君は幼稚園に入る前からの友達なので、恐らく幼馴染と云って差し支えないのだろう。
 祖父母と同居することになって、引っ越す前から「近所にオサダ君ていう同い年の子がいるから友達になれる」と聞かされていた。
 引っ越したその日からオサダ君は早速遊びに来た。先方でも裏の百さんのところに同い年の子が来ると聞いていたのだろう。
 オサダ君は黄色いカウンタックがプリントされたTシャツを着ていた。

 その日からほとんど毎日一緒に遊んだと思う。
 彼の家で緑ジャケットの『ルパン三世』を一緒に観ていたのを覚えている。ちょうど赤いジャケットのルパンを月曜晩に放送し始めた頃で、緑の方を夕方再放送していたのである。だから今でもチャーリー・コーセーの「あし〜もとに〜」を聴くとオサダ君の家を思い出す。

 小学校に入ってからは特に理由もなく疎遠になった。のみならず、何なら反目し合うような感じで、まるで付き合いがなくなった。幼馴染と云っていいものか、何だか判然としないのはこのためだ。

 30年以上経ってプチ同窓会的な飲み会に行ってみたら、主催者の駒澤から「幼馴染じゃろう?」と引き合わされた。最初は誰だか分からなかったが、よく見たらオサダ君である。昔見かけた親父さんとそっくりになっていた。

 それからは帰省するたび一緒に飲んだ。
 いずれ娘が自立すれば地元に帰り、近くに昔からある『デッキガーデン(仮)』という喫茶店に通いつつ、オサダ君と一緒に緑のルパン三世を観るつもりでいたが、オサダ君とはコロナ騒動を境に再び連絡が途絶え、『デッキガーデン』は廃業した。

よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。