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てりやき、憤怒

 てりやきマックバーガーを初めて食べたのは高校生だった時で、あんまりピンと来なかった。
 美味いには美味いが、ハンバーガーを食べている気がしない。おまけにパンの間でハンバーグがズルズル滑って食べにくい。仕舞いに、口の周りと両手がベタベタになった。
 多少美味くたって、こんなに食べにくくては割が合わない。もう二度とオーダーしないことに決めた。

 けれどもどうやら世間では評判が良かったようで、最初は期間限定メニューだったのが、じきに定番メニューとして復活してきた。
 その時分にはもう大学生になっていた。高校時代よりもマクドナルドの利用頻度は上がっていたが、そうしてまた出て来たって、こちらにしてみればもう頼まないことに決めてある。だから注文時に見かけても、「あぁ、あれね、いらんやつ」と思うだけでスルーしていた。てりやきマックを褒めそやす人も周りにあったけれど、自分はずっとスルーし続けていた。

 ある時、アルバイトに行く途中、梅田駅のマクドナルドで軽く腹ごしらえをしようと思ったら、大学の友人である佐村と出くわした。
「おぅ、どうしたこんな所で?」
「今からバイトに行くんだがね、その前にここのマクドで軽く食っておこうと思ったのさ」
「そうか、じゃぁ一緒に付き合うさ」
 店に入って注文する際、どういう気持が働いたのか判然しないが、いつもだったら選ばない、てりやきマックバーガーをそう云ってみた。
 いよいよ食べてみると、思っていたより随分美味い。ズルズル滑る件も、注意深く対応すれば別段問題はない。
 何だか今までひどく損をしてきたような心持ちになった。そうして段々立腹してきた。
 向かいに座った佐村が何だか話していたが、それどころではなかった。


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