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ウルトラ警備隊と蒟蒻
小2の時分には、ほとんど毎日イカサキ君と遊んでいた。
イカサキ君は玩具を随分たくさん持っていた。当時、新しい玩具のCMが流れると、実物は大抵彼の家で見たように思う。恐らく彼が一人っ子だったからだろう。自分はそれがいつも羨ましかった。
あんまり羨ましいものだから、家に帰ってから同じ玩具を親にねだると、「よそはよそ」から始まって、そんなことを云うのならもうイカサキ君と遊ぶのを止しなさい、と云われる。それを云われてはこっちも困るから、羨ましくても黙っておくことに決めた。
ある時イカサキ君の家へ行くと、発売されたばかりの『ウルトラ警備隊アタッシュケース』があった。プラスチックのアタッシュケースに、ウルトラアイ・隊員証・隊員バッジ・拳銃、その他それっぽいものが入っている。
子供心にも子供ダマシ感があって、最初はそれほど欲しいとも思わなかったのだけれど、どういうわけか、見せられている内に段々羨ましくなってきた。
ただ、いくら羨ましくたって親にねだればいつものコンボが来るのに違いない。仕方がないから自分で作ることにした。
プラモデルの箱に紙を貼って、同じ紙で取手をつけた。ケースの閉じ具には、ちょっと頭を使ったのを覚えている。中身のウルトラアイとか隊員手帳も紙で作った。
翌日それを持って遊びに行ったら、イカサキ君は「すごい!」と感嘆し、イカサキ君のお母さんは「あら、上手に作ったねぇ」と言ってくれた。
どういうわけか、褒められているのにやるせない心持ちがした。
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夕方になって家に帰ると「おかえり」と母が言い、妹は食卓でこんにゃくの煮たのを食べていた。それを見て自分は、作ったアタッシュケースを潰して捨てた。
こんにゃくのにおいを嗅ぐと、時折このことを思い出す。
よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。