見出し画像

嘘と涙とカレー

 小4の時、学級農園で作ったじゃがいもを使ってカレーを作る授業があった。自分はそれを随分楽しみにしていたのだけれど、当日うっかり米を持って行くのを忘れた。
 忘れましたと云うのが何だか恥ずかしくて、先生には「カレーが好きじゃないから持ってこなかった」と言っておいた。
 先生はそれに取り合わず、同じ班のメンバーに「百君にちょっとずつ分けてあげて」と言って、米をちょっとずつ集めてくれた。
 自分はその米でカレーを食った後、ルーだけでおかわりした。いくらなんでも嘘丸出しだったと思い、おおいに反省している。

 大学1年の時は学生寮に住んでいた。個人経営の寮だったから、色んな学校の生徒がいた。社会人もいた。
 朝夕の食事付きで木曜の夕食はカレーだったと思う。カレーの日はいつもお代わりで2杯以上食っていた。

 2年生の9月に寮を出た。引っ越しが1日で終わらず、日割り家賃を払うから一週間ばかり荷物を置かせてくれないかと大家に頼んだが「あかん!」とニベもない。おまけに「今日出て行く言うたやないか!」と随分きつく言ってきたから、こちらも「死ね」ときつく云って退出した。
 結局荷物は周りの友達の部屋にひとまず置かせてもらって、後日回収した。
 出て行く前に、お世話になりましたと寮母さんたち――3人いた――に挨拶をしたら、リーダー格の “リバクボ” さんが「最後に晩ごはん食べて行きなさい。今日はカレーやで」と言った。
 2杯食って、寮を出たら涙が出てきた。

よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。