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百卑呂シ言行録

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日常を切り出して再構築したもの。
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2023年11月の記事一覧

箸と嫌がらせ(2023/11/26)

 義父にショッピングセンターのフードコートで昼ごはんをご馳走になった。  ラーメンをそう云って待っていると、ベビーカーを押す夫婦が隣に座り、奥さんがビビンパを食べ始めた。箸の持ち方が少しおかしかった。旦那は何も食べずにベビーカーをゆっくり揺すっている。 ※  昔、職場のメンバーで食事をした際、加澤が上司から「箸の持ち方がおかしい。全体、どういう教育を受けてきたんだ? 正しい持ち方は薬指と(以下略)」と随分ネチネチやられていた。あれでは何を食っても一向に美味くなかったろう。

悪の根源(2023/11/24)

 娘が幼稚園に入る時、月謝引落用に作った銀行口座を卒園以来使わずにいたら書簡が来た。このまま放置しておいたら先方で解約して、口座の残金は手数料として徴収するという。  確認したらまだ2,000円ばかり入っているようだったから、自身で解約しに店へ行った。  やや年配の、感じの良い女性スタッフに依頼して手続きを待っていると、むかし居合の道場を破門されてC銀行の口座を解約したことが思い出されてきた。  居合の先生は常日頃から「私はC銀行の本社に勤めている、ちょっと偉い人なのだよ」

バター、胡散くささ、別れ(2023/11/22)

 昨日トミーが、カントリーマアムの『じわるバター』が美味いと力説してきた。  その力説の仕方が、「じわるバター、美味いんですよ。でもきっと、身体に悪い美味さなんですよ」というので、褒めているのだか貶しているのだか判然としない。  元来が胡散くさい男なのに、云っていることが判然としないのだからますます胡散くさい。あんまり胡散くさいものだから、「身体に悪い」の部分しか頭に残らない。  だからきっと食べずにおこうと思ったけれど、今日、「これ、食べますか?」と『じわるバター』を持って

雨と憤怒(2023/11/18)

 家で仕事をしていて、気付いたら雨が降り始めていた。見ると洗濯物が庭とベランダに干したままだったから、急いで取り込んだ。うさぎのケージが洗って干してあったのも組み立てて入れ、うさぎ自身もベランダから部屋に入れた。  全部片付いたところへ妻から、「雨だから洗濯物入れといて」と電話が入った。  洗濯物を家の中に干して仕事に戻ったら、何だか随分日が照ってきた。  雨雲レーダーを確認すると今日はもう雨雲は来ないらしい。それでまた洗濯物を外に出した。急いで取り込んだのが損をしたようにも

異世界、変な偶然(2023/11/16)

 ある事情で今日の予定がぽっかり空いたから、少し遠目の店回りをすることにした。  店回りは、得意先の店舗スタッフに商品の説明をしたり現場の情報をもらったりするのだけれど、相手の反応はまちまちで、目を輝かせながら色々訊いてくる人もあれば、興味はないけどメーカーが来たからと渋々対応してくる人もある。今日行った店はみんな前者で、気分が良かったからいつもより多めに回っておいた。  夕方、会社へ戻るのに高速道路を走っていて、どうもおかしいようだと気がついた。  もう随分走っているのに

本、BGM、頭蓋骨(2023/11/05)

 司馬遼太郎の『城塞』を読みたくなって、BOOK OFFの100円コーナーへ探しに行った。  以前、山岡荘八の『徳川家康』全26巻をBOOK OFFの100円コーナーで揃えて読んだことがある。あれに比べたら『城塞』の上中下巻ぐらいは余裕だろうと思っていたけれど、行ってみたら1冊もなかった。  状態が良い方の棚にはあったからそっちを買おうとしたら、なんと500円もする。全巻揃えたら1,500円だ。売れる本ほど高値になるのはしようがないが、中古の文庫本にそこまで出すのは何だか面白

時代、修理、バッテリー(2023/11/03)

 娘のシャープペンシルが壊れて芯が出なくなったと云うから見てやった。数年前のホワイトデーに自分が買ってやったものだ。  自分も小学生の頃にシャープペンシルが壊れて、父に直してもらったことがあり、さすがはお父さん、と随分感心したのを覚えている。  今思えば、壊れたといっても折れた芯が口金に詰まっただけのことだったろう。それなら針金を差し込んで掃除してやればすぐに直るのだから、何も感心するほどのことではない。  娘のシャーペンもそのつもりでいたのだけれど、実際に分解してみると

指摘と譲歩(2023/11/02)

「百さん、すみません」と、経理のキャサリンさんが席に来たから少しうんざりした。  この人はフグ田さんの部下である。社内でフグ田さんとは割と良好な関係を保てている――と思う――が、この人とはどうも調子が合わない。  何しろ相手の話を聞かない。話しながら相手を指差す癖もある。恐らく自分と同年代だけれど、よく今までやってこれたものだと感心する。 「百さん、すみません、この◯◯の請求書はインボイス対応のものを出してもらわないと困るんです」  ◯◯は、あるウェブサービスの名称だ。 「