いつだって、はじめまして(初投稿記事100スキに寄せて)。
あのラスト三行を入れたのは、つくづく英断だったと今でも思う。
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表題のとおり、初投稿の記事が先日100のスキを頂戴しました。
今後、スキの取り下げやユーザーアカウント削除によって減ることもあるかもしれませんが、三桁の大台を突破したことに違いはありません。
弱小アカウントの身として、一つでもスキをいただけることのありがたさと尊さは嫌というほど体で知ってきました。だからこそ、見ず知らずの方からでも必ず二つ三つはスキをいただける自分の記事たちを、ひそかに誇りに思っています。
そういう自分が上げた記事が、100のスキマークを押してもらえた。いきなり天から100個のスキが降ってきたわけではなく、1年半かけてじわじわと評価してもらえたのだから、一口に「100」とまとめるのは誤りでしょう。
あくまで「1×100」。1個いただくのも本当に難しいスキが、1個1個時間をかけて積み重なって、鍾乳石のように形成された、100個。
いずれにしても、快挙であるし、感謝に堪えません。
実を言うと、最初は不服でした。
当時の自分にとって、初投稿の記事はただの挨拶がわりであって、本題ではなかったのです。本題はエッセイなのに、そのエッセイが書けども書けども評価されない。その一方で、初投稿の記事だけがいきなり30もスキを集めて、その後も定期的にスキをいただいてくる。
小料理屋で言うなら、客が突き出しだけ食って満足して帰っていくのを眺めている気分です。もっとこだわりのネタも食ってってくれよと思いながらも、流石にそんなケチをお客様につけるわけもいきません。書きはじめて2,3ヶ月の間は、そういう忸怩たる思いで過ごしていたのを思い出します。
noteに多少慣れたころ、この記事だけがスキを集めるいくつかの原因が思い当たりました。
ひとつは、誰も無名の人間に興味がないということ。
手垢がつくほど言い古された話ですが、発信をはじめた当初はその発信者が何者なのか誰も知りません。そういうスタートラインからいきなり自分語りを書いたところで、誰が好きこのんで読むというのか。
その理屈自体は、私も重々承知していました。
それでもなおエッセイにこだわったのは、単純にそれしか書けないし、書きたくなかったから。人様に提供できるスキルや知識を持ち合わせていない者が書けるのは、結局自分語りしかありません。
また、自分の文章や世界観に自信を持っていたことも大きな理由です。昨今流行りの薄っぺらいライフハックや自己啓発記事ではなく、あくまで文章一本で勝負したい。また、自分ならそれができるはずだという自信です。
よしんばスキ一つで終わろうとも、自分にしか書けない文章を読んでもらう方が自分にとっても読み手にとっても価値的だし、総じて世界にとって有益だと思ったのです。最近はエッセイでなくコンテンツを語ることも多いですが、そういう思想自体は変わっていません。
もうひとつの理由は、自己紹介記事が”ウケるコンテンツ”のひとつだったということ。より正確に言うと、noterなら誰もが興味のある、「なぜnoteを使い始めたのか」について触れざるを得ない話題であったということ。
投稿者自身について語っていながら、読者の興味は純粋に投稿者のキャラクターに向けられているわけではない。むしろ投稿者の背後である、noteにまつわるアレコレに向けられている。
「誰も自分のことに興味がない」というひとつ目の理由の裏返しですが、これを理解するのにはずいぶん時間がかかりました。
なんで自己紹介は評価されるのに他の記事は読まれねえんだ、自己紹介が面白いヤツが書いた文章なら他のも面白いに決まってるじゃねえかとハラを立てていましたが、今ならある程度は納得できます。
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もっとも、そういうネガティブな理由だけでなく、ポジティブな理由もあったりします。
自分の方でもこの記事は折に触れて読んでいますが、そのたびに思うのは、まあ何というかふつうの自己紹介じゃねえなと。
自己紹介記事でよく見るのは、年齢なりお仕事なりの自分の属性、そしてどういう経緯でnoteをはじめて、今後どういう風にnoteを使いたいかという決意表明が箇条書きで書かれているパターンです。
言うなら、「これからnoteはじめます!みなさんよろしくね!」みたいな感じです。ウブな新人特有の、礼儀と可愛げが伝わってくる書き方。
ひるがえって自分の初投稿記事を読むと、いきなり一人称での自分語り。新人なのに超太々しい。
自分の来し方となぜnoteを始めるに至ったのかを私小説みたいなノリで書いているんですが、どこにも忖度している様子が見られない。口調も今回のようなですます調ではなく、吐き捨てるようなである調。
決して捨て鉢な態度ではないんですよ。ただ、根拠不明の自信に満ちあふれているのが読んでて伝わってくる。
「新人ですけどがんばります!みなさんよろしくね!!」
ではなく、
「おう俺だ。来てやったぞnote。まあ期待しとけ」
みたいなそんなノリ。有無を言わさぬ確信が文章中に立ちこめている。「なんでもいいから何か書け」というタイトルの普遍性と相まって、これは確かに目を引くかもしれんなと。
というか、実際確信しきっていました。俺なら面白いモン書けるに決まってるじゃねえかということを。
バカじゃねえかと言われるでしょうし実際バカなんですが、バカゆえに何の迷いもなく書けたのが良かったなと思います。恐れ知らずで書き上げたからこそ、読んでて勢いを感じる文章になったなと。
※余談ですが、noteを始めるにあたっていきなり投稿したわけではなく、半月ほどROM(=Read Only Member。読む専を指す古き良き死語)に徹していました。創作のTIPSやら高評価の記事を一通り読んだうえで、「よっしゃこれなら俺でも全然イケるな」と思ったので書いてみた次第です。
入念なリサーチを経てコレなんだから、筋金入りのバカなんだなと我ながら思います。
とはいえ、いざ投稿という段になると流石にビビりました。
これまでブログもSNSも使わなかった人間が、いきなり長文を投下してどういう反応が得られるのか。ドヤ顔で乗り込んでいっても梨のつぶてに終わるんじゃねえのか。
そして何より、本当にこの三行を入れてもいいのかどうか。
0.1ミリの大きさでもいい。
閉じかけた世界に、この”退屈”に。
もう一度、風穴を開ける一助となってくれ。note。
これは、初投稿記事のラストに入れた三行です。嘘偽りのない祈りの言葉ですが、これを入れるか入れないかでずいぶん迷いました。
バカにもそれなりの羞恥心はあるもので、あまりにもクサすぎるんじゃねえか、もう少し無難なまとめ方にした方が後々のためにいいんじゃねえかと小一時間は悩んだものです。
さんざん懊悩したあげく、やはり素直な気持ちを込めるべきだと腹をくくって、そのまま投下しました。
自分で書いてて言うのもおかしな話ですが、この初投稿の記事を読み返すたびに不思議な清涼感を味わっています。何かがはじまりそうなそんな予感。敬愛するTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのデビュー曲、「世界の終わり」のギターイントロを聴いたときのような感触。
それはひとえに、この三行のおかげだなと思うのです。
カッコつけに見えるけどカッコつけではない、自分の裡から自然に湧き出た祈りの言葉。
あのとき日和らずに、意を決して叩き込んで良かったなと。
そう、つくづく、思うのです。
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果たして、noteを書きはじめたことで私の”退屈”は消えました。二ヶ月ほどのサボりを二回も入れていますので偉そうなコトは言えませんが、ここ最近は退屈していません。
いや、退屈するヒマが無いんですよ。より正確に言うと。
アイデアなんてとっくの昔に枯渇しているし、やる気が出ないこともしょっちゅうです。投稿前に抱いていた根拠不明の自信は、一年半も経過すればさすがに薄れもしています。
それでも週イチで書き続けるのは、自分にnoteを書けと言ってきた友人二人と、数少ない常連さんが定期的に読みたいと言ってくれるから。
そして、未だ見知らぬnoterに、私にしか書けない記事を提供したいから。
読み手の方に伝わっているかどうかは自信がありませんが、私はこれまで内輪ネタを書かないように努めてきました。ここで言う内輪ネタというのは、特定のユーザー間でしか伝わらないような話題です。
自分の記事が万人受けしないのは自覚していますが、それとはまた別次元の話です。センスの合う合わないは別にして、初見の方でも一読して理解してもらえる内容にしようという意識だけは強く持っています。
その意味では、私の記事はいつだって「はじめまして」なのです。
私と同じように万人受けしないセンスを持つ、未だ見知らぬnoteのはぐれ者にこそ、私の記事が届くチャンスを増やすために。
万人受けはしないけど、ツボにハマる人はハマってくれる、私にしか書けない記事を書くために。
そのために、今日も今日とてキーボードをバチバチ叩いて、「はじめまして」を繰り返しているのです。
何十回目かの「はじめまして」も、これで終わりにさせてもらいたいと思います。
甚だ不調法ではありますが、はじめましてになぞらえて仁義を切ることで、今回の〆とさせていただきます。
初見の方はお見知り置きを。
常連の皆様方に置かれましては、相も変わらぬ格別のご贔屓に厚く感謝申し上げます。
当方、生まれも育ちの九州の山村、伊達の通じぬ田舎者にて御座います。
名乗りの由来は明かせませんが、”RTG”の名を使い、このnoteにて書き物をしております。
扱う書き物はエッセイという名の自分語り、そして自分が惹かれたコンテンツの感想文。ユーモアとハードボイルドの価値観を織り交ぜて、面白可笑しく読んでいただこうとキーボードを叩く、未だ駆け出しの未熟者にて御座います。
当世流行りのモノや価値観に縁遠いゆえ、何を語れど万人受けは致しません。然りとて、読んだ十人のうち二、三人には、必ず面白いと思わせる。そういうモノを書いているという事に限っては、自信を持って言い切れます。
一期一会になるにせよ、刎頸の交わりになるにせよ、袖振り合うも他生の縁。互いの記事に目を通させていただければ、これ幸いと存じます。
いずれにしても、高い敷居じゃありません。
どうぞお楽に。ささ、お楽に。