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エスプレッソ向け電動グラインダーを選ぶのに2週間かかった話 【沼】

いきさつ

ある日のこと、注文していたカップ・オブ・エクセレンス(COE)優勝の浅煎り豆が届きました。
早速味見してみよう!とワクワクしながら相棒のwilfaちゃんにセットしていたところ、

ガー゛ー゛ーーー ゴ…..ヒュン……………………….。
という音が。

そう、モーターがオーバーヒートしてしまいました。

メーカーのサポートに問い合わせてみたら、
「最近の浅煎り豆は壊れる原因になりやすいので、細かく挽きたい時は、最初粗めに挽いてからをおすすめします」
「あくまで家庭用なので、使用頻度が高いと早く劣化します」
とのことでした。

現品を送った結果、1万円ちょっとで新品交換できるということになりましたが、せっかくなのでこの機会に買い替えようかと思い、いろんなグラインダーを調べてみることにしました。

これが沼の始まりだとは知らずに…..。

私の抽出条件・環境

コーヒーを淹れるのに必要な器具は、淹れ方によって大きく変わります。
( 私の場合はドリップで淹れないので、ドリップ派の方はあまり参考にならないと思いますm(_ _)m )

・淹れ方:  エスプレッソ(ラテ)
・使用頻度:  1日2杯ほど。  時々イベントで淹れる時は最大10杯ほど。
浅煎り豆もガンガン挽くので、電動*
・1杯ごとに、豆の種類は頻繁に変えて挽く(夜はデカフェ)
・<個人的重要ポイント> 持ち運びやすさ
・味にうるさい

*  持ち運びという条件だけだと、よく手挽きのハンドミルを勧められますが、かの有名なコマンダンテで浅煎り豆を挽いてみた時、硬すぎて1周たりとも回せなかったので、電動という条件にしています。

また、キャンプに最適なハンディな電動ミルもありますが、エスプレッソ挽きかつ浅煎り豆でもきちんと挽けるかが怪しいため、検討しませんでした。
たぶん深煎り豆のドリップ用であれば大丈夫でしょう。

持ち運びのしやすさは、近距離ならスーツケースか旅行バッグに入れて運べる程度、飛行機だと重量オーバー料金が加算されない程度が目安です。
よって、10kg級のグラインダーはなかなかヘビーなので対象外とします。

持ち運びをしないんだとしたら、この辺が現在最強機種のようです。

● みんなの憧れ ek43

● 安定の エウレカ製

 安く手に入れるなら、海外のエスプレッソ器具専門ショップから個人輸入もできるよう。(電圧と周波数の仕様に注意)

エウレカは刃の調整のしやすさ(掃除・刃交換時の狂いにくさ)でダントツらしい。

そして、比較に検討を重ねる日々

条件に合うものを各オタク様に聞いてみたり、Home-Barista.com という海外のコーヒーオタク専用掲示板やReddit、Twitterをひたすら読み漁った結果、評判が高かったこちらの2つが候補に。

① LAGOM mini

 / OPTION-O社
  $ 374(48mmコニカル刃) (2022.5時点) ※送料別

◎ 重さ 1.5 kg
◎ サイズ 6.5 × 9.5 × 24 cm(ほぼ500mlペットボトル!)
◎ デザイン(クールで最高!)
○ カスタマーサポート(親切でフレンドリー)
◎ 日本への発送OK
○ 日本用プラグ相談可能

② Niche Zero

 / Niche Coffee社
  $ 499 (2022.5時点) 63mmコニカル刃 ※送料別

△ 重さ 4.1 kg
○ サイズ 約 12 × 21 × 31 cm
△ カスタマーサポート(最低限で質問にはっきり答えてくれなかった)
△ 日本への発送不可(代理購入・個人輸入が必要)
△ 日本用プラグ非対応(2022.5 時点で UK / US / EU / AUS対応プラグのみ→別途変圧器で調整 (周波数が関西・関東でも適合するようにUS以外を選択) )


実用的な使い勝手を見ると、明らかにLAGOMminiに軍配が上がりますね。特に持ち運びしやすさ重視の私は、先述のwilfa(約2kg/17×12.6×28.5cm)でもかさばるのが引っかかっていたので、小さい・軽い・のにパフォーマンスはパワーアップ はかなり嬉しいところ。

デザイン性は好みですが、木のテクスチャのあるグラインダーは珍しいのでかわいらしさで言えばNiche、Apple信者などスタイリッシュさが好きなタイプならLAGOMでしょうか。

どちらも単一挽きに対応しており(挽き目を都度変えやすい)、挽いた粉は真っ直ぐ出てくるようです。
(*LAGOMのが多少飛び散りやすい様子)

それではもう少し細かい部分を見ていきます。


全体的な比較動画がこちら:

<この動画の方の味感想>(ウォッシュトのコロンビア豆で比較)
 LAGOM:フレーバーがしっかりしていて、甘みがあり、バランスの取れた味わい
 Niche:酸味があり、後味が渋く奥行きのない?(”hollow”)味わい
 (過抽出の場合の風味が出ているので、微調整が難しい とも取れます)

Nicheの味について、エウレカMignonなど別のグラインダーと比較した動画では、

https://youtu.be/5UCY8xekpG4

とのことです。

…テキストの記事はGoogle翻訳のおかげでなんとかなりますが、YouTubeだと和訳がない時もあるし、あってもわかりづらくて、日本のホームカフェ需要の市場の小ささが悔やまれるばかりです。。😢
(たしか、一番売れてる家庭用コーヒー商品は、ドトールのインスタントコーヒーだったかな..)

エスプレッソに対応しているか?

LAGOMはエスプレッソ挽きには非対応という声が時々見られますが、公式によると、38mm刃は挽くのに時間がかかることもあり非推奨、48mm刃なら1分近くかかっても良ければ対応できる、ということです。(2022.3時点)

とはいえ、48mmでも業務用での使用(毎日何十杯も挽くような使い方)は推奨されていません。細挽きは負荷がかかるので、おそらくモーターの消耗が早くなってしまうのでしょう。
これは家庭用に作られたものだとある程度しょうがない部分ではあります。。短命覚悟。

が、「エスプレッソ用に使用しても、保証が無効になることはない」そうなので、決して使えないわけではないようです。
(よりエスプレッソ挽きに特化した機種もありますが、重量が7kg〜と一気に重く。。)

実際、上の動画でもエスプレッソ抽出で比較されています。

一方、Nicheはというと、業務用エスプレッソマシンにも対応するそうです。
先述wilfaでは、一番細かい挽き方が「モカ」なのですが、「業務用エスプレッソマシンでは使用しないでください」と注意が書かれています。

とはいえ、Nicheも一応家庭用を前提としたモデルなので、浅煎り豆をガンガン挽いていると寿命は縮みやすいものと思われます。

オーバーヒートで止まってしまう対策としては、wilfaのサポートでも言われたように、まず粗く挽いてからの2度挽きにするか、
静→動の負荷を軽減するために、先に刃を回した状態で豆を投入するのが良い(UCCコーヒーアカデミーの講師談)ようです。


エスプレッソを動力源に生きている私のような人であれば、止まってしまうことは絶望を意味します。

今回wilfaの取り扱いメーカーは思っていたよりとても親切に対応いただいたのでまだよかったですが、Nicheの場合、問い合わせのやりとりの感じ、そのあたりの不安が残ります。。

挽くスピード

スピードは、単純に刃のサイズです。
大きいほど早く挽けるので、上の2候補だとNicheです。

目安 (1杯あたり約20g  エスプレッソ挽きとすると)
 LAGOM(48mm刃):約 45〜60
 Niche(63mm刃):約 20〜30

浅煎りか深煎りかにもよりますが、LAGOMはなかなかに時間がかかります。。(まあ公式で「<時間がかかっても良いなら>挽けます」とあるのでその通りですね)

手挽きに比べたら早いし、一刻を争う業務用でなければ、1分2分の差ぐらいそこまでデメリットではありません。
だからこそ、どっちを選べば良いのか悩みます。

一般的には大きい刃のが良いと言われますが、時間がかかると何に影響するのか?

調べてみた結果、時間がかかるということは、
 ・それだけ熱が当たる時間が長くなる(=本来の風味が落ちる
 ・静電気がより多く発生する
 (上の動画でも時間のかかるLAGOMのが「飛び散りやすい」と言われていますね)
ことがわかりました。

業務用に比べたら50歩100歩と言われたらそれまでですが、50万円か100万円かどちらが欲しいか聞かれたら、誰でも100万円を選ぶでしょう。(”同じ”ようなものであれば50万円を選んでも良いはず)

…と言っても、それ以上に重要だと最近議論されているのが、「刃の位置(噛み合わせ)」(alignment) です。

整った味わいを出すには、粒度が均一である必要があります。

粗く挽いた粒と細かく挽いた粒では、お湯の当たる面積が変わるので、もちろん味の出方が違ってきます。

細かく挽くと抽出しすぎになりやすいので、そうならないように時間を調整します。抽出しすぎると雑味や苦味が出やすくなります。
粗い方は逆に、抽出(時間)が足りないと、うまみやフレーバーが十分に出づらくなり ”コーヒー味のお湯” になりやすくなります。
(ドリップであれば、お湯がすぐに流れてしまわないようにするドリッパーを使うとか、点滴の量・間隔を工夫するとかでも調整できます)

両方の粒度を混在させたらどうなるか? 味のコントロールがかなり難しくなり、ちょうどいいバランスの交点である”当たりゾーン”が狭くなります。

(ちなみにオタクはこれを息継ぎなしで言います!)

なので、どんなにスピーディーに挽けても、粒度のバラつきが大きければ意味ないよ、という話でした。

…ちなみにLAGOMは刃のサイズが2種類から選べるんですが、どっちが良いのか結論を出すのに、問い合わせのやりとりを含め2,3日かかりました。。
(公式の返答では、スピードの違いしか言及されていなかったので)

粉残り (Retention)

豆を挽くと、どうしてもグラインダーの中に多少の粉が残ってしまいます。

次の豆を挽くと一緒に落ちてだんだん排出されていきますが、そうなると、

  • 挽いてから時間が経った粉が、一定量含まれてしまう
    (粉にすると表面積が豆のときの1000倍以上になるので、かなり酸化が早まり、あっという間にわかりやすく味が落ちる (本当に) )

  • 通常の豆を挽いた後に、デカフェの豆を挽くと、カフェインが多少含まれてしまう

ということが起きます。

この点では、LAGOMもNicheも「ゼロリテンション」(粉残りゼロ)の方針を掲げているので、どちらも同じぐらい少ない(0.2g以内)ようです。

業務用で同じ豆を高頻度で挽き続ける場合はそれほど問題ないでしょうが、頻繁に豆を変えて(特にカフェインあり・なしで)、
次に挽くまでにある程度間隔が空く使い方なら、挽くたびに完全に掃除しないと影響が出てきます。

さらなる対策としては、(powder duster) bellows と呼ばれる、ホッパー(豆を入れる容器)に取り付ける用のポンプで押し出す人が多いようです。
下の販売サイトでは、これを行うことで残留量が「0.1g未満にできる」とのことです。

https://www.youtube.com/watch?v=6x-eKMajcTw

日本語だと何と検索したら出てくるのか分からなかったので、詳しい方はぜひ教えてください🙏

掃除

掃除しないと、上の粉残り問題に加えて、シンプルに詰まりやすくなってしまいます。
刃の噛み合わせが傾いていると、重力で多少自然に排出されやすくなるようで、その点はNicheのメリットです。
詰まって一度止まっちゃうと、冷ますために一定時間使えなくなるので、なるべく避けたいところです。

掃除のしやすさとは、分解の工程の少なさです。

分解動画を見ると、LAGOMのが部品をくるくると外していくだけで、下の刃を取り外さないっぽいので手軽そうです。
(公式では刃丸ごと解体するのは推奨されていない?)

その点、Nicheは下の刃も丸ごと取り外せる分、一手間あります。(体感)あとドライバーも必要です。

LAGOMの分解:


Nicheの分解:

挽くたびに完全に掃除しようと思うと、Nicheはちょっと面倒そう。

あとは、刃などに付いた油分を落とすには、こちらのクリーナーがみんな使ってるデファクトスタンダード感があります。
コーヒー豆と同じようにグラインドするだけっぽいので簡単そう。


騒音

電動グラインダーはそもそもうるさいものですが、少しでも静かな方が良い場合は、僅差でLAGOMのが多少静かなようです。

LAGOM:約 60dB(ソース:https://www.home-barista.com/grinders/lagom-mini-t71917-20.html )

Niche72dB(掃除機ぐらい)

また、騒音のピッチ(音の高低)が低い方が、気になりにくい人もいるようです。LAGOM(mini)とほぼ同じdB数のエウレカのMignonでは、LAGOMのが音が高く、後者のが低くて心地良いと感じるとか。

機械の安定性に影響しそうですが、布の上に置くのもある程度音を吸収しそう。
(まあ個人的には音よりも壊れにくい・止まりにくい方が重要なので、この点はあんまり重要視してませんが..)


で、結局どっちを選んだのか?


かな〜り長くなってしまいましたが、結局どちらを選んだかというと、

 … どちらも選ぶことにしました!(ドーーーーーン


前にも書きましたが、私にとってグラインダーの停止は絶望を意味するので、
LAGOMを普段使い用にして、Nicheを保険にすることにしました。

イベント時にヘルプ機としても使えるし、モーター消耗を分散させるのにも良いかな、と。

日本にサポートがないと、何か起きた時にも週単位で期間がかかるかもしれないので、少なくとも同程度のクオリティーが出せる代替機がすぐ使えると心にゆとりを持てます。(だいぶ)

2台持ち運ぶなら、LAGOM mini2つのが身軽ですが、正直Nicheもかなり評判が良いので試してみたい気持ちもあるし、保険のためだけに持つのもちょっとつまらないような気もして。。

そんなわけで、売り切れていたLAGOMのシルバー色がちょうど入荷されたので即ポチして、Nicheは輸入経路の検討中。

これでようやく、毎日毎日一日中グラインダーで悩む日々から解放されました!

上の2つのグラインダーで入れたコーヒーが気になる方は、ぜひカフェイベントに参加してみてください♪(時期未定・Twitterかインスタで告知予定)

最後に、エスプレッソはマシンよりもグラインダーが重要らしいので、どんな風に味が変わるか楽しみです!(変わらなかったらどうしよう!笑)

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