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「朝陽が昇るまで待って」Vol.4

mosaique-Tokyo Produce。演劇界に生きる男同士の純愛ラブストーリー。

映画「渋谷行進曲」(㈱SCT https://www.shibuyakoushinnkyoku-sct.com/)のスピンオフとして、LINELIVE JACO10にて毎週1回水曜日に連続で配信してきた朗読劇を脚本と朗読映像のダブルパッケージとして発信します。読んで、見て、聞いて、浅瀬のように透明でまっすぐな彼らの純愛を体験してください。

脚本・演出)中井由梨子

出演)余輝美(テルミン):吉木遼 / 千人:松谷鷹也 

   紅蓮豊:松浦正太郎

撮影・編集)中井由梨子   @旧渋谷ハーミット       

「朝陽が昇るまで待って」Vol.4

扉を開けた。
白さが目に飛び込んできた。

真っ白い壁。
真っ白い床。
真っ白い天井。
すべて、すべて白。
そして、風。風が吹いている。
締めきった部屋のはずなのに、この風はどこから吹いてくるのだ。
俺は段差のない玄関で靴を脱ぎ、白い床を踏みしめながら部屋の奥に入った。すぐにリビングに入る。
カーテンのない大きな窓。窓から見渡せる、大きな、海。
そして、やはり風。風が吹いている。

テルミンの白いマンションは、思った以上に広かった。リビングの両隣に部屋がある。キッチン、ダイニング。どれも真っ白で生活感がまったく感じられない。ドラマのセットに来たような感覚だ。俺はしばらく窓から見える灰色の海をぼんやりと眺めた。灰色の海と空が繋がって、より一層不安な気持ちを掻き立てる。窓に背を向け、部屋全体を見渡した。
拍子抜けするほどに、何もない。両隣の部屋を覗いてみる。片方には白いベッド。だが布団はなくがらんとしている。もう一つの部屋には白い机と銀色のノートパソコン。見たところ、5年以上前のモデルだ。しばらく使っていないのか、うっすらと埃を被っていた。
風が吹いた。

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