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小さな世界

実家から送られてきた封書には、1枚のハガキが入っていた。
高校の同窓会の連絡だった。

しばらく実家にも帰っていないし、有給もたまっているし行ってみるか。
ちょっとした気紛れだった。


同窓会の会場は、街の中心地にあるホテルだ。

高校卒業後、地元を離れたせいもあり、同窓生と会うのも12年ぶりだ。
会場内では、見知った顔が数人見つかった。

もともと、クラスの人達と積極的に関わっていたわけでもない私は、お皿に好きな料理をたらふく盛って会場の隅で、他の人達を観察していた。

あの子とあの子、仲良かったよな、ずっと交流あったのかな。
あの人とあの子、結婚したのかな。
あれは、誰だっけ?
あの可愛かった子、あんなにコロコロしちゃって・・・。


「隣、いいですか?」
見ると、仕立ての良い明るめのカーキー色のジャケット姿の男性がこちらを見ている。
「どうそ」
取り立てて派手な感じや顔立ちがいい、というのではなかった。
だがセンスが良いのか、他の人達にはない雰囲気が目を引く人だ。

この人誰だ?
名前を聞いたが、思い出せない。
でも、彼は私のコトを知っているようだった。

先生達の話。
文化祭でのエピソード。
少しずつ、話しているうちに思い出してくる。

あの頃、私はなにもかもつまらなかった。
この田舎の小さな世界から、早く広い大きな世界に出て行きたかった。
ここではないどこかへ行けば。
いつもそう考えていた。

いつの間にか、そんな話をしていた。
「結局、都会に出たからって、広い大きな世界じゃなかった。
やっぱり私の世界は狭いままで、何も変わらない」

「そうだね、全然変わってないよね。
高校の時、いつも皆を観察していたよね。
だからすぐに、あなたの事が分かったんだ」
嬉しそうな顔で彼はそういった。


2次会へは行かないからと、彼は早々に会場を後にした。

気乗りはしなかったが、他の人に彼の事を聞きたくて、私は2次会に行った。
私が彼の事を聞くと、皆一様に苦い顔をした。

同級生の一人がそっと教えてくれた。

当時の彼は、ものすごく太っていて暗い感じだった事。
そして、クラス内で彼がいじめられていた事。

その話を聞いて、やっと私は思い出した。

当時、クラス内でのいじめのあまりの陰湿さに、私はボソッとつぶやいたのだ。
「くだらない。
こんな小さなところで、うだうだしてんじゃねぇよ」

いじめていた本人達には聞こえていなかっただろう。
一瞬彼は私の方を見て、目が合った。

結局、私は直接いじめを止めれたわけでもなく、そんな自分にも嫌気がさして、この街から去ったのだ。

今からでも、彼に謝ろう、助けてあげなかった事を。
慌てて、さっき彼から貰った名刺をバッグから取り出す。
取り出した名刺の裏に、何かかいてあった。

「あの時はありがとう」

隣で名刺を見ていた同級生が教えてくれた。
「彼、毎年同窓会に顔を出してはすぐに帰っていたんだけど、きっとあなたを探していたんだね」


⭐女教皇 逆位置(左側)⭐
情緒不安定、偏見、独断、潔癖、神経質、不安、冷淡、悲観、閉鎖的批判無神経
⭐ペンタクルキング(右側)⭐
経済的に恵まれる・物質的な安定・頼れる支援者・実力を見極める・合理的な判断・成功・手堅さ

太字キーワードから、考えたお話。
書く前は、もっと盛り込みたい事があったハズだけど、忘れてしまいました(笑)
もう少し、終わり方をスマートに持って行きたかったけれど、力量不足でした😿


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