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映画JOKERから笑う病気について思うこと

映画「JOKER」を観た。観終わって開口一番、私の感想は「笑い発作の演技がリアルですごい」。

この映画の主人公アーサーは、精神的な問題を抱えている男性。コメディアンになることを夢みて、ピエロとして働いている彼の特徴の一つが「笑い」となっている。

例えば、バスの中のシーン。前の座席に座った女の子を笑わせようとアーサーは変顔をしてみせるが、その女の子の母親は「かまわないでやって」とアーサーを冷たく突き放す。すると、アーサーは突然笑い出す。それを不気味に感じて母親が怪訝な顔をしたところで、笑い続けるアーサーから1枚のカードを手渡される。「笑うのは病気です。許して」。

どうやらアーサーは脳の損傷から、「笑い発作」が出てしまうらしい。この発作はあまり広く知られているものではないけれど、実際にある症状だ。私の弟も、脳の病気から笑い発作をよく起こしていた。

笑い発作の特徴はこんな感じ。
・TPO関係なく突然笑い出す(そして周囲から変な目で見られる)
・自分でコントロールできない
・不安感や緊張感が高まったときに出やすい
・発作を止めたくても止められない→さらに不安感や緊張感が増す→止まらない、のループに陥ることがある
・笑い声をあげていても泣きそうな顔をしている

姉として笑い発作を間近で見てきて、周囲になかなか理解されにくい症状だということは分かっている。周りの怪訝な顔も知っている。好奇の目も。TPOによっては顰蹙を買うことも。だからこそ、映画を観てびっくりした。アーサー役のホアキン・フェニックスの演技は、私の知っている笑い発作をリアルに再現していた。

この映画のなかでは、さまざまな出来事が積み重なってアーサーはジョーカーへと変貌するが、この発作(と、それを理解しない社会)はその要因の一つとなっている。アーサーが理解されにくいこの症状を持っていることで、周囲は彼を不気味に思い、距離を置き、罵詈雑言をあびせ……彼の狂気を育み、ジョーカーを生み出す結果になったのではないかと思う。

私の弟にしても、今でこそある程度自分でコントロールできるようになったものの、発作を厄介に思うことも多かったはず。でも、彼はジョーカーの要素が見つからないくらい純粋に育った。それはきっと周囲の理解が大きい。事情を知っている人が身近に複数いて、彼が突然笑い出すとおかしいなと気付いて「大丈夫?」と声をかけてくれるような。

同じような症状に情動調節障害というのもあるそうで、世の中にはいろんな病気があるなあ。アーサーの病気は公式に明言されていないので上では笑い発作と書いたけど、これを笑い発作と呼ぶべきか情動調節障害と呼ぶべきかは私には分からない。でもどちらも症状は似通っていて、周囲に理解されにくい現状は同じだと思う。

発作のことは、知らない人には説明しないと分かってもらえない。まずは「笑いたくなくても笑ってしまう人」がいること、だれかに知ってもらえたら。

私は弟へ注がれる周囲の目がすこしでも柔らかいものであることを望みますし、同じ境遇の方々にもそうであってほしいと望みます。

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