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マクドナルド高すぎ問題

会社にハンバーガー好きの社員がいる。それほどおしゃべりでもないその社員にある日突然「あの…」と話しかけられたので、仕事の相談かと思い幾分身構えたのだが、開口一番「月見バーガーの発売が始まりました」という報告をしてくれた。
それきり会話は終わったので私も無駄に身構えてしまったなと反省したのだが、とにもかくにも私の頭の中には「月見バーガーの販売が始まった」という事実だけがしばらく残っていた。

実は、私は一度も月見バーガーを食べたことがない。今まで30年以上生きてきたのに一度もない。
期間限定メニューがあろうとマクドナルドに行けば問答無用で通常メニューを頼むような私なので、当然月見バーガーに縁があるはずもない。年を重ねてからはすっかりマクドナルドから足が遠のいていた。

しかし、せっかく口数の少ない社員から月見バーガーの販売開始を教えてもらった手前、月見バーガーを食べないで冬を迎えるのも申し訳ない気がしてしまい、このたび初めて月見バーガーを口にした。

肝心の味だが、大変申し訳ないが二郎よろしく「お世辞にも美味しくはない」というのが素直な感想である。月見バーガーといえばあの卵みたいなやつが競争力の源泉である。
総じて人間は鳥の卵をうまいうまいと食べるものだから、月見バーガーの卵の質は極めて重要だ。しかし、月見バーガーに入っているアレは色合いといいデカさといい明らかに卵ではない気がする。
結局普通の肉とベーコンと卵もどきが入っているだけであり、一言で言えばたんぱく質の塊と言えるハンバーガーの一つに過ぎない。強いて言えば塗られているソースが無難なのでまだ食えるという代物である。

あと、会計の時にびっくりしたのだが、月見バーガーは単品で440円もする。マクドナルドのハンバーガーは大きさが小太りのおじさんの握り拳くらいしかなく、サイズが大きいとは言えない。
この小さなハンバーガーが、丸亀製麺で釜揚げうどんにちくわ磯辺天を乗せた場合とほぼ同じ値段だという事実に愕然とするほかない。とにもかくにも値段が高い。

かつて、マクドナルドのハンバーガーが60円、チーズバーガーが80円、どのハンバーガーのセットを頼んでも500円以内というのは当たり前であった。デフレの産物と言えばそれまでではあるのだが、小学生の私はそのころマクドナルドに足しげく通っていた。それだけにマクドナルドと言えば「提供が早い」「(味はともかくとして価格は)安い」という2点こそが魅力だったのだ。
物価高の現代ではあるけれども、それにしてもマクドナルドが「安い」という競争力を捨ててしまったのを肌で感じた。

その後、月見バーガーの販売開始を教えてくれた社員に「月見バーガーは高い、昔はハンバーガーが100円以下だったぞ」などと文句を言うと、その社員から「おおぬきさん、もうマクドナルドは高級品なんですよ…」と満足げに笑われてしまった。在りし日の「庶民派」としてのマクドナルドの幻影は、すでに現代の若者には見えなくなっていると気づいた秋の夕暮れである。

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