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尾野まとぺ
2016年3月23日 03:54
夕方4時半、ベランダに出て町を見下ろす。気持ちのいいくらい、全てが茜色に染め上がっている。薄汚れたビル、カラフルな看板、キラキラ光る車の波、どれも同じように茜色をしていた。私は小さく息を吐いて、力いっぱい夕焼け空を吸い込んだ。私の身体の中が茜色で満たされる。目をつぶると、私も夕焼けの一部になれる気がして、もう一度呼吸をはじめる。茜色の空気が、肺を伝って爪先まで巡り、そして出ていく。それを何度