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読書ブログ:汗牛未充棟 https://miniwiz07.hatenablog.com/

最近の記事

2023年8月に刊行された百合小説まとめ

2023年8月に刊行・発表された百合小説や、百合要素を含む作品についてまとめました。 〇今月のPick Up !・空木春宵「4W/Working With Wounded Women」(Web東京創元社マガジン 2023.8.03公開)  『感応グラン=ギニョル』の空木春宵による新作読み切りが、東京創元社のWebマガジンにて無料公開された。空木は第二短編集『幻象ファンタスマゴリイ(仮)』の刊行を予定しており、実質的に収録作品の先行公開と思われる。  本作は〈上甲街〉と〈

    • 2023年7月に刊行された百合小説まとめ

       2023年7月に刊行された百合小説や、百合要素を含む作品について、私が読んだものをまとめてみました。  次に読む本を選ぶ参考となれば幸いです。 〇今月のPick Up!・西條八十(芦部拓=編)『あらしの白ばと』(河出書房新社 2023.7.30)  三人の少女たちによって結成された白ばと組が、悪の陰謀に巻き込まれた少女を助けるために奔走する。  戦後の一時期、ジュブナイル小説が隆盛した際に、作詞家の西條八十によって書かれた小説の復刻作品。編者の芦辺拓によれば、「わが国

      • 多弁で社交的な仮面の裏側に何を隠すのか、死刑囚面会もの小説3選!

         櫛木理宇の同名小説を原作とする映画「死刑にいたる病」が先日公開となった。劇中では阿部サダヲが死刑を求刑された猟奇殺人犯・榛村大和を演じたが、恐ろしい人物のはずなのにどこか親しみを感じずにはいられない榛村という人物の不気味さを、見事に演じていた。  死刑囚との面会から始まる作品は近年に限ってもいくつか刊行されているが、そこに登場する死刑囚はみな多弁で社交的に振る舞う。しかしその仮面の裏側にいったいどんな思惑を秘めているのだろうか。今回はそんな死刑囚面会もののミステリ・サスペ

        • 映画『ラストナイト・イン・ソーホー』評――そこに連帯はあったのか

           ファッションデザイナーという夢を叶えるため、首都ロンドンはソーホー地区に上京したエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)。しかし専門学校の学生寮の雰囲気に馴染めず、古びたアパートの一室で一人暮らしを始める。するとその夜からエロイーズは、サンディ(アニャ・テイラー・ジョイ)という60年代のソーホーに生きた女性の人生を、夢の中で追体験するようになる。サンディの夢に向かって真っすぐな生き方に感化されたエロイーズは自信を取り戻し、学生生活もうまく回りだす。なるほど、エロイーズとサンデ

        2023年8月に刊行された百合小説まとめ

          井上雅彦 監修『秘密 異形コレクションⅬⅠ』評――秘密を守る緊迫感と秘密を暴く高揚感、どちらがお好み?書き下ろしホラーアンソロジー51弾

           毎回ひとつのテーマをもとに人気作家が異形の短編を書き下ろすホラーアンソロジーシリーズ《異形コレクション》。復活後3冊目、通算51冊目のテーマは「秘密」と、比較的縛りの緩いテーマとなっている。物語の視点人物が秘密を守ろうとしているのか、それとも秘密を暴こうとしているのか。立場が変わるだけで読み味もかなり違ったものになるのではないだろうか。各作家の自由な発想で書かれた全16編を楽しむことができる。  今回《異形コレクション》初参加の作家は、掲載順に紹介すると織守きょうや、坂入

          井上雅彦 監修『秘密 異形コレクションⅬⅠ』評――秘密を守る緊迫感と秘密を暴く高揚感、どちらがお好み?書き下ろしホラーアンソロジー51弾

          陸秋槎『元年春之祭』評――前漢時代の中国、家に縛られた少女たちに自分の人生を生きる術はあるのか。中国発の本格ミステリ。

           舞台となるのは前漢時代の中国。作中には多くの女性が登場するが、誰もが人生の選択肢において大きな制限を受けている。そんな彼女たちが自分の人生を生きるために選びとった行動は、きっと読者にとって忘れ得ぬものになるだろう。  陸秋槎は中国出身のミステリ作家。2014年、雑誌《歳月・推理》が主催する華文ミステリ大賞を短編「前奏曲」で受賞してデビューした。著者あとがきによれば本作は「前奏曲」での受賞前から執筆されており、こちらが陸秋槎の初めての作品ということになる。現在は日本に在住し

          陸秋槎『元年春之祭』評――前漢時代の中国、家に縛られた少女たちに自分の人生を生きる術はあるのか。中国発の本格ミステリ。