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【イベント参加レポート】NIG EVENT #02 最新事例に学ぶコミュニティマネージャー応用編

参加者100人の満員御礼だった入門編に引き続き、応用編が2020年10月15日(木)19時からオンライン開催されました。今回は、コミュニティマネージャー経験者限定の、発展的かつ実践的な内容を学ぶイベントです。

講師は、前回同様にコミュニティマネージャーの学校BUFF代表の加藤翼さん(以下、加藤さん)と、コミュニティデザインツールを提供しているstation株式会社共同代表の渡邊雄介さん(以下、渡邊さん)。そして、渡邊さんと同じstation株式会社所属CCO(チーフコミュニティオフィサー)の松元さんが加わり、3名がZOOM上に登壇されました。

・コミュニティマネジメント現場での、スキルセットの使い方
・コミュニティの段階に応じた、実践的なフレームワークの使い方

東海圏のコミュニティやインキュベーション拠点に関わる方に向けた、すぐに実践できる内容が詰まった1時間半。参加者24名中8割が前回からの参加者だった本イベントの熱量は、冷めることなく高いままでした。今回も引き続き、学びをレポートとして残します。


▼前回のイベントレポート

コミュニティマネジメントに必要な、6つのスキルとは

加藤さんからの講義は、コミュニティマネジメントに必要な6つのスキルについてです。入門編で紹介された理論を踏まえ、事例紹介と合わせたスキルセットの使い方を知る内容。複数拠点でのコミュニティマネジメントで蓄積されたナレッジを、惜しげもなく提供してもらえる贅沢な学びの時間でした。

※本来、無料で受講できない内容が多分に含まれていたため、今回は抜粋した内容を参加レポートとします。

ーコミュニティマネージャーに必要なスキルセットについて、概要の説明から講義開始です。

加藤さん
BUFFが定義する、コミュニティマネージャーに必要なスキルは6つあります。

1.スペースマネジメント 
バーチャルとリアルの場における管理、デザイン、行動設計

2.メンバーマネジメント
会員制度の設計、オンボーディング上のコミュニケーション、モチベーションやマッチングを含むメンバーへの働きかけ

3.イベントマネジメント
イベントの企画、実施、そして評価

4.メディアマネジメント
価値や盛り上がりを、メディアで対外的に発信していくためのWEBやSNSの運営、PR

5.プロジェクトマネジメント
財務管理やタスク管理をプロジェクトとして運用

6.セルフマネジメント
自分自身のネットワークの拡張、情報収集、休息の確保

ー6つのスキルについて、掘り下げた説明が続きました。今回レポートとして紹介するのは、メンバーマネジメントです。

加藤さん
メンバーマネジメントは、コミュニティにおいて一連のジャーニー設計が大事だと思っています。制度設計、リクルーティングからメンタリングの範囲でお話しすると。

まずは、会員制度の設計です。誰を仲間に入れて誰を仲間にしないのか、そして、その制度の上で、どのようにサービスやコワーキングスペースが使えるのかを決めます。次にリクルーティングで、どういう人に声をかけるのか。そしてオンボーディングで、実際に仲間にした人たちが、コミュニティの一員になったと実感できる体験設計をする。そこから、コラボレーションをイベントやワークショップで促進、さらにはメンタリングやコーチングも実施します。最後にオフボーディング。コミュニティは循環が大事です。メンバーが抜けていく時、そして卒業生が帰ってくる時の設計も必要になります。
事例紹介:100BANCH100個のプロジェクトがうごめく実験区

加藤さん
プロジェクト入会日に、施設の入り口に設置されたプロジェクトボードを手作りしてもらっています。ブランディングデザイン保持のために、最低限のデザインルールだけ設定していて。その制限されたルールの中で、自己表現として自分たちで考えて好きな色のテープを1色選んで貼ってもらいます。

この工程によって、事務的ではなくマインドレベルで「自分たちは一員になったんだ」と思ってもらえるメンバーマネジメントをしています。

ーコミュニティ、そしてコミュニティマネージャーとしてのあり方について、まとめの言葉をいただきました。

加藤さん
コミュニティは固定していた状態ではなく、動的な状態で回っているもの。

基本は感覚でいいが、アシストする数字とデータの設計が必要です。属人化しがちな部分を簡易化し、脳みそを会員さんのために使えるようにしましょう。ただ1人ではできないので、メンバーの力を借りてくださいね。

フレームワークを使ったコミュニティデザインとは

渡邊さんからの講義は、実際にコミュニティに提供されているフレームワークの使い方についてでした。前回の予告通り、段階を1つずつ追いながら言語化、洗い出し、分析をする過程が見れる内容。フレームワークの使い方を知るだけではなく、頭の中で自分のコミュニティに当てはめながら深掘っていける時間でした。

※本来、無料で受講できない内容が多分に含まれていると判断したため、今回は抜粋した内容を参加レポートとします。

ーコミュニティマネジメントで活用できるフレームワークを、ご紹介いただきました。

渡邊さん
運営側と利用者側をつなぐには、コミュニティマネジメントが必要です。マネジメントには、事前に作ったコミュニティデザインが軸になっていて。そのデザインを通して与えられた体験で、一筋の線を結ぶようにユーザーさんはステップを踏みながら、コミュニティに関わっていきます。

その道筋を分かりやすく言語化しているのが、フレームワークの1つ「コミュニティジャーニーマップ」です。ただ、すべてのケースにおいて一律して1つずつ進んでいくわけではないので、それぞれの場に合わせて作成した方がいいですね。

【認知→関心→検索→行動→観察→参加→安心】

ージャーニーマップをどのように回し進めていくのか、説明が続きます。

渡邊さん
紹介したコミュニティジャーニーマップを、次のフレームワーク「コミュニティデザインオーバービュー」を使って、さらに3stepで掘り下げていきます。

第1ステップ:プランニング
何のためにあるコミュニティなのか?言語化する
・なぜやっていて、誰に提供するべきなのか?
・提供する方法は(HOW)?
・何を(WHAT)提供するの?
・何を提供したら、体験(GOAL)につながるのか?


■第2ステップ:オペレーション

運用を回していく中でのコミュニティの状態、理想的の状態を言語化する

例:ゴールが資金調達の場合
・起業家と投資家の方たちが、どのようにリーチし合えるといいのか?
・必要なオペレーションはどんなものか?
・必要なリソースは?
・今やれること、やらないといけないこと、不足していることは?


■第3ステップ:データ分析
仮の数値と実数の振れ幅を見ながら、数値を設定していく
KPIや目標値などの計測対象が、運用の中でどのように達成されていくか状態を分析する


このように、フレームワークを通して事前に整え指標を作っておくと、コミュニティマネージャーさんのサポートになると私たちは考えています。ただ、多様なシステムでデータを取る中で、自分たちが追っている内容と一致しているのかどうかは、慎重な検討や分析が必要です。

課題感の共有を通して、解決のヒントを探る

講義後は、2つのブレイクアウトルームに分かれての質疑応答です。コミュニティマネージャー経験者視点の具体的な質問が多く、掘り下げられた回答を得られた30分間。参加者と講師、両者がもっと話す時間が取りたいと感じた時間でした。質疑応答を、一部ご紹介します。

【加藤さんへの質問一例】

Q1:業務範囲が広く得手不得手もある中で、役割分担の難しさを感じています。チームビルディングのアドバイスをいただけませんか?

A1:領域のリーダーは決めるが、運営周りはお互いに足りていないところを自由に手伝い合う、フラットなチーム設計がいいですね。

ただ難しいのは、スコープで切って業務をお願いする業務委託さんがいるチーム編成。業務範囲内外に迷ったり、オーバーワークになったりした場合の、解決する仕組み作りや事前の丁寧なコミュニケーションが必要です。運営側の心理的安全性と、運営側がお互いにやりたいこと、やれていないことを話せる環境作りは、コミュニティの心理的安全性を作る以上に大事だと思っています。

Q2:イベント開催の目的が達成できても、発信が後回しになってしまうことが多いです。発信について考えるポイントを教えてください。

A2:イベント設計の段階で、発信タイミングも決めておくといいです。具体的には、レポート発信は即日か後日なのか。カメラマンに依頼する写真の構図や納品タイミング。その他にも共通ハッシュタグでのSNS投稿を促すのか、などがあります。

PR効果については、イベントページの事前リーチ、イベント中のTwitter等のリアルタイムの盛り上がり、開催後の効果測定をすべて含めて評価します。事前に、こういったメディア設計をしておくと費用対効果が明確にできて、次回のイベント実施時に比較ができます。

例えばYouTube配信の場合だと、当日の視聴者数が多くなくても、アーカイブされて後日の再生回数が伸びていくとか。内容を抜粋したツイートが効果的だったとか。人数だけで評価しない視点もコミュニティマネージャーとして大事かなと思います。

【渡邊さんへの質問一例】

Q1:コミュニティマネージャーには、施設運用以外どんな形があり得ますか?

A1:コミュニティマネージャーの名称は、現在いろいろな呼ばれ方がありますし、自らジョブネームをデザインする方も増えています。自分自身がコミュニティの中で、どういうロールでいるのか、何を提供しているのかを言語化してスキル提供できるといいと思います。

最近は、ソフトマネジメントが生み出す場の価値への評価が変わってきています。例えば、根拠付けて人をマッチングして、その後マッチングがうまくいったのかどうかを追いかけるサポートは需要が高いです。ソフトマネジメントは難しいので、メンバーさんを育てていく側面、貢献する側面での働きかけがコミュニティマネージャーにかなり求められています。だから、そのスキルを活かしコミュニティ内の幸せを追求できると、コミュマネとして今後マネタイズしていけると思います。

Q2:最初に決めた理想像が試行錯誤を繰り返す中で変わっていく場合、バランスを取るのが難しいのではないかと感じています。理想像と変化とのバランスは、どのように取るといいのでしょうか?

A2:(渡邊さん)最初に決めたコミュニティの目的やコンセプトは、コミュニティの軸として揺るがないポイントになると思います。だから、その軸は変えない方がいいです。ただ変化という意味では、目標を達成させるための方法や施策を変更するやり方は、実施しやすいと思います。

A2:(松元さん)コミュニティ作りは本当に大変だから、丁寧に考える必要があると思っています。揺るがない軸の部分と、変わっていく価値の部分があって。それらを考え振り返りやすくするために、見える化や言語化するという意味でフレームワークを使います。そして見える化の結果から、何が大事かチームで考えるコミュニケーションも大事だと思っています。

入念な設計と試行錯誤が作るコミュニティ

入念な設計やデザインが支えるコミュニティ。

コミュニティやコミュニティマネージャーの必要性は日々増す一方で、求められるスキルや学ぶ領域は膨大です。メンバーの幸せや居心地のいい場作りに全力を尽くす中で、悩みながら試行錯誤されている皆さんの声が聞けました。と同時に、課題をどう解決していけば良くなるのか、貪欲に講義から学ぶ時間になったと感じています。

私自身コミュニティに関わる中で、何が足りないのか、何で貢献ができるのか、そもそも何の目的でコミュニティに携わりたいと思っているのか、改めて考える時間になりました。

また、加藤さんからは、東京(現在はオンライン実施)で開催中のコミュニティマネージャー認定プログラムの名古屋開催の構想が語られました。また渡邊さんからは、東海圏のイノベーション拠点の事例紹介があり、東海圏のコミュニティのさらなる盛り上がりが楽しみです。

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