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【駅スタンプ】勝瑞駅で出会った愛は深かった


【2021年3月四国遠征】

エピローグ

 卒業式を間近に控えた3月。登校日はもうほとんどなかったから、東京から夜行バスを使って1週間の四国スタンプ旅に出かけた。

 勝瑞(しょうずい)駅は徳島駅からそこそこ近いものの訪問難易度はやや高めな駅だ。
平日の7時から15時までしか人がおらずスタンプを押せないからだ。。
にもかかわらず駅スタンプは勝瑞駅と池谷(いけのたに)駅の2つが設置されている。

勝瑞駅
7:00~11:30
13:00~15:20
※現在、端岡駅は毎日営業、他駅は土曜・日曜・祝日・年末年始休業。

駅/ワープ支店のご案内:JR四国 (jr-shikoku.co.jp) 2024/03/04閲覧

2021年3月3日

タイトルにあげるほど、この駅が自分にとって特別な理由を先に語りたい。


21年に行った当初、勝瑞は最終日に行こうとしていたのだ。
だが直前になって初日に行った方が効率よく回れることがわかり、徳島駅で夜行バスを下車して勝瑞駅に向かう行程に変更したのだった。


駅員さんから改正前と後の時刻表とメモ帳をお土産にもらったこと。

Xのヘッダーにもしている。


お礼に渡したスタンプをスタンプを保管している缶の蓋に張り替えるとおっしゃって本当に張り替えてくれていたこと


四国を旅行中、雨による運転見合わせに立ち会ってしまったとき、いただいた時刻表を実際に使うシーンがあったこと。

 これだけ一つの駅にまつわる思い出があれば十分だろう。
一言でまとめるならこの駅と思い出が好きだ。

勝瑞駅駅舎

 朝の寒さがまだ残る静かな駅舎の中で鮮明な印影を見たその駅員さんは
スタンプ缶の見本をこれに張り替えると言ってくれたとき、ほんとに変えるとは思わず社交辞令だろうと思っていた。
(というか某東日本ならおそらくそう)
 それでも、この駅員さんの名前は覚えておきたいとネームプレートに目をやったことを今でも覚えている。

缶のスタンプ

 1週間の素晴らしい四国旅を終えてから2か月くらい経ったある日、TwitterにFFさんが勝瑞駅に訪問してスタンプを押印したことを報告するツイートを上げていた。

 なんとその投稿の写真には、新しく張り替えられたスタンプと「2021年3月3日 お客様押印」とマジックで書かれたあのスタンプ缶が写っていたのだ。
そしてよく見たら、切符売り場の左横にも窓の内側からクリアファイルに挟んだ状態のスタンプの印影が飾られているのがわかった。

ちなみに印影が変わる前の見本はこんな感じだった。

ところが2年後の2023年10月、JR四国から2024年3月15日をもって勝瑞駅を含む徳島駅周辺の駅を無人化する旨のプレスリリースが発表された。

 自分は大学を3月で中退し8月から就職していたので、なかなか休みをとれなかった。
週に一回しかない休みは10月の時点で1月にしか徳島に行ける時間とファイナンス的余裕がないことがわかった。

そして無人化発表後に別の方が缶の押印主に関する投稿を上げていた。
このタイミングで先日訪れた時も女性の駅員さんが対応してくれたことを教えてくれた。

 機会にこそ恵まれなかったものの早い段階で、駅員さんにもう一度会いたいと思っていたから異動せずにあの駅に居続けている可能性があるのは正直かなりありがたい情報だった。

【2024年1月30日弾丸勝瑞withフェリー】

2024年1月30日

 明日は休みで徳島・勝瑞に行くと決めていた日だ。
和歌山港から夜行フェリー(26:40発)で徳島入りしたいな〜くらいにしか考えておらず、しかもそれを考えているのは21時台も半分が過ぎた、京都市内を疾走する京阪電車の中だ。

 事前に調べていた情報を頼りにとくしま好きっぷ(2500円)で徳島に上陸しようと決めていた。
このきっぷは南海の発駅〜和歌山港と片道フェリーがセットになっている。
これのどこがすごいってフェリー片道分が2500円なので鉄道運賃が実質タダで乗れるところだ。

 心配だった深夜便の扱いも調べてみたら前日発行の乗車券がしっかり有効だったので安心した。
 大阪環状線上にある最寄り駅から和歌山市までの終電は23時半ごろ。
22時に家に到着して準備しても余裕で間に合う。
新今宮駅できっぷを発行してもらい、スーパー玉出で食料を調達。

23:29発 区間急行 和歌山市行き (和歌山市24:43着)
23:37発 特急サザン67号 和歌山市行き (和歌山市24:34着)

ホームの電光掲示板 ※到着時刻などは記載なし

 特に急いでるわけでもなく、先に来た区間急行に乗ることにした。
泉佐野でサザン67号に抜かれるが、早く着いても電車もバスもなく、速達列車に乗るメリットは自分にはなかったから乗り換えることなく区間急行に揺られることにした。
 それにしても区間急行の速達区間が泉佐野までのかなり長距離なのには驚いた。

貸切状態の車内

 乗っていた区間急行が和歌山市駅に到着する最後の電車なだけあって、自分が駅舎から出ると警備員が鉄格子のシャッターを閉め始めた。
とくしま好っぷは和歌山港までの切符だがもう港行きの電車はないので切符は前途放棄。
無効印を押してもらって記念に持ち帰ります。

さぁ、ここからは和歌山港を目指して楽しい楽しい徒歩移動だ!!


許可出さないと通行できない長い何かを運んでた。いい加減スマホ変えようかしら。
信号が目線の高さにいる世界線・和歌山

和歌山港

 和歌山港の待合所に着いたのは25時半ごろ。
当然だが他に待ち客はいなかった。
クレーンゲームのBGMが静寂を嫌うかの如くうざったらしく響いている。

ベンチに腰を掛けて玉出で調達した豆ごはんをむさぼった。

 早々と時間が過ぎるわけでもないので残りの時間はお供に持ってきた『愛するということ』(エーリッヒフロム著)を読むことにした。 

 正直、26時40分の船は誰が乗るんだろうと思っていたが建物の目の前にある駐車場におおきなトラックが停車して受付の人に書類を渡しているのをみて解決した。

この時間帯に運行するのは物流を支えるためだったんだ。

その後も3,4台が立て続けに停車しては書類を提出しては波止場の方にトラックを動かしていった。そろそろ自分も移動しないと…。

船内はとても広々としていた。
売店(営業時間外)・スロットゲーム・自販機・カーペット・ダイニングテーブル・リクライニングシートなどなど、必要最低限は揃っているようだった。
さすがに仮眠を取りたかったのでカーペットの隅で横になった。
ありがたいことにコンセントがあり充電できる。

思ってたより断然広い

 出航後5分は記憶にあるが次に目が覚めたのは徳島港に間もなく着岸しますよの放送のときだった。
雑魚寝で明かりもついてるのに我ながら大したものだと思う。まぁ、翌日仕事だからそれもどうにかしないといけないんだけどね。

徳島上陸

 徳島港にはまだ日も登っていない4:55頃に到着。
バスはまだ走ってないので徳島駅まで徒歩で移動する。

(そういえば徳島駅のスタンプも前に訪問した直後に更新されたんじゃなかったっけな。)

(徳島もスタンプ押しておかないとな。)

(やべぇ、牟岐線の南小松島は無人化する上にスタンプまだ押してない。)

(てか時間めちゃくちゃ余るんだよな、、スタンプ押したらどうしよう、室戸岬の方行ってみたいんだよな。観光しちゃう??)

(でも一日で徳島か大阪までヒッチで戻れる自信はないな。。
徳島でピン指しているところは、、、おっ!!大菩薩峠!!廃墟!!)

 駅に着くまでこれからの予定を模索していた。
道中の脳内は考え事でうるさかった。

 6:37発高松行きに充当された原型キハ40の轟轟しいエンジン音はプラットホームを越えて駅舎まで鳴り響いている。
この轟音の中でも徳島駅のスタンプを満足のいく出来で押すことが出来た。
そしてその轟音キハに乗車して勝瑞駅に向かった。

ボックスシートで肩肘ついて外を眺めるのは嗜好

 当時はなにで行ったのだろうか。特急だったかキハだったか、もう思い出せなかった。でもなんとなく見たことのある沿線風景がぽつぽつとあるのは少し安心した。

高徳線勝瑞駅

 「まもなく、勝瑞。勝瑞です。出口は右側です。」
轟音にかき消されるくらいの小さい声量の初老車掌のアナウンスが車内に流れた。

 汽車が到着したのは6:49分で7時になるまで外を散策した。
駅に戻り窓口が開いているのを確認した。
遠目に40代くらいの女性であることはわかった。
だが、朝の通勤通学の時間であるためなかなか人がいなくなるタイミングがなかったから券売機の横で携帯をいじって時間を潰した。

 ようやく人がはけ、はやる気持ちを抑えてスタンプを頼みに行った。
「すみません、駅のスタンプをお借りしてもいいですか?」
「スタンプですね~、缶ごとどうぞ」
対応してくれたその駅員さんのネームプレートには、覚えていた当時の駅員さんと同じ名前が書いてあった。
 そして渡された缶には、何度も画像でみた色褪せた勝瑞駅のスタンプとまだ明瞭に色彩を保っている池谷駅のスタンプが貼られていた。
嬉しくなりながら、せっかく来たのだから再押印することにした。

 勝瑞はゴムに癖があるっぽくなかなか思うように写らなかったことに苦戦した。
 その分なのか池谷はベタがあるのも関わらず綺麗に写ってくれた。
かなりの枚数を失敗してしまい20分くらいずっと押していただろうか。
3本くらい汽車が発着し、韓国系の同じ年代の女性がスタンプを押したい旨を駅員さんに聞いていたあたりでようやく返そうと区切りをつけられた。

 駅員さんが奥に戻る前に話しかけることにした。

 「◯◯さんですよね?3年ほど前におっきいラケットバッグを背負ってスタンプ押して缶に飾ってもらった者なんですが。。。」

 いま振り返るといきなり自分の名前を呼ばれて、自己紹介してくる不審者レベル高めなことしてたな、、、。

 「はやく声かけてくれればいいのに」
「さっきからずっとウロチョロしてるのをみてたから気にしていたんですよね。」
なんてことを言われたから、さっさとお願いしてスタンプ出せばよかったなと内心思った。

 ラッシュ時間帯の頻繁に来る汽車には気にしながら時刻表のことや缶にスタンプを貼ってくれたことのお礼を伝えた。

 しかしながら、3年も経つと缶に貼られたスタンプも窓に掲示されているスタンプも退色が激しい。
特に勝瑞の駅スタンプは、もとの藍色がわからないくらいになっている。

「これ、缶のスタンプ用に使ってください。」
駅員さんは「のこり短いのにいいんですか!?」と聞いてくれたが、
もう一度お話ししたかったのと、退色した印影たちを張り替えたるために来たので何の問題もなかった。

 そういって勝瑞だけ最初は渡したが話しているうちに両方を張り替えることことになった。
 そうだ、と思いスタンプ道具バッグに常備している特殊な枠のシャチハタネーム9とさっき渡した印影を返してもらって自分がこの地を訪れてスタンプを押した証拠を残した。

 貼り変わった缶の見本。しっかり日付も変わっている。
人影が映ってますね。

 そして、このタイミングで衝撃的事実を知ることになった。
缶のスタンプを張り替え終えたタイミングでの会話だ。


「そういえばさっき、『△△』と呼びましたよね?」

「はい。。え、もしかして違いました、、、?」

「実はこれで”〇〇”と読むんですよ。なかなかこの辺以外ではない苗字のようでよく県外から来る人から間違えられるんですよ」


なんと3年前に覚えて帰った漢字の読みは、3年の間まちがえて読んでいたわけだったのだ。

「ずっと”△△”さんだと思ってました。。。」

(JR四国のネームプレートには英語の表記はないので直接聞くでもしない限り正しい読み方を知るすべはない)

たしかに場所は遠いが予讃線の某駅も同じ読みの駅だったのを思い出し妙に納得してしまった。。。

 「この後はどちらに行かれるんですか?」
「次の汽車に乗って牟岐線の南小松島まで行き、ヒッチハイクで気になるカフェがあるのでそこに行ってみようと思ってます。」
「ヒッチハイクで行くんですか?乗せてくれる人いるんですか?」
「大丈夫です、乗せてくれます。こう見えてかなりやりこんでまして、、、」
持ってきたボードをみせると驚いていた。
これどの県ですか?に一つ一つ答えていった。

そして勝瑞~南小松島の乗車券と入場券を記念に購入した。
入鋏印押しますか?の問いには「はい!」で答え、見事に押すのに失敗した。。。

 入場券の時刻を見てみたら8時20分と書いてあった。
(1時間もいたのか。。。)
汽車の時間も5分後に迫っていた。

 撮りたかった構図の写真を何枚か撮影して跨線橋を渡る。


振り向くと表情まではわからなかったが集札口であの駅員さんがこっちを見ているように感じた。
 汽車のエンジン音とジョイント音が響いてくるなか手を振ったら返ってきた。
自分はどういう風に見えているんだろうと気にはなったが構わずにもう何回か振った。
それはどこかで一度見たことのある景色のようだった。

 ふと汽車から降りてくる学生や利用者に
「おはようございます、いってらっしゃい」と声をかけていた姿を思い出した。
この人はこの駅を、利用者を愛しているんだな、
そう思うとなんだかうれしかったし、さっきの問いにも納得した。
そんな素敵な方に自分は見送られながら、汽車はスピードを上げて駅を発っていった。


【後日談】

プロローグ

缶のスタンプを貼りなおしてくれたり、がっつり話せたのがあって個人的にものすごくこの駅に愛着をもつことになった。

というわけで、、、ダイヤ改正前日、

つまり有人営業最終日の3月15日の営業終了を見送ることにしました。

入場券を集める趣味もなければ駅の無人化を見送るような趣味もない。
多分、あの駅員さんからいただいた愛を客という立場からしか関われない中での自分なりの愛し方なんじゃないだろうかと考えている。
理由もなく既に押印したスタンプしかない駅に2度も3度も行くような人間ではない。
だからあの駅での思い出は自分にとって宝物になるんだと思う。

そして界隈で件の缶は某氏の印影が見本で貼られているとして、
有名(?)になってました。。。
そしてべた褒めされる😭
見に行ってくれた趣味友に感謝です。
ありがとう!!

徳島駅スタンプ(スキャン)

勝瑞駅・池谷駅スタンプ(スキャン)


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