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バスタイム

気がつくと、お風呂に入る時間が分からなくなっていた。

いつもの日常では、家に帰り着いてすぐにお風呂に入るのが日課だった。

生活の中でお風呂の時間はあまり好きではない。時間も空間も温度も支配された上に、お風呂を出たあとも体を拭いたり髪の毛を乾かしたりしなければならない。いつかやらなきゃいけない事なら、なるべく早めに終わらせておこうと帰宅と同時にお風呂に入る。

そんな考えるまでもない位に思っていたお風呂の時間が今では分からなくなっていた。

家で一日を過ごしていると、汚れることもないし、汗もかかないし、匂いも気にならない。それならお風呂に入らなくてもいいのではないかと、一日入らないでいてみる。

眠る前の枕に顔をうずめる瞬間に罪悪感に苛まれた。シャンプーをしていない髪で枕に触れてしまった。枕がちらちらと私の事を汚いものを見ているような視線がして眠れなかった。お風呂に一日入らなくなったら、次は何日後にお風呂に入るのか?枕は夜中ずっと私に問いかけた。


それから、毎日お風呂に入ろうと決断した。

今日は、4時にお風呂に入ってみた。

お風呂から上がると、ベランダからは煌々と夕日が差していた。空はまだ青く、朝日みたいにも思えた。

終わるはずの一日が、今から始まっていくような気がした。

明るい時間にお風呂に入ると、一日の始まりが二回やってくる事を知った。


あるアニメでお風呂は「命の洗濯」だと言っていた。


あの時はその意味が全然分からなかったけど、今日少し分かった気がした。




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