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アンと愛情 坂木司

シリーズ第三弾、坂木司さん著作『アンと愛情』を読みました。本作は日本文化を楽しみながら勉強できる小説だと感じ、お仕事ミステリーというよりは、歴史や日本文化に関する小説を読んでいるようでした。主人公のアンちゃんが成長していく様子も読みどころです!

印象に残った箇所

実は今日一番印象的だったのは、英語が話せないことじゃない。自分のいるこの場所が、他の国の人にとっては「外国」であり、「不便な場所」だってことだ。

外国のお客様がアンちゃんの働くみつ屋に来た際の描写。
普段日本にいると、日本語でコミュニケーションを取れることが当然という意識が無自覚のうちに形成されてしまう。けれど、日本語を使用しない人からすると、日本は外国であり、そして不便な場所であって、多くの困難に遭遇する。自文化での「当然」が他文化では「当然」ではない。様々なバックグラウンドを持つお客様と接する接客業では、そういったことも学ぶことができるのだと気付きました。

ぱりしゃくほわ。
ちょっと塩気のきいたパイ生地が、歯の上で心地よく砕ける。そこからほんのりとにじみ出るバターの香り。そして甘い香りの湯気。

ミルフィーユを温めて食べるシーン。
タイトルに「和菓子」の文字が出ていますが、食べることが大好きな主人公は、洋菓子もおいしく頂きます。
オノマトペが良い!!!ぱりしゃくほわ。そして食事シーンの表現が、読者も一緒に食べているかのよう。温めたバターの匂い、私も大好きです。
バター、食事シーンといえば、柚木麻子さんの『BUTTER』を思い出しました。本作の『アンと愛情』とは関係ないですが、とても面白い小説なのでおすすめです。

悩んで。選んで。また悩んで。選び直して。そうやって、将来は決まっていくのかもしれない。

大学に通っている友達や、同い年で仕事のできる他店舗の社員と自分を比較して、将来に悩む主人公。アルバイトのままで働くのか、社員として働くのか、それとも学生になるのか、色んな選択肢に悩み続ける様子も描かれており、主人公の成長も楽しめる小説です。

個人が頭の中でどう思うかは自由だよ。でも、椿店長の恋愛にアンちゃんはまったく関係がないし、何よりそれを外に出すべきじゃない。

椿店長の過去の恋愛を偶然知ってしまった主人公(一作目の『和菓子のアン』で、店長の過去の恋愛に関する話題が挙がっています)。知っているからこそ今現在の恋愛に応援しきれず、店長に対して信頼感を失い、よそよそしい態度を取ってしまうアンちゃん。そんな様子を見て、みつ屋の社員である立花さんが言葉を投げかけます。仕事の場で個人的な態度を表に出し、店舗の雰囲気を乱すのは良くない。そういったことを面と向かって注意し、教えてくれる人は少数ですよね。立花さん良い先輩であり、椿店長と同じくらい頼りになる社員さんだと思いました。

おわり

第四弾『アンと幸福』も発売されましたね!
文庫本になるまで時間がかかりそうですが、読める日を楽しみにしようと思います(単行本は高いので手が届かない…)。
気軽に読める作品なので、サラっと小説を読みたい方にお勧めな作品です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。


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