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彼女はいつだって履き心地の良い靴を履いてる


友人がいます。
彼女とは中学生の頃からの仲ですが、当時から他の人とはどこか違うなぁ、よくわからないけど良いなぁ、と思わせる人です。
12歳で出逢った時から変わらず、私の憧れの人です。

彼女には、どんな人とで仲良く出来るという特技がありました。
クラスのカースト上位のギャルとも喋るし、スポーツ集団の格好いい男の子とも喋るし、テストで上位を独占するIQ高めの集団とも喋るし、かと思えば私のような地味なオタクとも喋ってくれる、特異な人でした。

彼女のすごいところは、他人に執着しないところでした。
どう考えても、人気者の皆と居た方が良いに決まっているのに、わざわざ私と遊んでくれたり、同じ部活に入ったり、交換日記をしてくれたりしました。

「あっちのチームに行かなくて良いの?」
と聞くと、
「今はいーや」
と言って、気が向いた時にだけ喋りに行くような、ふわふわした人でした。

当時は信じられないと思っていました。
勿体ねー!何やってんだこいつ!?みたいな。(遊んでもらってるのに!)

何より好きだったのは、彼女はいつだって自分の考えが大事で、大衆に合わせるということはしませんでした。
いじめをするグループには一切近付きませんでした。
仲間外れには加担しませんでした。
自分が好きだと思う人と一緒にいました。
それが、私は本当に好きでした。格好いいなぁと思っていました。
学校という、とてつもなく小さくて特殊な一つの国の中で、ありのままの自分でい続けることが、どれだけ大変なことか。


彼女と会っていなかった期間は、私が中学校に行かなくなった頃だけでした。
彼女は連絡をくれましたが、私が会うのを躊躇っておりました。
こんな自分を見せるのが恥ずかしかったからです。
なんで来ないの?と言われても、行けない理由をちゃんと説明できない自分が嫌でした。
学校に行かず、友達と毎日遊んでることを、彼女には言えませんでした。
ダサいよって言われて、失望されるのが怖くて。

彼女は何度も、学校においでよ、と言ってくれました。
先生に頼んで班を一緒にして貰ったから、修学旅行に行こう!と言ってくれました。
ギリギリまで悩んで、それでもやっぱり行けなかったけれど、その時の恩は忘れられません。
15歳で1番の思い出の中に私を入れようとしてくれた、その気持ちが本当に嬉しくて。


一度彼女に、人生でこれだけは!っていう自分ルールある?と聞いた時に、
「絶対に履き心地の良い靴しか履かない」
と言われたことがあるんです。

確かに、彼女はいつでもお気に入りの少ない靴を大事に履いていて、靴擦れをしているところは見たことがありません。
スポーツブランドのスニーカー何足かと、ノーブランドだけど足にピッタリのサンダルとブーツが彼女の靴の全てです。

私は、無理をして見た目の良い靴を履く人間です。
痛くてもハイヒールを履くし、形が合わなくても見栄を張ってブランドの靴を買います。履ききれない程いくつも集めたそれらで、自分を鼓舞して生きています。
靴擦れをおこして、小指の爪が無くなっても、武装して飾り立てないと、人前に立てないからです。

もしかしたら、私と彼女の一番の違いはこれかもなぁ、と思いました。


大人になった今でも、彼女とは毎月遊びます。
旅行に行ったり、家でくだらない話をずっとしたり、映画館で2人で爆睡したり、美味しい焼肉屋を探し回ったり。
私は絶対履かないけど、アンタの頭おかしいハイヒール好きだよ、と笑って言ってくれます。
そんな友達がいることが、私の自慢です。

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