「日本は安楽死できない」

 皆さん、こんにちは!私はアフリカで暮らす日本の外交官です。アフリカを専門としている者です。

 最近日本では暗いニュースが多いかと思います。日本は、バブル崩壊後、この30年間殆ど経済成長せず、賃金も殆ど上がっていません。他方で、アメリカや中国やヨーロッパや中東、そしてアフリカ諸国等は、この間も順調に経済成長を続けています…。

 一人当たり賃金も、気づけばアメリカやヨーロッパ主要国は、ざっくり日本の1.5倍に達しています。つまり、我々日本人は、この30年間で相対的に給料の3分の1を失ってしまったようなものです。

 購買力等の観点から考えると、30年前には年収450万円だったのが、今では年収300万円になってしまったような感覚。それが、現在の日本の姿だと思います。暗い気持ちになるのも無理は無いと、まあ、これは、日本人なら誰もが知っていることだと思います。

 そして少子高齢化です。なんと言っても、バブルのツケを一気に支払わされる形になったのが、「就職氷河期世代」。私も「就職氷河期世代」ですが、90年代後半から2000年代にかけて、数百万人の日本の若者が一気にニートやフリーターになってしまいました…。彼らの多くは、結婚出来ない、子供も持てない、家も、車も、暖かい家庭も、夢も、人間としての尊厳も…失ってきた訳です。

 今、日本では、毎年40万~50万人というスケールで、人口が減少し続けています。日本の人口は加速度的に減って行くので、単純計算で、今世紀末には日本の人口は現在の約半分の6千万くらい。で、このままでは、22世紀末に日本消滅となります…。これも、日本人なら誰もが知っていることだと思います。

 私が問題だと思うのは、この期に及んで、「世の中カネや子供だけが重要なわけではない、貧乏でも子供がいなくても、日本人は幸せに生きていける。」といったことを、識者と言われる方々も含め、発信する人達がいること。

 更にはそういった発信を、ある程度信じ、「まあ、カネはないけど、日本は治安も良いし、安くて美味しい食事やお酒があるから、まあ良いか。」とか、「子供はいなくても良い、むしろ債務。自分自身の人生を謳歌できれば良い。」とか、そういった考えを持つ人達が、増えて行きかねない、ということです。

 こういった、「カネはなくとも、子供はいなくとも」、といったある種、敗北主義とも捉えられる考え方は、漫画「進撃の巨人」の「エルディア人安楽死計画」を彷彿とさせます。「日本の衰退は避けられない。であれば、もがき苦しまず、残された人生を出来る限り楽しんで、楽にみんなで死んで行こう。」といった考え方です。

 しかしながら、決して「日本は安楽死できない」というのが、アフリカを専門とする日本の外交官である私の意見・分析であり、確信でもあります。日本は世界から隔絶して存在しているわけではありません。国際社会は、「日本の安楽死」を決して許さず、必ず介入してくるはずです。

 介入というと言葉が綺麗ですが、要は国際社会は、必ずや、弱りゆく日本を簒奪し、搾取し、強奪し、利用し、隷属化させるはずです。そして、その隷属化の中で、我々日本人は、筆舌に尽くし難い辛苦や塗炭の苦しみを味わうことになるでしょう。楽には死ねないのです。なぜなら、日本は、最早「鎖国」することは出来ず、結局は国際社会の一員として、生きる他は無いからです。 

 今、アフリカで何が起こっていることを通して、①なぜ、「日本は安楽死できない」のかという理由を説明して行くと共に、日本の未来予想図を考察しつつ、②では、日本は今後どうしていくべきなのか、ということを、皆さんと一緒に考えて行きたいと思います。

 私は、日本の公務員・外交官という立場がありますので、言葉遣いや内容については細心の注意を払って行きたいと思います。過去、職場の先輩が実名ブログで、アフリカ事情を色々と発信していた実績もあるので、それなりに私にも表現の自由があるとは思いますが、とりあえず私は匿名で、外交的な機微な内容等とは適切に距離を置きながら、アフリカの現実を中心に、皆さんの知的好奇心を刺激するような文章を、書き進めて行きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(了)





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