リブレット〜最終話〜

彼女は病気だった。

誕生日イベントを最後に入院しているらしい。


俺は病院へ行った。

そこには、
仕事モードの彼女からは想像できないくらい
痩せ細り、髪は副作用で抜けた彼女が生死を
彷徨っていた。


俺は、その場に居るのが息苦しくなり机の上に
あった冊子を無意識に震える手で持って病院の
外へ出た。

そしてその冊子を開いた瞬間。
全身に鳥肌が立ち胸が今まで感じた事がない
くらいに締め付けられた。


「ある日突然、彼にメールした。
 彼は、覚えていてくれた。
 次の日も彼にメールした。
 また、返事があった。
 このやりとりに、ルールを作る。
 彼から返信が来なくなるまでメールする。」

と、今までのやりとりが書き記されていた。

誕生日には、

「今日は、色々な意味で最後の誕生日かも
 しれない。でも、彼は来てくれない。
 そんな事はどうでもいいのだが少し彼が
 気になっている。」

そして、

「彼を食事に誘った。
 いいよ!って返信があった。
 相変わらず彼の返信は素っ気ない。」

ドタキャンしたのは、体調が良くなかったから
だった。

他にも、

「もう、写真のストックがない」

「メールが打てない」などが記されていた。

本当に彼女の文字は賑やかだ。

そして、次のページにはこう記されていた。

「私は、もう助からないと思う。
 でも最後にメールを送ったのが彼で良かった
 だけど今日でこのルールが終わってしまう」

と、今にも読めなくなりそうな字体で

「わたしはかれがだいすきだ♡」

目からでる涙が黒ぶちメガネのフレームを
つたい彼女の文字を濁しながら
派手好きの彼女からは想像できない程
地味だけどお似合いのそのリブレットに俺は
こう書いた。

「俺も彼女が大好きだ」

涙が2人の文字を潰していく様をみながら
俺は、こう思った。

俺は、本当に勘の鈍い男だ。

その日、彼女からの返信は無かった。

               リブレットFin





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