ダブり〜3限目〜F

俺はスタジオへ着いた。

「タケツさん、お疲れっス!」

タケツさんは競馬新聞を見ながら
「おーっ!お疲れ!」
「今日、部屋空いてないから、ステージ使っていいぞ!もうみんな来てるから」

俺は
「マジっすか!?それはラッキーだわ!!」
「やっぱステージだと雰囲気違うからな」


「それと、ユウ!?」
タケツさんが俺を引き止めた。

俺は
「なんすか?」
と聞くとタケツさんは

「お前、今浮かんだ数字言ってみろ?」

俺は
「7かな?今日はツイてるしラッキー7の7だな」と言って早速ステージへ向かった。

それを聞いたタケツさんは
「おー、なかなかいいセンスしてるな」

どうやら馬の番号を決めていたようだ。

ステージって言うのは実際Liveする部屋の事だ。
普段のスタジオだと部屋が狭い為、ステージに比べて音の響きが断然変わる。

だからステージでやるって事は、Liveをやってるのと全く同じ環境だから色々合わせれるって事だ。

ガチャ!

防音扉をあける。

俺は
「おつかれーぃ!」

するとタイケが
「おーユウ!今日はラッキーだな」
「早速やろうぜ」
とみんなの準備は万全だった。

俺は
「だな!じゃー早速」
と言ってマイクを握った。

1曲、1曲、また1曲と。

途中で止めては、歌い直したり
「ここはこう!」とか
「あぁして!」とか
調整したりしながら音を合わせていく。

もしも、人生も音楽と同じように途中で止めて
音符を付け足したり変えたり・・を繰り返して
合わせたりしていけたなら、
最後はバッハも驚く様な最高の曲が出来るんじゃないか?って思う。

でも、
人生は止まる事なく進んでいる事は確かだ。
決まった譜面のように流れていく。
とずっと思っていた。
なぜなら俺はダブり。
ここ2年は、学年末にD.S(ダルセーニョ)がくる。
スゴロクで言う、振り出しに戻るってやつだ。

でも1つ言える事は
確実に楽譜は変わっていってる。

気付いたり、修正したりして。

理解したり、考えたりして。

そして、これから起こる事に期待したりして。

そんな風に思える様になった俺。

今は
コイツらと次の小節へ歩いていきたいと思う。

ズレたメロディーや歌声も全く気にならない
くらいの最高のラストへ。

そんな事を思いながら時間はあっという間に
過ぎていく。

「お疲れ!」
「やっぱり、いつもと違うな!」
と俺は言った。

タイケが
「一服行こうぜ!今日ステージだったから
途中これ入れてないから」
と指でゼスチャーをしながら言った。

俺たちは外へ出た。

早速イサカが
「次の曲そろそろ出来たか?」
俺は
「まだ」と言うと
イサカはため息なのか、煙を吹いているのか
わからない感じで
「ふぅ〜っ」
と煙をふかした。

するとウエイが
「とにかく詩は任せるとして、
     曲のイメージはこんなんどうだ?」
と言って鼻歌の感じでメロディーを出した。

「おぉ〜っ!いいじゃねぇ!!」
とナカヒロが言った。

俺は
「いいね!」
「ここ最近、おいっ!おいっ!って感じの曲やってないから。久々にそんな感じもありだな」

ウエイは
「オッケー!じゃー決まりっ」
「曲はタイケと調整しとくから詩はヨロシコ!」

俺は
「ヨロシコって言うな!!」
「では、ヨロサレタ!」
と言った。

ウエイは
「なるはやで!」
と言った。

「ほんと大丈夫か?」
「ユウ、お前担任のストーカー探しとかあるんだろ?」
とナカヒロが気にしていた。

俺は
「それ、ゴウがやるらしい」
と言うと

ナカヒロは
「そっか、なら大丈夫だな」
とスティックを振りながら言った。
タイケが
「えぇーウエイが全部やりゃーいいじゃん」
とウエイの二の腕を揉みながら言った。

そんなタイケを見たイサカは、
また、ため息か煙をふかしているのか
わからない感じで煙をふかしてこう言った。
「はい、はい、曲は2人が担当するの」
「そうと決まれば今日は帰りますか?」
「今日の動画はステージだから結構いい感じだと思うよ!またアップ日は連絡するから」
と言って俺たちはスタジオを出た。

「んじゃーまたな!」
と言ってみんなと別れ俺は家に帰った。


一方その頃。

ゴウがバイクで向かった先はシマキたちが
居る場所だった。

ボォン ボォン

「ちょい!ちょっと、ちょっと、シーっ」
とシマキがゴウに言った。
ゴウは全く気にせず
「お疲れ!どんな感じ?」
と言うとシマキは
「ちょっと、バイクうるさいって!」
と言うとゴウは
「カッコいいだろ!?乗り換えたんだ!」

ゴウはバイクを新調していた。

ゴウはバイクを止めながら
「てか、逆にこの音が防犯になるんじゃね?」
「お前の声の方がデカいんじゃないか?」
「なぁー?」
と他にいたメンバーに聞いた。

「ところでどうだ?帰ってきたか?」
とゴウは聞いた。

シマキは
「あれから張ってるけどまだ帰ってないな」

「だよな?」
と言って後ろにいてるやつに声をかけた。

「はい。俺たち交代で見てたんですが帰ってる
気配はないですね。」
「部屋の灯りもまだあの通り消えてますし」

するとゴウは
「そっか、了解。わりぃな!」
「腹減ったろ?今日はもう帰っていいぞ」
と言って見張り役の奴等を帰るように言った。

「はい。じゃーお疲れ様っス」
とメンバーたちはそれぞれ帰っていった。

ゴウは
「で、テマエは?」
とシマキに聞いた。

シマキは
「さぁ??時期に来るんじゃない?」
「連絡する?」

ゴウは
「別にいいよ。
  何かあったら向こうから連絡くるだろう?」
「まーアイツが来るまで少し待つか」
と言ってモトキタの帰りを待っていた。

ゴウとシマキが少し待つと

モトキタは帰ってきた。

「おっ、帰ってきたな」
とゴウは言った。

モトキタは買い物袋を両手に持ちマンションへ
入って行った。
その姿を見てシマキは
「けっこう買ってたね」
と言うとゴウは
「だなぁー」と
どうでもいいとこに食い付いていた。

すると
チリン チリン チリンチリン

と音を鳴らした自転車がこっちへ向かってきた。

シマキは
「あのバカっ!」
「おいっ!テマエ!?うるさいって」
とテマエに呼びかけた。

それを見たゴウは
「バカっ!テメーの声が1番うるせーんだよ!」
とシマキに怒鳴った。

テマエは
「あんたら、皆うるさいよ」
と言った。

ゴウはモトキタの部屋のほうを見て
「今日は帰るかっ!」
と言って3人はそこから去った。

ゴウは再びバイクで音を鳴らして。

シマキとテマエは自転車2人乗りで。

どっちが自転車の前をこぐのかを大声で
言い合いながら。

結局のところ、
3人が3人とも最初から最後までうるさかった。


ゴウ達は毎日交代でモトキタの家の周辺を
張り込みしていた。
だが、これといって怪しい人物が現れる事は
無かった。

そんな日が続くなか

最初は真面目に見張っていたメンバー達だったが
だんだんと手を抜くようになってきたのだ。
集団でたむろして座り込み、
カップ麺やジュースの缶、タバコの吸い殻。
そして、大声での会話で、終いには近所の住人
からの苦情でお巡りが来たりなど。

それもそうだ、毎日毎日交代でただその場所に
いるだけ。退屈ちゃありゃしない。

その雰囲気にゴウ自身も気付いていた。

もしかするとストーカーはゴウ達が周りに
いる事で警戒しているのでは?
ないかと思っていた。

ある日ゴウは現場へ行った。

「お疲れっス、ゴウくん」

ゴウはその現場を見てこう言った。
「おいっ、お前ら!」
「ここは、お前らの家じゃねぇんだよ」
と言うと

「えっ?はい?」
と言うメンバーにゴウは、
「俺の事でお前らに動いてもらってるのは
申し訳なく思ってる。でも最低限のルールってのはあるだろ?誰も食うな、飲むなって言わね!
でも、テメぇのゴミ位ちゃんとやれよ!!」
と少し声を荒げた。

それを言われたメンバー達は
「すみません」
と言って周りを片付け始めた。

そんなメンバーを見ながらゴウは
「おいっ、ペットボトルはラベルとキャップ
わけろよっ」
と言って一緒に片付けた。

片付けてる途中にゴウは突然こう言った。

「見張り、今日でやめるから!」
とゴウが言った。

その言葉に片付けの手が止まった。

1人のメンバーがゴウに
「やめるって!?まさか俺たちのせいですか?」
と聞いた。
それを聞いたゴウは
「いや、それは違う。ちょっと考えがあって」

「考えですか?」

ゴウは
「そう、考えっ」
「シマキとテマエにはこの後の事を話してる」
「だから、お前たちも他の奴らに中止って
伝えてやってくれ」
「今までありがとうな」

1人が言った
「えっ、でも・・本当に大丈夫なんですか?」
と言うとゴウは
「大丈夫だ!また、助けが必要になったら
お前達に話すから、その時は助けてくれ」
と言った。

するとそれを言われたメンバーたちは
「もちろん!!な?みんな?」 
「ウス!!」
「おーっ!」
など、盛り上がりを見せた。

ゴウは
「うるせぇって!とにかく片付けっぞ」

ゴウにどんな考えがあるのかわからないが
とにかくこの日からディズニーのメンバーが
たむろすることは無くなった。

でもこの日ディズニーの団結力は以前にも増した
ことは確かだった。

次の日からゴウは毎日学校へ来た。

とは言え、授業は受けたり受けなかったりだが
とにかく毎日学校へ来た。

そして、帰りの時間をモトキタに合わせて
モトキタを家まで送って行った。

偶然を装って何日かはしのげたが
さすがのモトキタも不自然に思いゴウに聞いた。「オカウエくん?最近毎日学校くるね」
ゴウは
「当たり前だろ?【学校に来いっ】あんたが、
言ったろ!?」
するとモトキタは
「それはそうだけど」
「毎日私を待ってるよね?」
これ以上引っ張れないと思ったゴウはそのままをモトキタに話した。
それが心強かったのかモトキタは事が落ち着く
まで一緒に帰る事にした。

ある日の帰り道ゴウはモトキタに話した。
「やっと1週間終わったわ」
「明日、休みだしどっか行かないか?」
と自然に誘った。するとモトキタは、
「いいよっ」
と即答だった。

ゴウは
「えっ!?いいのか?」
と聞くとモトキタは
「どうして?行きたいんでしょ!?」
と答えた。

「まぁ、でも休みの日なのにいいのか?」
「お前、彼氏とかいないのかよ?」
と言うと
「お前って、先生でしょ!?」
「いないよ、この仕事してるとほんと彼氏なんて
出来ないよ」
と言ったモトキタはゴウに
「オカウエくんは?彼女いないの?」
と聞くと
「ちょっと前に振られた。だから今はフリー」
するとモトキタは
「そっか?まーこれからだもんね」
「でも、いいなぁ私もあの頃に戻りたいよ」
と懐かしそうに言った。
ゴウは
「てか、まだ若いだろ?あんまし、俺らと年変わんねーだろ?」
と言われたモトキタは少し嬉しそうだった。

そんな事で、急遽デートする事になったゴウは
今日もボディーガードとしてモトキタを無事
家まで送ったのであった。

3限目Gにつづく

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