リブレット〜12〜

彼女からメールが来なくなって数日。
俺は、毎朝スマホを手に取ってしまう。
そこに、海辺で撮っている彼女のアイコンは
表示されていない。

ただ、普段の朝に戻っただけなのに少し寂しい
気持ちだった。

それから、数週間たったある日。

段々とメールのない生活に戻りつつある頃
ふと今までのやりとりを読み返していた。

やっぱり左側だけが賑やかだった。

俺は、最後に彼女の働くお店へ行く事にした。

とうとう俺は彼女の策にハマったのだ。


改札を出て、エスカレーターを上り地上へ出るとそこはいかにもって感じのビルが立ち並び、
同伴待ちのホステス達がスマホとにらめっこしている。

この街はほんと俺には場違いだ。

有名な鉄板焼き屋を曲がり人気のケーキ屋を
抜けると慌ただしく動く酒屋とすれ違う
そして彼女の働く店がある。

重厚な扉の前にはスリムなスーツを着た男が
立っていた。

「お客様、お一人様でしょうか?
        御指名は、ございますか?」

俺は、彼女の名前を男に伝えた。

「かしこまりました」
「只今確認して参りますので中でお待ち下さい」と案内された。

扉を抜けると海外の教会の様な空間が広がって
いた。一度行った事はあるのだが以前に増して
ゴージャスに改装されていた。

廊下には、ボーイ達が並び

「いらっしゃいませ」と。

案内された席は、皮肉にも以前座った席と
同じ席だ。

でも、内装や家具が変わったいたのですぐには
気がつかなかった。

待つ事10分程度。

彼女では無く別のホステスが1人俺の席へ来た。

「初めまして。レイです」

これもよくある話なのだが、最初にヘルプと
呼ばれる女の子が付いて少し場を和ませてから
指名の女の子がつくと言う感じだ。

簡単に言うとTVの前説みたいな感じだ。

そしてレイは躊躇なくテーブルのグラスをとり
氷を入れ、ブランデーで水割りを作り俺の前に
置いた。

そして、彼女の事を俺に話した。

その日彼女の事が頭から離れなかった。
               
〜最終話〜へつづく



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